巨人国編 偽作ガリバ~旅行記 5 | 藤花のブログ 詩と

藤花のブログ 詩と

この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい

  王妃は 王室御用達の細工職人に

  ガリバ~の 寝室になるような箱を作らせました。
 
  それには 窓とドアと二つの小部屋の

  木造のドールハウスのようなものでした。


「 あぁ エゲレスの オイラの部屋を思い出すなぁ 」


  この寝室の天井の板は 開けることができます。

  おもちゃ業者が作ったベッドと椅子とテーブル

  ポータブルトイレを 天井から入れました。

  部屋は壁も床も天井もキルトが張りつめてありました。


「 わぁぁ~い ふっかふかの部屋だよ ~ ♪

  うほほ~い ぼよよ~ん ♪ 」


  このガリバ~の住まいを移動のため持ち歩くとき

  中にいるガリバ~が 壁に激突して 

< ぷちっ!> と 潰れてしまわないように

  配慮してあるのでした。

  しかし どこか拘束室のようでもありました。


「 王妃様 お願いがあるんだけど 」

「 なんざんしょ ? 」

「 ドアに鍵を つけてほしいんだけど 」

「 なぜ ? 」

「 万が一 ネズミが入って来ないようにさ 」

「 あら ネズミは 

  ガリバ~の お仲間じゃないのかしらぁ ?

  お~っほほほほほ ♪ 」

「 あいつらは なんでもかじるから 

  オイラ 気づいたら 骨だけになってるかも 」

「 あら それは ガリバ~も不便になるわね

  食事もできなくなるわねぇ 

  わかったわ 鍛冶屋を呼びましょう 」

   
  鍛冶屋は 小さな鍵を作りました。


「 これで 一安心だ うふうふ ♪ 」


  王妃は 薄いシルク地で 

  ガリバ~の服 下着一式を作らせました。


「 ガリバ~よ 服が仕上がりましたよ 」

「 うほほ~い あたらしい服だ 

  ず~っと 着たきりすずめだったからね 」

「 着たきりドブネズミじゃないのぉ ?

  お~ほっほほほほほ ♪ 」


  仕立は この国のニューモードを織り込みつつ、

  フォーマルで 王室に相応しい重々しいものでした。

  しかし 服はエゲレスの玄関マットぐらいの厚さで、

  ガリバ~には そうとう着心地の悪い服でした。


「 ぐわぁ !

  おパンツも まるでテントの生地みたいだ ~!

  やっぱり おまたが ゴワゴワする ~ 」

「 オーダーメイドなのよ 慣れるまで我慢しなさい 」


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


  王妃は ガリバ~を すっかり気に入り、

  ガリバ~と 食事をするようになりました。

  ガリバ~は 王妃の食卓の上に

  テーブルと椅子を 置いてもらうのです。

  ガリバ~の食事のために銀の皿が一揃い作られました、
  
  ドールハウスの 食器類のようなものでした。


  王妃が肉を切って、ガリバ~の皿に入れると、

  ガリバ~は自分で さらに、

  それを小さく切って食べます。

  おままごとのような ガリバ~の食べ方が、

  王妃には とても面白かったのです。


「 硬い肉だなぁ 靴底を かじってるみたいだ 

  王妃様 料理長に言って パイナップルにでもつけて

  酵素で 柔らかくしてもらってくださいよ ~ 」


「 こんなに柔らかい 口に入れたら溶けそうな

  最高級のブランドお肉なのにぃ 

  オーダーメイドの シルクの服や下着に身を包み 

  最高級の食事にさえ 文句を言うなんて

  ホントに お前は 贅沢で 面白いわねぇ 

  ガリバ~の存在は人へのカリカチュアみたいだわ 」


「 えへ てれるなぁ オイラ ほめられちゃった 」

  しかし それは褒め言葉かどうかは わかりません。


  ガリバ~には 食事が怖く感じられる事もありました。

  王妃は この国では少食の方でしたが 

  ガリバ~の故郷の エゲレス人なら

  10人が満腹するほどの量を 一口でペロリなのです。

  実際これには トラやライオンなどの肉食動物どころか

  古代の 二足歩行の 巨大食肉爬虫類生物を

  彷彿させる感じがありました。


「 うわぁ 人間も巨大だと 側で見上げると

  口を開けて食事をするだけで なんて恐ろしいんだ 

  小人の国で 化け物扱いされたのも無理がないんだなぁ 」
  

  王妃は グラスで大樽一つ分以上の飲物を

  一息に飲み干します。


<<  ごぼぉごぼぼぼ ゴキュゴキュ ! >>


  王妃のナイフは ガリバ~よりも巨大でした。

  スプーンもフォークも 巨大なものです。


  巨大なナイフが 巨大な肉を ザクザク切り裂き、

  巨大な肉の破片が巨大なフォークで ぶすりと刺され

  巨大な口に運ばれ 巨大な歯に引きちぎられるのです。



<<  ぐしゃ  ぐしゃ  ぐしゃ ! >>


  巨大な ナイフやフォークがズラリと並んだ光景は、

  さながら武器庫のようでした。

  こんな物騒な物を ビンブン振り回されたら 

  小人の国どころか 大エゲレス帝国の軍隊も

  ひとたまりもないと思いました。



「 この国は 今は戦争を否定している 

  彼らが もし 世界に覇を唱え

  戦いを仕掛けてきたら 襲われた国は 

  跡形もなく消滅してしまうに違いない 

  強大な力は 平和を望む巨人たちによって

  今のところは 善用されているのだなぁ 」

  
  ガリバ~は ぼんやりと そんな事を思いながら

  王妃の 口元を見ていました。


「 なに 見てんのよ ! 

  しっかり食べないと 大きくならないわよ

  お~っほほほほ ♪ 」


「 もう オイラ 大人だから

  横に 大きくなるだけなんですけど 、、、 」


  王妃は 巨大なアゴで 巨大肉食爬虫類のように

  ゴリゴリ ガリガリと 肉を食んでいました。





       続 く