令和5年度短歌年鑑より (※ 解釈文を省き、各結社短歌を10首前後紹介)
【荒潮】昭和二十三年創刊。札幌の新墾社に所属する釧路支社の機関紙七十三号。
まぼろしのオオカミの声雲に乗り湿原白く秋を終わりぬ 一戸陽子
封筒に宛名氏名を書き終えて会えぬ友へと運べよ元気 今井洋一
狂いたつコロナに五輪、さるすべり、沈黙の宴虚しくないか 斎藤泰子
処暑の日に過去も未来も手離して君は去りゆく 遠雷光る 〃
空中にくるくるくるりとどまりて降り来る若者ボードを滑らす 田中悦子
名を呼べば我を見返す目は虚ろ元気な姿に戻れぬか 友よ 塚本恭子
帰るなき娘ぞと思ふに玄関にこもごもと置くひひなの遊び 前川桂子
ゆふぐれはバイオレット ひそやかに過去を脱ぎゆくもの等を包む 〃
魅せられて読みすすみゆくゆふぐれの歌集にともる初めての古語 三上糸志
ゆく秋の息の温もりここちよく密にならずもマスク外さず 簑島智恵子
ミシン踏みアベノマスクをリメイクすほどよい形わたしのマスク 森 由美子