偽作 不思議の国のアリス 26 | 藤花のブログ 詩と

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この胸に 湧き上がる気持ちを 言葉にして あなたに贈りたい




「 えぇぇ ~ 

  この姉妹三人は、絵を習っておりました 」


「 何を描いたの ? 」

  と アリス。


「 糖 蜜 ( とうみつ )」 

  と ヤマネ。


「 壇 蜜 ( だんみつ ) なら描きようがあるけど ? 」

 
「 お嬢ちゃんに もっと お茶を入れてあげよう 」

  と 帽子屋。

「 各人、一つずつ ずれてくれないか  」

  帽子屋が一つ動いて、ヤマネも動きました。

  三月うさぎが ヤマネの席に移動して、

  アリスは 三月うさぎの席につきました。

「 ち ょ い と !

  この席、ミルクが こぼれてるじゃないのよ ~ !  」

  そこは三月うさぎが、ミルク入れを

  ひっくり返したばかりの席だったからです。


「 世の中には 避けがたいことも起こりうるのさ、

  自然災害 不慮の事故 残酷な事件等々、

  それを世の賢人は 運命と呼ぶのだ。

  個人の努力だけでは 如何ともしがたい事が

  理不尽にも人を襲うのだ、試練と思い、

  あるがままを あるがままに受け入れたまえ ふふふ ♪ 」

  と 帽子屋。


「 なによ ! 大げさな事言って !

  ダスターで 拭けばいいじゃないの !

  面倒臭がってさ ! 」


「 残念だが ダスターを買いに行けないんだよ、

  お茶を飲むのに忙しくてね、

  でも大丈夫、そのうちに乾燥するから 」


「 あっそう、で その三姉妹って、

  水溶液状態の糖蜜を どんな風に描いたのかしら ? 」


「 水の井戸から 水を かき出すのと同じだよ 」

  と 帽子屋。


「 どういうこと ? 」


「 だから 糖蜜井戸からだって

  糖蜜を 掻き出だせるだろが 」


「 搔き出すと 描き出す 意味が違うじゃないのよ ! 」


「 発音が似てれば いいんじゃないかい ? 」

  と 帽子屋。


「 ほぉお ~ でも、その三姉妹たちって、

  井戸の底に いたんでしょ ? 

  どこに糖蜜を 掻き出したのかしらねぇ ? 」


  ヤマネは、質問を無視して続けます。

「 この三姉妹は 色々な物を描きました

『 M 』 の頭文字の付くものなら 」

「 どうして 『 M 』 ? 」 

  と アリス。

「 何か 問題があるかい ? 

  君は 『 S 』 のほうが好きそうだね、

  きっと 『 ド S 』 なんだね、ふふふ 」

  と 三月うさぎ。

「 ムチで しばいたろか ! 」

  と アリス。


「  S.フロイトが提唱した精神分析の用語で

『 イド 』( エスとも言う )は 

  本能的衝動 ( リビドー ) の貯蔵所で,

  快感原則に従って 快を求め 

  不快を避ける機能を有するとされているね 」

  と 帽子屋。


「 そんな難しい話なの ? 」


「 関係ないね 」

  と ヤマネ。

  ヤマネは、先を続けました。

「 たとえば 『 もしも 』 とか 『 もしもし 』 とか、

『 未来 』 とか 『 難しい 』 とか 『 面倒 』 とか、

『 もっと 』 とか、『 もう 結講 』 って言うでしょ

  お嬢ちゃん、『 もう 結構 』 の絵なんて見たことあるかい ? 」


「 そんな物 見たこと無いわよ ! 

  そんなもの 描けるわけ無いでしょう、

  近代美術か ? シュルレアリスムか ? 抽象画か ? 」
 
 
「 口を挟まないでくれるかな 」 

  と 帽子屋。


「 そうとも それは 見事に高尚な絵画だぞ 」

  と 三月うさぎ。


「 絵画会に 一大旋風を巻き起こす 革命的な作品だ 」

  と 帽子屋。 

「 ルーブル美術館や 大英博物館に所蔵してもいいくらいだ 」

  と 三月うさぎ。


  アリスは この連中の 某高田純次的適当さには、

  もう 我慢できませんでした。


「 もう 結構よ ! ダラダラ、延々と内容のない 

  オチのない戯言に 付き合ってられないわ ! 」


  アリスは 目を見開き、歯茎を剥き出し、

  思いっきり 醜い表情をして、言いました。


「 これからが佳境で 大スペタクルな展開になるのに、

  ゲホンゲホ発電所が 大爆発を起こし、

  井戸の底に眠っていた古代生物が

  ヤバイ物質の影響で目を覚まし、巨大化し、

  3姉妹と 壮絶な戦いになるんだ。

  はたして生き残るのは 人類か?

  それとも 眠りを妨げられ怒りに燃える 巨大古代生物か ? 」

  と ヤマネ。


「 今年公開の 怪獣映画の予告編かよ !

  一生やってろ ! ヒマ人どもがぁぁああ ~ ! 」


  アリスは 憤懣やるかたない思いで席を立ち、

  その奇妙なティー・パーティから立ち去りました。


  何度か 振り返ってみましたが、

  またヤマネは寝てしまい、3月うさぎと 帽子屋は、

  アリスが去っても 一向に意に介さないようです、

  そこには 時間が流れず グルグル回っているようでした。


  最後に振り返ったとき、3月うさぎと帽子屋は、

  ヤマネを お茶のポットに押し込めようとしていました。


「 ヤマネ茶でも 作るつもりかしら ?

  どんな味がするんだろう ? 

  生臭くて 毛が混じって まずそうね 」

 
  アリスは 森の中の道を歩きながら言いました。


「 今までに、最低のくだらない、アホらしい お茶会だったわ !

  パブでも行って 黒ビール飲んでる 腹黒い酔っぱらいの

  エゲレス流ブラックジョーク聞いてたほうがましだわ。

  あぁぁ ~ あたしの知りたかった、

  あの綺麗な お庭へ行く手がかりも無かったし 、、、 」



  ふと眼を止めると、樹木の一つに扉があるのに気がつきました。


「 木に扉があるなんて 変なの ?

  今日、何もかも変よね、あちこちに扉があるわ、

  ここも 入ってみるか 」

  アリスは ノブをひねり 扉を開けて中に入りました。


 <  ガ チ ャ ! >


「 あれ~ぇ ここは ? 」


  アリスは また あの長い廊下に出ました。


「 なにこれ ? どんな ご都合主義 ? 」


  近くには 鍵の乗ったテーブルもありました。


「 でも まぁいいわ、また戻ったんだから、

  今度は しくじらずにやれそうね、

  いいえ きっと 上手くやれるわ、

  うしゃしゃしゃ ♪ 」

  ポケットに入れていた キノコをかじりました。


「  じゅわっち ! 」


  最初にテーブルの上の 小さな金色の鍵を

  手に取れるくらいに大きくなり、

  あの綺麗な庭に続く 扉の鍵を開けました。

  またキノコをかじり、


<<< しゅるるる~ん >>>


  身長を30センチくらいまで小さくしました。

  アリスは、小さな通路を歩いて抜けました。

「 ついに あの綺麗な庭に辿り着けるのかしら 」

  色とりどりの花が咲き乱れる花壇や、

  美しく水を吹き上げ、飛沫が 光を受け、

  光っている噴水がある庭に行けると思い、

  アリスの目はキラキラ輝くのでした。 

          
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