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白ウサギが 偉そうな態度で通り過ぎ、
ハートのジャックが来ました。
王様の王冠を、ビロードのクッションに乗せて運んでいます。
そして行列の一番最後に、ハートの王と女王が来ました。
アリスは、
「 あたしも 同じように
地面に伏したほうがいいのかなぁ ? 」
と 思いました。
「 でも、みんなが顔を下にして平伏してたら、
誰も見ない行列なんか 意味無いじゃん ! 」
アリスは、立ったままでいました。
行列がアリスの近くにやって来ると、
アリスの前で止まりました。
「 こやつは 誰じゃ ! 」
女王が 声を上げました。
ハートのジャックは、
ぺこりと お辞儀をして言いました。
「 存じ上げません 初めて見る者です 」
「 たわけ者めがぁぁああ ~ ! 」
女王は 怒号を上げます。
そして アリスに向かい言いました。
「 そこの子ども、名前は なんと申す ? 」
「 はい女王様 あたすは アリスで ありんす 」
と アリスは 一応へりくだって言いました。
” でも、こいつら ただのトランプじゃん、
別に ビビる事ないわね ”
アリスは 思いました。
「 して 小奴らは 誰じゃ ? 」
女王は、バラの木の周りの庭師たちを指さし、
アリスに尋ねました。
「 あたしが 知るわけないです、
こいつら さっき会ったばかりなんだから 」
背中の模様は 皆、同じなので、
女王は それが 庭師か、兵士か、廷臣たちか、
自分の子どもなのか、判別できなかったのです。
「 なんですか 一緒にいて 知らないのですか ?
おまえは 物をしらぬ アホの子なのですか ? 」
アリスは 女王の尊大な物言いに カチンときました。
「 あっしには 関わりのないことで ござんすから 」
と アリス。
「 こやつの首を ちょん切れぇぇぇえええ ~~ ! 」
女王は 怒り、アリスを睨みつけて大声で叫びしました。
「 ばかなこと 言うんじゃないわよぉお ~ !
何の権利があって あたしの首を ちょん切るのよ ! 」
と アリスは怒鳴り返しました。
「 うぬぬ わらわに口答えするとは 許せん !
バラバラの肉片にして コトコト煮込んで、
美味しくシチューにしてあげるわ ! 」
女王は 怒りに 薄い長方形の体を
プルプル震わせました。
「 妃よ、まぁ 良いではないか、
この娘は まだ子どもではないか、
アホな子は アホだから、
ぁ ほ う っておくが良いぞ、
怒っても腹減るだけだぞ うほほほほ ♪ 」
王が 女王に言います。
女王は ジャックに言いました。
「 じゃぁ こ奴ら三名を ひっくり返しておしまい ! 」
ジャックは、三名の庭師を片足で蹴り上げ、
< ひょい > と ひっくり返しました。
「 その方達 立つのじゃ ! 」
と 女王。
庭師たちは飛び起き ぺこぺこお辞儀をしました。
「 やめなさい ! 模様がチラチラして 目眩がするわ ! 」
と 女王が怒鳴りました。
庭師たちは お辞儀を止めました。
「 ここで お前らは いったい
何の作業をしていたのですか ? 」
女王は バラの木を見て言いました。
「 恐れ多くも賢くも女王陛下様 申し上げますぅ 」
『 2 』 が 片膝をついて言いました。
「 えぇっとぉ てっ 手前どもがしておりましたのはぁ 」
「 ふふっ なるほど ねぇ 」
女王は、バラの木を注意深く観察しました。
ペンキを塗った事が まるわかりです。
「 わらわを 謀ろうとしておったな !
芳しく麗しいバラの香りではなく、
有機溶剤の匂いが プンプンではないか !
どこの世界に シンナー臭いバラがあるのじゃ !
いい歳こいて 袋に入れて吸っていたけでもあるまい。
兵士よ こ奴らの首を ちょん切れぇぇぇええ ~ ! 」
兵士が三名、庭師たちを打ち首にしようとしました。
「 たっ 助けてぇぇぇええ ~ 」
庭師たちは アリスの後ろに隠れました。
「 窮鳥 懐に入れば これを猟師も殺さず、と言うわ。
全然関係ないけど 彼らの首は 切らせないわよ ! 」
と アリス。
兵士たちは 切れ味の鋭そうなサーベルを腰の鞘から抜き払い、
高く掲げながらアリスに ずんずんと近づいてきました。
続 く