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公爵夫人が 兵士に連れて来られました、
しかし、チェシャ猫は 消えてしまいました。
公爵夫人は アリスを見つけました。
「 あら 家に来てた お嬢ちゃんじゃないの 」
「 公爵夫人 ! 」
「 まぁ また お目にかかれて、
私が どれだけうれしいか、分かるぅ ?
この可愛らしいお嬢ちゃんったらぁ、
うふうふうふうふ ♪ 」
と公爵夫人は、妙に優しくアリスに語りかけました。
「 この間の剣幕はどうしたのかしら ? 」
アリスは不思議に思いました。
「 うふうふ、やっぱり 娑婆はいいわね、
牢獄は 精神衛生上もよろしくないわ ~
肌荒れしちゃうし、飯も不味いしぃ ~
もし、冤罪で48年も入れられたら、
私 どうなっちゃうのかしら ~
公権力は 恐ろしいわね、
拷問で自白させて、証拠捏造しても、
適当な判決出しても、
警察も、検察も、裁判官も、誰も責任取らないんだもの、
自責の念なんて これっぽっちも無いんでしょうね、
どうせ賠償金は税金だし、お気楽なものよねぇ、
そんな話が極東の島国であったようねぇ いやねぇ。
取り調べは録音録画で可視化してほしいわね 」
牢獄から開放されて夫人の機嫌が良いので、
アリスも ほっとしました。
公爵夫人の家の台所で会ったときに、
あれほど、異常な言動だったのは、
二重人格の片面が
コショウのせいで出たのかも、と思いました、
まぁ そんなことは 時々 アリスにもありんす。
「 あたしが 公爵夫人になったら、
台所には 絶対、コショウを持ち込まないわ。
あたしには スープはコショウなしでも美味しいし、
人がエキサイトするのは、香辛料のせいなのかもね、
スパイシーな味は、ひとを ヒートさせるのね 」
思わず ダジャレを言ってしまいました。
「 この論理を展開すれば、人が苦々しくなるのは、
きっと ニガリのせいよ。
渋くなるのは、多分、渋茶のせいね 、、、
でも、どうすれば公爵夫人に なれるのかしら ? 」
アリスは色々考えていたので、
公爵夫人のことは 忘れてしまいました。
「 あぁら ちょいと お嬢ちゃん、上の空だったわ、
何やら、考えごとをしていたでしょう ? 」
「 あぁ はい 」
「 人と お話をする時は 上の空ではいけませんよ。
人の話は ちゃんと聞かないとね、
いつの間にか 詐欺にあっちゃうわよ 」
「 それは教訓ですか ? 」
と アリス。
「 そうよ、お嬢ちゃん、
どんなことにも、教訓はあるですよ、
私も いろいろ 悪徳業者に
インチキなもの 買わされちゃったわ 」
「 何を買わされたの ? 」
「 そうね、開運間違いなしの壺とか、
一週間で異性が手に入る魔法のペンダントとか、
なんとか還元水とか、
超強力磁石入り健康ふとんとか、
値下がり確実の未公開株式とか、
高額なコンピューター付きミシンとか、
業務用水フィルター掃除機とか、
月や火星の土地の権利書とか 、、、 」
「 バカじゃん ! 」
「 人は自分が思うほど賢くないのよ、
慢心が自分自身を裏切り 人を悪い方向に追いやるのよ、
どこかの国の首都の首長も きっと、そうでしょうね 」
こう言い、公爵夫人はアリスに身をすり寄せよせました。
アリスは、公爵夫人に密着されるのは嫌でした。
公爵夫人はコショウや牢獄のすえた臭いがキツく、
おまけに、ブサイクだったのです。
とんがり突き出したアゴが、アリスの肩に食い込みました。
< グリ グリ >
” いたたた 往年のアントニオ猪木のアゴ攻撃か ! ”
でもアリスは、痛いけど失礼になるからと我慢しました。
「 試合は ちゃんと進んでるのでしょうか ? 」
と アリスは話題を変えました。
「 いいえ、全然 知らないわ、
だって 牢獄に繋がれていたんだもの 」
と 公爵夫人。
「 どうして 牢獄に繋がれたんですか ? 」
「 私は 時間ピッタリに行ったのよ、
でも 女王様は遅刻だって言うのよ、
でも時間は 相対性理論によると相対的なものなのだから
私の時間と 女王の時間は微妙に違うのよ、
白ウサギが ポケットから時計を取り出して
『 遅刻ですよ 公爵夫人、大した度胸ですなぁ、ふふふ 』
と 女王の肩をもって私を なじるものだから
頭にきて ぶん殴ろうとしたら、
脱兎のごとく、『 だっと 』 逃げ出して
私の腰の入った 空気を切り裂き 唸りを上げた掌底が
後ろに立っていた女王様の顔を張り飛ばしちゃったの 」
「 やれやれ 白ウサギはトラブルのもとね 」
「 女王の顔は ビョ~ンビョ~ンと揺れたわ、
まるで 扇子をパタパタ扇ぐようにね 」
「 きゃ~ぁっははは ♪ 」
「 私の代わりに お嬢ちゃんがクロケーに参加してるのね 」
「 そうなのかしら ? 急にさそわれたんですよ、
それで、このフラミンゴ、マレットの代わりなんですよ 」
と アリス。
「 そうなのよ ここのルールでフラミンゴを使うのよ、
ちょうど ドタマがスティック状だからかしら ? 」
と 公爵夫人。
「 動物虐待と 動物自身が言ってますけどね 」
「 動物愛護に うるさいエゲレスだからこそ面白いんじゃない ?
