、
「 これから私は 愛に生きて 陸上で幸せに暮らします
十五歳まで 育ててくださってありがとうございました
私を 探さないでください 」
人魚姫は お城に置き手紙を残して手術に臨みました
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
人工多能性幹細胞組織培養
硬膜外マトリックス溶液に満たされた
大型カプセルの中に 人魚姫は入りました
「 目が覚めた時には 私は人間に生まれ変わるのね 」
「 そうよ 楽しみにしていなさい うふふ 」
麻酔で 人魚姫の意識は薄れました
人魚姫は 蒼い溶液の中 泡に包まれました
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
何日も何日も 人魚姫は 夢も見ず眠り続けました
科学者は ずっと慎重に観察していました
人間の王子の遺伝子が 人魚姫の遺伝子と融合され
細胞レベルで人魚姫の肉体は
人間の身体へと 再構築されていきました
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
どのくらい時間が 経過したでしょう
深い深い海底から 浮き上がるように
人魚姫は 意識を取り戻しました
「 手術は成功しましたよ 」
<< あっ ありがとうございます >>
人魚姫は 人間の可聴領域を超えた声でしゃべりました
「 人間とは話せませんが
文字を使って筆談をするといいわ 」
<< わかりました >>
「 それと人間の世界には 人間の衣装を着ていきなさい
人間の世界で 裸では危険です
人間の世界のオスには
あんな事や こんな事をする いやらしい変質者とか
ど変態とか お下劣な者が たくさんいるのですよ
シャチや サメのように
本能のまま 女性に食いつくのです
姫の身に 何か事があってはいけません 」
” 。。。。。。。。。。 ”
人間の服のコレクションを持っていた科学者は
色々と 見繕いました
「 これは エロいし ケバいし
これは ガキっぽいし えぇっとぉ 」
派手でなく落ち着いた
動きやすい 品の良い服を着せました
海難事故などで 流されてきた物でした
「 白いソックスを 履かせぇてと
靴は 大人しめの ローファーにして
髪には フリルのリボンを付けましょうか
うん 素晴らしい !
何処に出しても 恥ずかしくないわ 」
<< お世話になりました >>
「 しっかり やっておいで 元気でね 」
遺伝子工学の科学者に 見送られ
人間の女性の姿になった人魚姫は
喜んで地上に上がりました
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
海から地上に上がり 二足歩行をすると
海の中とは違い 大変な重力を感じました
慣れない足は 体重を支えなければいけなく
強い痛みで気絶してしまうかと思うほどでした
しかし王子様に会いたいという一念が
まだ順応していない足を 前に前にと進ませ
人間の世界の 愛しい王子の お城にたどり着きました
お城は海辺からも見える 小高い丘にそびえていました
” けれど どうすれば王子様に逢うことができるかしら ? ”
人魚姫は そこまでは考えてはいませんでした
門前払いをされてしまうかもしれません
急に 心細くなり 悲しくなりました
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
先の嵐の海で 何名もの侍従の者が負傷して療養中のため
王子は お城で働く新しい人材を求めていました
「 お~い そこの お嬢さん
新規採用の受付は こっちですよ 」
お城の門番は 偶然にもメイド服姿だった人魚姫を
てっきり 侍従の応募者と思いました
採用係に王子の面接に連れて行かせました
「 はい 次の方 どうぞ 」
人魚姫は 王子との面接に のぞみました
「 あぁ、なんと美しい娘だ 深い海のような瞳
なぜか 何処かで見た覚えがあるような気がする 」
王子は人魚姫を 一目見て親しみを覚え 気に入りました
「 お前は 誰なのだい ?
なんだか 他人のようには思えない 」
でも 人魚姫は声を失っていたために
しゃべることが出来ませんでした
王子に逢えた嬉しさに はにかみ静かに微笑むだけでした
「 話すことが出来ないのだね,
聞くことはできるのかい ? 」
人魚姫は うなずきました
「 ならば この僕の そばで働いておくれ 」
王子は人魚姫を 侍従の一人に加えました
「 お前の 名前は なんというのだい ? 」
王子は 人魚姫の名前を 尋ねました
人魚族の名前の発音は 人間には難しく
同じ意味の 人間の言葉を 紙に書きました
「 ” サファイア ” か なるほど
お前の 蒼く 輝く 瞳の色 そのままだね 」
王子は 人魚姫を妹のように かわいがりました。
王子の遺伝子を加えられて
改造手術をされた人魚姫は
ある意味 王子と兄妹のようでもあり
双子の ようでもありました
二人は 強くシンクロしたのです
しかし王子は 人魚姫が自分を 海難事故の時
助けてくれたことには 気が付きませんでした
人魚姫は王子の身の回りの世話をすることになりました
彼女は 王子のそばで暮らせることを大変喜びました
いつまでも いつまでも
この幸せが続くように願いました
続 く
改造手術は健康のために 御注意ください。
悪の秘密結社に 怪人に改造される恐れがあります。
( サファイア )
サファイア Sapphire、蒼玉 ( 青玉 ) は、
コランダム Al2O3、酸化アルミニウム の変種で、
宝石の一種。
語源は 「 青色 」 を意味する
ラテン語の 「 sapphirus 」、
ギリシャ語の 「 sappheiros 」 に由来する。