逮捕されたメロスは 乱心と言われる
ディオニス王の前に引き出されました。
その王の眉間のシワは刻み込まれたように深く、
病的に 顔は蒼白でした。
王は メロスに詰問します。
「 きさまが 城に侵入しようとした
薄汚い 変態コスプレイヤーの
テロリストかぁぁ~ああ !? 」
「 いいえ めっそうもない
オイラは ごく地味で控えめな
とても善良な 羊飼いです 」
と メロスは答えました。
「 羊飼いだとぅ
くんくん、くっさぁ ~!
どおりで マトン くさいわ トンマめ ! 」
王は 嘲笑しました。
「 お前は この短刀で 何をするつもりであったか、
正直に 包み隠さず 言うのだ ~! 」
暴君ディオニスは メロスを問いつめました。
「 え~と パンを切ったり
チーズを切ったり ハムを切ったり 」
「 ついでに わしの のど笛も
切るつもりであったか ? 」
「 そっ そんな 、、、
いいがかりをされても困りますぅぅ 」
「 仕方の無いやつじゃ、
変態コスプレイヤーのくせに
生意気に 言い訳などしおって、
おまえは わしを殺そうとしたのだな、
そうに違いない きっとそうだ
そうだろぅ ? あぁん ! 」
「 殺すだなんて そんな バカな事を
変態でもないですぅぅぅ ~! 」
とメロスは、反駁しました。
「 バカと言ったなぁああ !
バカと言う奴の方が バカなのだ !
お前の母さん でべそ~ ♪ 」
「 むやみに 人を疑ったり
人の お母ちゃんを 誹謗中傷するのは
よくないと思いますよ 王様 ~ 」
「 ふん 疑うのが、正当の心構えなのだと、
そう わしに教えたのは、お前たちだ。
人の心は、あてにならない、
人は もともと私慾我欲のかたまりだ、
信じてはならぬのだ これでいいのだ ~! 」
「 でも オイラ
一度も王様に そんなこと言ってませんけど
オイラ 王様に お会いするのは
今日が初めてなんですけどぉぉ 、、、 」
メロスは おそるおそる言いました。
「 うるさいわ !
わしは 心から平和と秩序を望んでいるのだ ~!
乱れに乱れた世の中の風紀を 正すのだ、
徒党を組んだ少女たちが
非モテの おバカな男どもを騙し
金銭を巻き上げるための 歌舞音曲も禁止じゃ !
変態コスプレイヤーなど もっての他なのだ !
疑わしい奴は 投獄して取り調べ拷問する、
もしも有罪と判断すれば コ❏~す ! 」
暴君は 叫びました。
「 罪の無い人をコ❏して、何が平和ですか ~!
何のための 秩序ですか ~?
誰のための 風紀なんですか ~?
もう、かんべんしてくださいよ ~! 」
こんどは メロスが叫びました。
「 だ ま れ !
口では、どんな綺麗事でも言えるのだ、
わしには、人の腹わたの奥底が
見え透いてならぬのだ、
今日、牢獄にぶち込んだ者は
わしの暗殺を図った者たちである、
取り調べて 嫌疑が充分ならば 処刑するのだ !
お前は 特に厳しく取り調べして
はりつけの刑にするのだ、
この世の中に変態コスプレイヤーなどいらないのだ、
気持ち悪いのだ、だから 死 刑 !
これで いいのだ ~! 」
「 ああ、ヘイト発言、王様は 被害妄想だ、
心療内科に行ったほうがいいですよ 」
「 余計な お世話だ
心療内科の医師は 真っ先に投獄したわい ♪ 」
「 うわぁ ~! オイラの お先真っ暗 ~! 」
「 お前は 怪しすぎる !
なんだ その顔は !
醜く歪めながら へらへらしおって。
人を おちょくっているようで
不快で 不愉快なのだ。
そうだ めんどくさいから 手続き抜きで
さっそく はりつけの刑にすることにしよう
いつやるの ? 今でしょう !
そうしようたら ♪ そうしよう ♪ 」
「 ちょ ちょっと待ってくださいよ ~
へらへらなんて していませんよ ~
生まれつき こんな顔なんですよ ~ 」
「 ほう その顔が 生まれつきとは
なんとも 哀れなものよのう
象にでも 踏みつけられたのかと思ったのだ 」
「 今どき容姿をイジルのはコンプライアンス違反ですよ
ルッキズムは控えめにしないと
偉い人に 怒られちゃいますよ~
今日 オイラは、たった一人の妹の結婚式のために
シラクス市に 婚礼の品を買いに来ました 」
「 それでぇ ? 」
「 かわいい妹に結婚式を挙げさせてやりたいんです 」
「 どうせ、お前に似て、
人並みはずれて ブサイクに違いないのだ。
お前抜きで 勝手に式を挙げさせればいいのだ 」
「 嫁入り前のムスメに ひどい事を言わないで ~
妹は、やや普通の顔なんです ~
だから 結婚できるんですぅ、
オイラは まだ
オイラの希少的価値が分かる
聡明な女性と巡り合っていないんで、
花のシングルなんですぅ 」
「 ほう 遺伝子とは 不思議なものよのう、
お前の顔は 劣性遺伝なのか
突然変異なのか ? 」
「 ヒド~イ ! 遺伝子レベルの 誹謗中傷 ! 」
「 じゃぁ そんな遺伝子を排除するためにも
早速 処刑するのだ それがいいのだ ♪ 」
「 じぇじぇじぇ !
