歩けメロス 3 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




   逮捕されたメロスは 乱心と言われる 

   ディオニス王の前に引き出されました。


   その王の眉間のシワは刻み込まれたように深く、

   病的に 顔は蒼白でした。

   王は メロスに詰問します。


 「 きさまが 城に侵入しようとした

    薄汚い 変態コスプレイヤーの

 テロリストかぁぁ~ああ !? 」 


 「 いいえ めっそうもない 

   オイラは ごく地味で控えめな

   とても善良な 羊飼いです 」


   と メロスは答えました。


 「 羊飼いだとぅ 

   くんくん、くっさぁ ~!

   どおりで マトン くさいわ トンマめ ! 」


   王は 嘲笑しました。
   

 「 お前は この短刀で 何をするつもりであったか、

   正直に 包み隠さず 言うのだ ~! 」


   暴君ディオニスは メロスを問いつめました。


 「 え~と パンを切ったり

   チーズを切ったり ハムを切ったり 」


 「 ついでに わしの のど笛も

   切るつもりであったか ? 」


 「 そっ そんな 、、、

   いいがかりをされても困りますぅぅ 」


 「 仕方の無いやつじゃ、

   変態コスプレイヤーのくせに 

   生意気に 言い訳などしおって、 

   おまえは わしを殺そうとしたのだな、

   そうに違いない きっとそうだ

   そうだろぅ ? あぁん ! 」


 「 殺すだなんて そんな バカな事を 

   変態でもないですぅぅぅ ~! 」 

   とメロスは、反駁しました。


 「 バカと言ったなぁああ ! 

   バカと言う奴の方が バカなのだ !

   お前の母さん でべそ~ ♪  」


 「 むやみに 人を疑ったり 

   人の お母ちゃんを 誹謗中傷するのは

   よくないと思いますよ 王様 ~ 」


 「 ふん 疑うのが、正当の心構えなのだと、

   そう わしに教えたのは、お前たちだ。

   人の心は、あてにならない、

   人は もともと私慾我欲のかたまりだ、

   信じてはならぬのだ これでいいのだ ~! 」


 「 でも オイラ

   一度も王様に そんなこと言ってませんけど

   オイラ 王様に お会いするのは 

   今日が初めてなんですけどぉぉ 、、、 」

   メロスは おそるおそる言いました。


 「 うるさいわ !

   わしは 心から平和と秩序を望んでいるのだ ~! 

   乱れに乱れた世の中の風紀を 正すのだ、

   徒党を組んだ少女たちが

   非モテの おバカな男どもを騙し

   金銭を巻き上げるための 歌舞音曲も禁止じゃ !

   変態コスプレイヤーなど もっての他なのだ !

   疑わしい奴は 投獄して取り調べ拷問する、

   もしも有罪と判断すれば コ❏~す ! 」


   暴君は 叫びました。


 「 罪の無い人をコ❏して、何が平和ですか ~! 

   何のための 秩序ですか ~? 

   誰のための 風紀なんですか ~?

   もう、かんべんしてくださいよ ~! 」


   こんどは メロスが叫びました。


 「 だ ま れ ! 

   口では、どんな綺麗事でも言えるのだ、

   わしには、人の腹わたの奥底が

   見え透いてならぬのだ、

   今日、牢獄にぶち込んだ者は 

   わしの暗殺を図った者たちである、

   取り調べて 嫌疑が充分ならば 処刑するのだ !

   お前は 特に厳しく取り調べして

   はりつけの刑にするのだ、

   この世の中に変態コスプレイヤーなどいらないのだ、

   気持ち悪いのだ、だから 死 刑 !

   これで いいのだ ~! 」


 「 ああ、ヘイト発言、王様は 被害妄想だ、

   心療内科に行ったほうがいいですよ 」


 「 余計な お世話だ

   心療内科の医師は 真っ先に投獄したわい ♪ 」


 「 うわぁ ~! オイラの お先真っ暗 ~! 」


 「 お前は 怪しすぎる !

   なんだ その顔は !

   醜く歪めながら へらへらしおって。

   人を おちょくっているようで

   不快で 不愉快なのだ。

   そうだ めんどくさいから 手続き抜きで

   さっそく はりつけの刑にすることにしよう 

   いつやるの ? 今でしょう !

   そうしようたら ♪ そうしよう ♪ 」


 「 ちょ ちょっと待ってくださいよ ~

   へらへらなんて していませんよ ~

   生まれつき こんな顔なんですよ ~ 」


 「 ほう その顔が 生まれつきとは 

   なんとも 哀れなものよのう

   象にでも 踏みつけられたのかと思ったのだ 」


 「 今どき容姿をイジルのはコンプライアンス違反ですよ

  ルッキズムは控えめにしないと

  偉い人に 怒られちゃいますよ~

  今日 オイラは、たった一人の妹の結婚式のために

  シラクス市に 婚礼の品を買いに来ました 」


 「 それでぇ ? 」


 「 かわいい妹に結婚式を挙げさせてやりたいんです 」


 「 どうせ、お前に似て、

   人並みはずれて ブサイクに違いないのだ。

   お前抜きで 勝手に式を挙げさせればいいのだ 」


 「 嫁入り前のムスメに ひどい事を言わないで ~ 

   妹は、やや普通の顔なんです ~ 

   だから 結婚できるんですぅ、 

   オイラは まだ 

   オイラの希少的価値が分かる

   聡明な女性と巡り合っていないんで、

   花のシングルなんですぅ 」


 「 ほう 遺伝子とは 不思議なものよのう、

   お前の顔は 劣性遺伝なのか

   突然変異なのか ? 」


 「 ヒド~イ ! 遺伝子レベルの 誹謗中傷 ! 」


 「 じゃぁ そんな遺伝子を排除するためにも

   早速 処刑するのだ それがいいのだ ♪ 」


 「 じぇじぇじぇ !

