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「 おい ! 前を開けろ ! 」
後ろから 若い衆を押しのけて
山賊の親分が出てきました。
飢えた野獣のような
キラギラした眼光鋭い眼に射すくめられ
メロスは 生きた心地がしませんでした。
「 オイラは ワキガで 水虫で インキンで
体脂肪率が高すぎて、煮ても焼いても
脂ぎって 美味しくないですよぉぉぉ ~~! 」
メロスは 蛇に睨まれたカエルのように金縛り状態で、
突っ立ったまま ひきつり顔、かすれ声で呻きました。
「 お ぉ ぉ お お ~~ ! 」
山賊の親分が叫びました。
「 ひ ぃ ぃ い ぃ ぃ ~ 」
メロスは 死を覚悟しました。
「 貴公たちは 間違った王の治世を 正すべく
立ち上がった、と申されるのか。
それは それは 知らぬこととはいえ ご無礼つかまつった。
なんとも勇ましい義侠心をもつ 見上げた方々であろうか。
特に このマヌケ面の先頭の御仁は
剣を付きつけられ 命の危機に向き合いながら
微動だもせず 微笑みながら平然としている
今までに会ったことのない
なんとも雄々しい 立派な御方だ、
まことに 感服つかまつった。 」
メロスが 恐怖で縮み上がって 動けずにいたのも、
死ぬほど引きつった表情さえも
規格外のマヌケ面のお陰で 薄笑いを浮かべ
悠然としているように 誤解されたのです。
「 我々は 今は山賊に身を落としていますが、
不正のまかり通っていた腐敗政治、
その後の ディオニオス王の
恐怖政治に 嫌気がさしてやめた、
王室の 元兵士達なのです。
共謀罪 という
どうとでも理由をつけられ 処罰できる悪法で
理不尽な理由をでっち上げられ 仲間が処刑されました、
ぜひ我々も 参加させてください ! 」
「 えぇぇ ~? 」
「 シチューや ハンバーグにするというのは
単なる脅し文句なので 本気にしないでいただきたい、
我々は カニバリズムは否定しています わっははは ♪ 」
どうやらメロスの命は助かったようなのでした。
続 く