王子の船の一件で 国王は激しく怒りました
漂流物 証拠品の検証をして
爆破工作の確証を得た国王は
可愛い王子や たくさんの負傷者の報いをするべく
犯行を行った紛争国の別の船に
報復の戦艦を送りました
威嚇を繰り返していくうちに やがて犠牲者もでました
報復は報復を呼び 悲劇は繰り返され
拡大再生産されるのでした
悲しみに嘆く人達は
はたして報復によって救われるのでしょうか
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
ある日 人魚姫は王子に 筆談で尋ねました
ー 何故 人は互いに争い
傷つけあうのですか ? ー
「 難しい問題だが 人間の性(さが)として
争わずにはいられないのかもしれない
人間の歴史は 闘いの歴史とも言えるのさ
どこかで進化の仕方を
間違えてしまったかもしれないね 」
王子は寂しそうに言いました
彼は好戦的な性格ではないのです
「 サファイアも 争い事は 嫌いなんだね ? 」
人魚姫は うなずき ペンを紙に走らせます
ー 皆が助け合って 共存することは
できないのでしょうか ? ー
「 今 国内は まとまっているけれど
それは 外に敵が いればこそなのかも知れない
現在も 他国との紛争が続いている
僕たちは 危ういバランスの中で生きている
油断すると やられてしまうと 皆 考えている
疑心暗鬼と 言うことだろう
悲しい事では あるのだが 、、、、 」
ー 先日 嵐の中 船で
沢山の人が 生命の危機に襲われました ー
「 そうだ 僕は 命を落とすところだった
ほとんどの 乗客が 海に放り出された
しかし救命ボートを たくさん用意してあったし
優秀な乗組員のおかげで 不幸中の幸い
怪我人は出たが 死者はでなかった 」
人魚姫は その時
たくさんの人の悲鳴を聞いていました
「 今も負傷した友人たちの
お見舞いに行っているんだ 」
人魚姫は 王子の心痛を 察しました
「 あの時 僕は 奇跡的に助かった
まだ 誰にも話してはいないのだが
海に投げ出された僕は
下半身が魚の女性に抱かれて
海の底に行ったような気がする
幻を見ていたのだろうか ? 」
” あぁ 王子様は 覚えてくれていたのだわ ”
人魚姫は思いました
「 そして不思議なことに
今はすっかり傷跡が消えてしまったが
浜辺に打ち上げられたときには
大きな怪我の手当がしてあったのだ
それは 僕を発見した
漁師がしてくれたのだろうか ? 」
それは 王子の命に関わるような大怪我でした
治療の時 祈りを捧げたことを
人魚姫は 昨日のことのように思い出しました
「 いいや 素人ができるような処置ではなかったのだ
それどころか この国の医師にも出来ない
高度な 治療だったのだ 」
人魚姫は 自分が助けたとは
打ち明けられませんでした
海中の人魚族のことは
秘密にしておかねばなりません
もどかしい思いに 目を伏せるだけでした
” もし また 危険な事があったとしたら
もう私は 人魚族の助けを求めることができない
その時は どうしたらいいのだろう 、、、、 ”
行く手には 暗雲が立ち込めて来ている
そんな気持ちになる 人魚姫でした
続 く