   それ、すごく危険な 優生思想ですよぉ ~!

   人種差別の元になるし

   ジェノサイドを引き起こしかねないし、

   いつか遠い未来に

   どこかの国の ちょび髭の独裁者が民族浄化とか、 

   ヒドイことをやりかねないですよ ~

    生物は すべからく多様性を持たなくちゃ

   人は寛容な心を持たないと すぐ諍いを起こして

   殺戮合戦になり いずれ滅亡しますよ。

   だから かんべんしてくださいよぉぉお ~

   そうだ オイラの処刑までに

   三日間の猶予を与えて下さい、

   三日のうちにオイラは村で妹に結婚式を挙げさせ、

   たぶん、ここへ帰って来ます

   たぶんだけど 、、、 」


 「 帰ってくるだとぉぉ ?

   バカげた事を 言うな !

   お前の そんな話など 信じられないのだ 」


 「 いいえ 信じてください ! 

   オイラの この純真な、輝く瞳を見てください

   ☆ キラ ✩ キラ ✩ キラ ☆ 」


 「 嘘を言うな 知性の欠片も感じられない、

   どんよりと淀んだ 小汚い眼ではないか 」


 「 そんな事 言わないでぇ ~

   できたら 帰って来ますぅぅ、

   オイラは 生まれてから、ただの 一度も

   嘘を 言ったことがないんですよぉぉぉお、 

   ほんとですよぉぉおお ~ 」


   メロスは必死で、 

   どこかの極東の島国の首相のような

   明らかな嘘を言い張りました。


 「 オイラは、たぶん 約束を守ります、

   三日間だけ許して下さい、

   妹が、オイラの帰りを待っています 」


 「 逃がした 薄汚いブサイクな ドブねずみが、

   素直に帰って来るとでも言うのかぁ ? 」

 
 「 この純真で 汚れのない天使のような 

   オイラを 信じられないのならば 、、、

   そうだ !

   この市に セリヌンティウスという石工がいます、

   オイラの幼なじみの 心許せる

   かけがいのない 無二の親友です、

   彼を人質にしてくださいぃ 」


 「 なにぃぃ ? 幼なじみの親友を 

   人質にだとぉぉぉお ~ ? 」


 「 そうです オイラが逃げてしまって、

   三日目の日暮までに、ここに帰って来なかったら、

   友人を切るなり、突くなり、煮るなり、焼くなり、

   絞めコ❏してもかまいませんよ 」


 「 ほぅ お前の代わりに お前の友人を 

   コ❏してもかまわないのだな ? 」


 「 はい ぜひ そうして下さい、お願いします、

   友人なら オイラ 何されても いいんですよ。

   オイラは ぜ~んぜん 気にしませんし、 

   かまいませんから、しっかり息の根を止めてください、

   キュ~っと、遠慮せず きっちりとね 」
   

   それを聞いて王は、残虐な気持で、

   そっと ほくそえみました。

 ( こやつは 友人を身代わりにして逃げ、

   期限までに帰って来るつもりは ぜんぜん無いのだな、

   この嘘つきに騙された振りして放してやるのも面白い、

   身代りの男を三日目に処刑してやるのも一興だ、

   わしは悲しい顔して人はこれだから信じられぬと、

   友人でさえ裏切る男の身代りの男を

   磔刑に処してやるのだ !





   刑場にたくさん 愚かな民どもを招き入れて。

   世の中の 自称正直者とかいう奴らに

   大々的に 人の心根の醜さを見せつけてやるのだ。

   それで いいのだぁああ ~! )


   王は神妙な表情で メロスに言いました。


 「 よし おまえの 願いを聞き入れた、

   その身代りを 呼ぶがよいのだ。

   三日目の 日没までに帰って来るのだぞ。

   だが ちょっとだけ 遅れて来るのも一興なのだ、

   遅れたら、その身代りを きっちりコ❏してやるのだ。

   そして 身代わりの者の 命を代償として

   おまえの罪を 許してやるのだ ~ ♪ 

   その代わり おまえには 親友を見捨てた

   裏切り者 卑怯者の 烙印の太鼓判を押し

   世間に 知らしめてやろう 」


 「 えっ 帰してくれる ?

   ほんとですか ~?

 ( ラッキ ~! 

   苦し紛れに何でも言ってみるもんだなぁ ~

   オイラ 卑怯者と言われても

   全然気にしないもんね ♪ ) 」


 「 ぐわっはははっ 自分の命が大事だったら、

   遅れて来るがいいのだ、

   おまえの心は手に取るように

   わしには わかっているのだ 」


   嘘つきのメロスは考えを見透かされていたのです、

   というか、人質のため わざわざもどる気などは 

   当然、始めから微塵も無かったので

   態度がバレバレでした。

   友人の一人や二人、自分の命と どちらが大切か、

   自分さえ助かれば良いと考えるメロスには

   自明の理でした。


          続 く