
先日、亡き母の四十九日と納骨のため、3年ぶりに故郷に帰ってきた。母は晩年、地元から離れた土地の病院に入院していたので、病床でいつも「帰りたい」と言っていたようだ。骨になってしまったけど、この日ようやく地元に帰ることができた。自分の不甲斐なさを自覚しながらも、母をようやく地元に帰すことができて、今はホッとしている。
故郷に帰ったついでに、従兄弟の計らいもあって高校生の頃によく行っていた焼きそば屋に連れて行ってもらった。約40年ぶりのこと。あの頃はお金がなかったので、とにかく安いものしか食べられなかったが、この焼きそば屋は安さが売りの店で、当時は確か並み盛り200円くらいで食べられたと、おぼろげながら記憶している。
40年ぶりに食べる焼きそばは、値段こそ520円と、倍以上になっていたが味は当時のまま。決して美味しいとは言えないが、自分にとっては甘酸っぱい思い出の味。店舗も店主も変わってしまっていたのに、40年もの間、よくこの味を守ってきたものだと感心する。麺を噛み締めるたびに、当時、一緒に食べた仲間の顔が思い浮かんできた。
故郷の滞在はあっという間。戻りの空港で一人モヤモヤとした気持ちで窓の外をどことなく眺めていると、これから自分が乗るであろう飛行機が目の前に停っていることに気づく。だんだんと現実世界に引き戻されていく。次はいつ帰ることができるだろう。空には黒くて低い雨雲が西から東へと流れている。この街にはすでに家族は誰もいない。実家も数年前に処分した。この還暦を迎えるじいさんが、一瞬だけ子どもだったの頃の気持ちに戻り、旅立ちを寂しく感じる。ただ、それでも時間は何事もないように刻々と過ぎていく。そう、ここにはもう自分の居場所はなく、明日からもやるべきことはある。
ただ、それでも故郷はいいものだ。