何だかこの国、人の命は それほど大事に思わないのよねぇ、
戦闘行為には積極的に参加、人質は見殺し、
まるでブラックジョーク、
なんたって、*モンティ・パイソンの国だもの うふうふうふ ♪ 」
と 公爵夫人。
「 エゲレスは 何事も、そうやってパロディにするのよねえ 」
と アリス。
「 もちろん、それが大人の国っていうものなのよ、
たくさんの植民地の人を 人命を軽視し、搾取して
世界に君臨した国だもの、
ブラックユーモアが 好きなのよぉ、
ロイヤル・ファミリーだってパロディにしちゃうものね、
極東の島国じゃ危なくて、とても出来ないわね うふうふうふ ♪ 」
「 極東の島国では 権威を貶めるのを好かない人もいるのね、
街宣車で、がなりたてたり、殺人予告が届いたり、
ネットが炎上したりするでしょうね 」
「 私が その気になったら、
モンティ・パイソンなんか目じゃないわよ ウヒョヒョヒョ ♪ 」
と 公爵夫人は、うれしそうに言いました。
「 お願いだから、問題発言はしないで、
ジョークを理解出来ない 頭の硬い人も 山ほどいるから 」
と アリス。
「 おやまあ、それは残念だわぁ、
皆が豚鼻を鳴らして 腹を抱えて悶え苦しみ
痙攣するほどのジョークがあるのにねぇ 、、、 」
と 公爵夫人。
「 そう言えば、あの赤ちゃん ブタ 、、、 」
と アリスが 言いかけると、
公爵夫人は、ガタガタ震えはじめました。
顔を前に向けると、女王が立っていてました、
うで組みして、鬼の形相をしています。
「 良いお天気でございますわね、女王陛下 」
公爵夫人が言いました。
「 さぁて、公爵夫人よ 」
と 女王は言いました。
「 何で ございますかぁ ? 」
「 おまえの飼い猫の チェシャ猫とやらが、
首だけで現れて、大問題だったんだよ ! 」
「 チェシャ猫は 人に危害を加えませんが 、、、 」
「 あの下品な笑い顔を 王様が気に入らないとさ 」
「 そう言われましても、チェシャ猫は笑うものなのですよ、
そう言う、ことわざがあるほどでして 」
「 言い訳をするな ! 公爵夫人よ !
きっちリ始末をしてやろう !
おまえの首を今から ちょん切ってやるわ 」
「 ちょっとお待ちください 」
「 ならぬ、おまえは わらわを ひっぱたいたではないか ! 」
「 いやぁ それは 、、、
そうそう、蚊が女王様の頬に止まっていまして 、、 」
「 その首を差し出すか、
もしくは おまえの存在自体を消すか、
どっちが 望みだ ? 」
「 ぇえ~とぉ じゃぁ 存在を消します 」
と言うと 胸の前でマレットを握るように手を組んで、
<< ど ろ ん ! >>
公爵夫人は一瞬で姿を消しました。
「 えっ ! 消えたわ。
< どろん ! > て、なんて古臭い表現なの、
『 ココらへんで ドロンします 』 って前世紀の死語でしょう。
でも公爵夫人は チェシャ猫みたいに姿を消せるのね、
猫に教わったのかしら ?
それとも、姿の消し方をチェシャ猫に仕込んだのかしら ?
でも、どうやって消えるの ?
魔法 ? 透明人間 ? 光学迷彩 ?
それとも 亜空間に自在に潜り込めるのかしら ?
それなら牢獄から 簡単に逃げ出せそうなものよねぇ ? 」
アリスは 乏しい知識で回答を探そうと思いましたが、
当然、合理的な答えは出ません。
「 まぁ いずれ賢い人が研究して
科学的な説明をつけてくれるでしょう、
今、子供の あたしが考えることじゃないわね 」
「 さぁ クロケーの試合を続けるが よいよいよい 」
と 女王に言われたアリスは、
女王と いっしょにクロケー場に戻りました。
続 く
* モンティ・パイソン
モンティ・パイソンは、イギリスの代表的なコメディグループ、
1969年から始まったBBCテレビ番組
『 空飛ぶモンティ・パイソン 』
で人気を博し、その後もライブ、映画、アルバム、
書籍、舞台劇等で活躍の場を広げ、
その爆発的なインパクトはメンバー個人を
スターの座に押し上げた。
モンティ・パイソンは、
グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、
テリー・ギリアム、エリック・アイドル、
テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリンの6人で構成される。
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