令和5年度会員自選作品集(62) | 短歌活動をめざす北海道歌人会

短歌活動をめざす北海道歌人会

北海道在住の歌人や愛好者、もしくは道外転出者も希望によって会員とする北海道歌人会です。短歌における親睦と創作を希望する方はどなたでも加入できます。ぜひ、一緒に短歌を楽しみましょう!

 

 

     ※ 掲載は一人5首にさせていただきます

 

 

夕焼けは緋の色 竹原繁子

 

夕焼けの緋の色消えて中秋の名月出(いで)て地上明るし

 

カサカサと寂しき音を立てながら枯葉走れる夕暮れの道

 

春の雪風のすべてを容認し帰り行く息の無事を祈れり

 

紺碧の海と空あり積丹の風の岬にうぐいすの鳴く

 

前山の緑深みて夏来たるさわやかなりし郭公の声

 

 

 

金のブローチ 田嶋敦子

 

我が身にも見えし桜の老木が傾きつつも爛漫と咲く

 

身の内に羽化せぬ虫がむずむずと蠢き老いが加速する夏

 

殺すなと仏の教え不意に聞く蟻が一瞬動き止めいて

 

二十二で永遠に別れし孫偲びグレー毛糸で地蔵編みゆく

 

霜月よ石の間に一本の蒲公英咲けり金のブローチ