※ 掲載は一人5首にさせていただきます
花の盆菓子 前川桂子
面影も淡くなりゆく死者生者のあはひを分かつ花の盆菓子
うす蒼き世をば凌がむ一群れの水仙明るく四方を照らせる
クロッカス・スノードロップ・ムスカリと陽をのみあふぎて咲く春の花
蜜々と薄紅いろに咲くさくら幼き友とのおしくらまんじゆう
からころも裾の揺らぎに秋風の運びて来たる約束ひとつ
秋の日の歌 麻郷地一則
廃線となりし三十余年の鉄道の跡にたたずむ旧式列車
巡礼の礼所となりぬ寺に立つ幟(のぼり)と地蔵秋風受ける
肺病みて仕事に向かう日々送る賢治の思いは農につながる
結核を病みたる時も歌作へと向かいたること亡伯父(おじ)はあらんか
兄四人皆去りて数年経ちたるも父その思い出を語ることなし