それ、すごく危険な 優生思想ですよぉ ~!
人種差別の元になるし
ジェノサイドを引き起こしかねないし、
いつか遠い未来に
どこかの国の ちょび髭の独裁者が民族浄化とか、
ヒドイことをやりかねないですよ ~
生物は すべからく多様性を持たなくちゃ
人は寛容な心を持たないと すぐ諍いを起こして
殺戮合戦になり いずれ滅亡しますよ。
だから かんべんしてくださいよぉぉお ~
そうだ オイラの処刑までに
三日間の猶予を与えて下さい、
三日のうちにオイラは村で妹に結婚式を挙げさせ、
たぶん、ここへ帰って来ます
たぶんだけど 、、、 」
「 帰ってくるだとぉぉ ?
バカげた事を 言うな !
お前の そんな話など 信じられないのだ 」
「 いいえ 信じてください !
オイラの この純真な、輝く瞳を見てください
☆ キラ ✩ キラ ✩ キラ ☆ 」
「 嘘を言うな 知性の欠片も感じられない、
どんよりと淀んだ 小汚い眼ではないか 」
「 そんな事 言わないでぇ ~
できたら 帰って来ますぅぅ、
オイラは 生まれてから、ただの 一度も
嘘を 言ったことがないんですよぉぉぉお、
ほんとですよぉぉおお ~ 」
メロスは必死で、
どこかの極東の島国の首相のような
明らかな嘘を言い張りました。
「 オイラは、たぶん 約束を守ります、
三日間だけ許して下さい、
妹が、オイラの帰りを待っています 」
「 逃がした 薄汚いブサイクな ドブねずみが、
素直に帰って来るとでも言うのかぁ ? 」
「 この純真で 汚れのない天使のような
オイラを 信じられないのならば 、、、
そうだ !
この市に セリヌンティウスという石工がいます、
オイラの幼なじみの 心許せる
かけがいのない 無二の親友です、
彼を人質にしてくださいぃ 」
「 なにぃぃ ? 幼なじみの親友を
人質にだとぉぉぉお ~ ? 」
「 そうです オイラが逃げてしまって、
三日目の日暮までに、ここに帰って来なかったら、
友人を切るなり、突くなり、煮るなり、焼くなり、
絞めコ❏してもかまいませんよ 」
「 ほぅ お前の代わりに お前の友人を
コ❏してもかまわないのだな ? 」
「 はい ぜひ そうして下さい、お願いします、
友人なら オイラ 何されても いいんですよ。
オイラは ぜ~んぜん 気にしませんし、
かまいませんから、しっかり息の根を止めてください、
キュ~っと、遠慮せず きっちりとね 」
それを聞いて王は、残虐な気持で、
そっと ほくそえみました。
( こやつは 友人を身代わりにして逃げ、
期限までに帰って来るつもりは ぜんぜん無いのだな、
この嘘つきに騙された振りして放してやるのも面白い、
身代りの男を三日目に処刑してやるのも一興だ、
わしは悲しい顔して人はこれだから信じられぬと、
友人でさえ裏切る男の身代りの男を
磔刑に処してやるのだ !
刑場にたくさん 愚かな民どもを招き入れて。
世の中の 自称正直者とかいう奴らに
大々的に 人の心根の醜さを見せつけてやるのだ。
それで いいのだぁああ ~! )
王は神妙な表情で メロスに言いました。
「 よし おまえの 願いを聞き入れた、
その身代りを 呼ぶがよいのだ。
三日目の 日没までに帰って来るのだぞ。
だが ちょっとだけ 遅れて来るのも一興なのだ、
遅れたら、その身代りを きっちりコ❏してやるのだ。
そして 身代わりの者の 命を代償として
おまえの罪を 許してやるのだ ~ ♪
その代わり おまえには 親友を見捨てた
裏切り者 卑怯者の 烙印の太鼓判を押し
世間に 知らしめてやろう 」
「 えっ 帰してくれる ?
ほんとですか ~?
( ラッキ ~!
苦し紛れに何でも言ってみるもんだなぁ ~
オイラ 卑怯者と言われても
全然気にしないもんね ♪ ) 」
「 ぐわっはははっ 自分の命が大事だったら、
遅れて来るがいいのだ、
おまえの心は手に取るように
わしには わかっているのだ 」
嘘つきのメロスは考えを見透かされていたのです、
というか、人質のため わざわざもどる気などは
当然、始めから微塵も無かったので
態度がバレバレでした。
友人の一人や二人、自分の命と どちらが大切か、
自分さえ助かれば良いと考えるメロスには
自明の理でした。
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