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アリスは、ゲームに 戻ろうと思いました。
「 どうせ、チェシャ猫は 自由自在に消えたりできるから、
トランプの兵士たちには 絶対首を刎ねる事はできないわ。
せいぜい、頑張ってみるといいわ。うふふふふ ♪ 」
女王が激怒して、わめきちらしているのが
遠くで聞こえました。
「 相当苦労してるみたいね、
でもね、人でも 動物でも
簡単に首なんか刎ねちゃいけないんだからね ! 」
アリスが順番を逃した間に、
参加者が三名、首チョンパの刑で連れ去られたそうでした。
試合は デタラメのメタメタで、自分の順番がわかりません。
「 これじゃ ダメじゃん ! 」 と アリスは思いました。
とりあえず自分の玉の代わりのアナグマを探しに行きました。
アナグマは 他のアナグマと
引っかき合いのケンカをしていました、
玉の代わりのアナグマを 玉の代わりのアナグマに、
ぶつけるには 今がチャンスです。
しかし困ったことに、フラミンゴが
クロケー場の向こう側に行ってしまい、
意識が朦朧としたまま 木に飛び上がろうとしています。
「 こらフラミンゴ てめぇ 逃げるんじゃないぞ ! 」
「 ヒィィィ ~ 動物虐待反対 ~ ! 」
アリスは フラミンゴの足を むんずと掴み捕まえました。
意気揚々と クロッケー場に戻ると、
今度はアナグマたち二匹とも、トンズラしていました。
「 クロケー場のこっち側は、
ゲートの兵士たちが 全員いなくなっちゃってるし、
もう、皆クロケーのゲームなんか、どうでもいいのかもね。 」
しかたなくアリスは、フラミンゴを腕にかかえて、
チェシャ猫の所に戻ってみると、
まわりに かなりの人たちが集まっているので驚きました。
首切りの兵士と王と女王が、議論を戦わせています。
それぞれが同時に わめいていますが、
それ以外は みんな黙って見ています。
「 首さえあれば 首は切れるのか ? 」
「 首があっても 胴体がついていないと、
はたして切ったことになるのか ? 」
「 そもそも 頭部だけなら、
もう首を刎ねた状態と 同じなのではないのか ? 」
アリスが来たとたん、
それぞれが一斉に話しかけて来ました。
猫の手でも借りたいと言うように、
三名とも自分の主張をくりかえすのですが、
みんな同時に しゃべるので、
何を言っているのかわかりません。
「 あたしは 昔々、極東の島国に
いたとか、いないとか言われている
何人もの声を聞き分ける なんとか太子じゃないのよ !
もちろん 明太子でもないわ、
一人ずつ 話してちょうだい 」
首切り役の言い分は、
「 首を切り落とすには、
首が、体に繋がっていなくては無理 」
という事です。
「 首から先だけの頭の首を切り落とすなんて、
そんな器用なことは出来ない、
やったこともないも~ん 」
と 言います。
王は、
「 首が存在するのだから、
それを切るだけの事で 何も問題はないぞ、
難しく考え過ぎじゃないのか ? 」
と 言います。
女王は、
「 今すぐ その猫の首を刎ねないと、
一人残らず首を刎ねてやる ! 」
と 言います。
アリスは
” こいつら何を言っているの、
猫も杓子も バカじゃん ! ”
と 思いました。
「 あのチェシャ猫は 公爵夫人の飼っている猫だわ。
だから公爵夫人に 意見を聞いたほうがいいと思うわ 」
と アリス。
「 今、公爵夫人は牢獄に ぶち込んである、
ならば、ここに連行してきなさい ! 」
と 女王。
兵士は 公爵夫人のいる牢獄に向かいました。
「 アリス、またね ~ 」
そう言うと、チェシャ猫の頭は消え始め、
兵士が公爵夫人を連れて戻った時には、
もう その姿は完全に消えてしまいました。
王と女王と兵士は あちこちチェシャ猫を探し回りましたが、
見つけることは出来ませんでした。
「 やれ やれ 」
「 猫一匹に 振り回されちゃったね 」
「 猫は 気まぐれ 気ままなのさ 」
「 猫相手なのに、まるで鼠とらぬ猫だな 」
見物していた皆は呆れて クロケー場に戻っていきました。
続 く