※ 掲載は一人5首にさせていただきます
春待つ泥濘 福原美知子
柔らかき春告げ鳥の声を聴く混沌として終はらぬ夜を
ウクライナ歴史に翻弄されゐるか逃げ惑ふ足待つ泥濘
訳もなく好きでなかつた矢車草無欲に揺れる意地も揺れをり
夏至近き緑地帯を揺らす風血液検査の結果待つ窓
街路樹の見違へる程生ひ育ち落ち葉のたつる音おとなめく
流 氷 藤林正則
もうだれも住まぬ生家の雪下ろし終へて見つめる流氷の海
また一戸離農の村の丘の上に馬頭観音と家畜碑の立つ
ふるさとの駅が消えても店の名は「駅前食堂」カレーが旨い
卒業の記念に植ゑし桜木の花吹雪浴ぶ廃校に来て
昨日はバラ今日はヒマハリ明日はユリ施設の母は塗り絵の画伯