※ 掲載は一人5首にさせていただきます
夕焼けは緋の色 竹原繁子
夕焼けの緋の色消えて中秋の名月出(いで)て地上明るし
カサカサと寂しき音を立てながら枯葉走れる夕暮れの道
春の雪風のすべてを容認し帰り行く息の無事を祈れり
紺碧の海と空あり積丹の風の岬にうぐいすの鳴く
前山の緑深みて夏来たるさわやかなりし郭公の声
金のブローチ 田嶋敦子
我が身にも見えし桜の老木が傾きつつも爛漫と咲く
身の内に羽化せぬ虫がむずむずと蠢き老いが加速する夏
殺すなと仏の教え不意に聞く蟻が一瞬動き止めいて
二十二で永遠に別れし孫偲びグレー毛糸で地蔵編みゆく
霜月よ石の間に一本の蒲公英咲けり金のブローチ