偽作 不思議の国のアリス 33 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい



   アリスは、ゲームに 戻ろうと思いました。


「 どうせ、チェシャ猫は 自由自在に消えたりできるから、

  トランプの兵士たちには 絶対首を刎ねる事はできないわ。

  せいぜい、頑張ってみるといいわ。うふふふふ ♪ 」


  女王が激怒して、わめきちらしているのが

  遠くで聞こえました。

「 相当苦労してるみたいね、

  でもね、人でも 動物でも

  簡単に首なんか刎ねちゃいけないんだからね ! 」


  アリスが順番を逃した間に、

  参加者が三名、首チョンパの刑で連れ去られたそうでした。

  試合は デタラメのメタメタで、自分の順番がわかりません。


「 これじゃ ダメじゃん ! 」 と アリスは思いました。


  とりあえず自分の玉の代わりのアナグマを探しに行きました。

  アナグマは 他のアナグマと

  引っかき合いのケンカをしていました、

  玉の代わりのアナグマを 玉の代わりのアナグマに、

  ぶつけるには 今がチャンスです。


  しかし困ったことに、フラミンゴが

  クロケー場の向こう側に行ってしまい、

  意識が朦朧としたまま 木に飛び上がろうとしています。


「 こらフラミンゴ てめぇ 逃げるんじゃないぞ ! 」


「 ヒィィィ ~ 動物虐待反対 ~ ! 」


  アリスは フラミンゴの足を むんずと掴み捕まえました。

  意気揚々と クロッケー場に戻ると、

  今度はアナグマたち二匹とも、トンズラしていました。


「 クロケー場のこっち側は、

  ゲートの兵士たちが 全員いなくなっちゃってるし、

  もう、皆クロケーのゲームなんか、どうでもいいのかもね。 」


  しかたなくアリスは、フラミンゴを腕にかかえて、
  
   チェシャ猫の所に戻ってみると、

  まわりに かなりの人たちが集まっているので驚きました。

  首切りの兵士と王と女王が、議論を戦わせています。

  それぞれが同時に わめいていますが、

  それ以外は みんな黙って見ています。


「 首さえあれば 首は切れるのか ? 」


「 首があっても 胴体がついていないと、

  はたして切ったことになるのか ? 」


「 そもそも 頭部だけなら、

  もう首を刎ねた状態と 同じなのではないのか ? 」


  アリスが来たとたん、

  それぞれが一斉に話しかけて来ました。

  猫の手でも借りたいと言うように、

  三名とも自分の主張をくりかえすのですが、

  みんな同時に しゃべるので、

  何を言っているのかわかりません。


「 あたしは 昔々、極東の島国に

  いたとか、いないとか言われている
 
  何人もの声を聞き分ける なんとか太子じゃないのよ !

  もちろん 明太子でもないわ、

  一人ずつ 話してちょうだい 」

  
  首切り役の言い分は、


「 首を切り落とすには、

  首が、体に繋がっていなくては無理 」

  という事です。


「 首から先だけの頭の首を切り落とすなんて、

  そんな器用なことは出来ない、

  やったこともないも~ん 」 

  と 言います。


   王は、

「 首が存在するのだから、

  それを切るだけの事で 何も問題はないぞ、

  難しく考え過ぎじゃないのか ? 」

  と 言います。


  女王は、

「 今すぐ その猫の首を刎ねないと、

  一人残らず首を刎ねてやる ! 」

  と 言います。


  アリスは 

” こいつら何を言っているの、

  猫も杓子も バカじゃん ! ” 

  と 思いました。


「 あのチェシャ猫は 公爵夫人の飼っている猫だわ。

  だから公爵夫人に 意見を聞いたほうがいいと思うわ 」

  と アリス。


「 今、公爵夫人は牢獄に ぶち込んである、

  ならば、ここに連行してきなさい ! 」

  と 女王。

  兵士は 公爵夫人のいる牢獄に向かいました。


「 アリス、またね ~ 」

  そう言うと、チェシャ猫の頭は消え始め、

  兵士が公爵夫人を連れて戻った時には、

  もう その姿は完全に消えてしまいました。


  王と女王と兵士は あちこちチェシャ猫を探し回りましたが、

  見つけることは出来ませんでした。


「 やれ やれ 」

「 猫一匹に 振り回されちゃったね 」

「 猫は 気まぐれ 気ままなのさ 」

「 猫相手なのに、まるで鼠とらぬ猫だな 」


  見物していた皆は呆れて クロケー場に戻っていきました。



      続 く