、
「 えぇぇ ~
この姉妹三人は、絵を習っておりました 」
「 何を描いたの ? 」
と アリス。
「 糖 蜜 ( とうみつ )」
と ヤマネ。
「 壇 蜜 ( だんみつ ) なら描きようがあるけど ? 」
「 お嬢ちゃんに もっと お茶を入れてあげよう 」
と 帽子屋。
「 各人、一つずつ ずれてくれないか 」
帽子屋が一つ動いて、ヤマネも動きました。
三月うさぎが ヤマネの席に移動して、
アリスは 三月うさぎの席につきました。
「 ち ょ い と !
この席、ミルクが こぼれてるじゃないのよ ~ ! 」
そこは三月うさぎが、ミルク入れを
ひっくり返したばかりの席だったからです。
「 世の中には 避けがたいことも起こりうるのさ、
自然災害 不慮の事故 残酷な事件等々、
それを世の賢人は 運命と呼ぶのだ。
個人の努力だけでは 如何ともしがたい事が
理不尽にも人を襲うのだ、試練と思い、
あるがままを あるがままに受け入れたまえ ふふふ ♪ 」
と 帽子屋。
「 なによ ! 大げさな事言って !
ダスターで 拭けばいいじゃないの !
面倒臭がってさ ! 」
「 残念だが ダスターを買いに行けないんだよ、
お茶を飲むのに忙しくてね、
でも大丈夫、そのうちに乾燥するから 」
「 あっそう、で その三姉妹って、
水溶液状態の糖蜜を どんな風に描いたのかしら ? 」
「 水の井戸から 水を かき出すのと同じだよ 」
と 帽子屋。
「 どういうこと ? 」
「 だから 糖蜜井戸からだって
糖蜜を 掻き出だせるだろが 」
「 搔き出すと 描き出す 意味が違うじゃないのよ ! 」
「 発音が似てれば いいんじゃないかい ? 」
と 帽子屋。
「 ほぉお ~ でも、その三姉妹たちって、
井戸の底に いたんでしょ ?
どこに糖蜜を 掻き出したのかしらねぇ ? 」
ヤマネは、質問を無視して続けます。
「 この三姉妹は 色々な物を描きました
『 M 』 の頭文字の付くものなら 」
「 どうして 『 M 』 ? 」
と アリス。
「 何か 問題があるかい ?
君は 『 S 』 のほうが好きそうだね、
きっと 『 ド S 』 なんだね、ふふふ 」
と 三月うさぎ。
「 ムチで しばいたろか ! 」
と アリス。
「 S.フロイトが提唱した精神分析の用語で
,
『 イド 』( エスとも言う )は
本能的衝動 ( リビドー ) の貯蔵所で,
快感原則に従って 快を求め
不快を避ける機能を有するとされているね 」
と 帽子屋。
「 そんな難しい話なの ? 」
「 関係ないね 」
と ヤマネ。
ヤマネは、先を続けました。
「 たとえば 『 もしも 』 とか 『 もしもし 』 とか、
『 未来 』 とか 『 難しい 』 とか 『 面倒 』 とか、
『 もっと 』 とか、『 もう 結講 』 って言うでしょ
お嬢ちゃん、『 もう 結構 』 の絵なんて見たことあるかい ? 」
「 そんな物 見たこと無いわよ !
そんなもの 描けるわけ無いでしょう、
近代美術か ? シュルレアリスムか ? 抽象画か ? 」
「 口を挟まないでくれるかな 」
と 帽子屋。
「 そうとも それは 見事に高尚な絵画だぞ 」
と 三月うさぎ。
「 絵画会に 一大旋風を巻き起こす 革命的な作品だ 」
と 帽子屋。
「 ルーブル美術館や 大英博物館に所蔵してもいいくらいだ 」
と 三月うさぎ。
アリスは この連中の 某高田純次的適当さには、
もう 我慢できませんでした。
「 もう 結構よ ! ダラダラ、延々と内容のない
オチのない戯言に 付き合ってられないわ ! 」
アリスは 目を見開き、歯茎を剥き出し、
思いっきり 醜い表情をして、言いました。
「 これからが佳境で 大スペタクルな展開になるのに、
ゲホンゲホ発電所が 大爆発を起こし、
井戸の底に眠っていた古代生物が
ヤバイ物質の影響で目を覚まし、巨大化し、
3姉妹と 壮絶な戦いになるんだ。
はたして生き残るのは 人類か?
それとも 眠りを妨げられ怒りに燃える 巨大古代生物か ? 」
と ヤマネ。
「 今年公開の 怪獣映画の予告編かよ !
一生やってろ ! ヒマ人どもがぁぁああ ~ ! 」
アリスは 憤懣やるかたない思いで席を立ち、
その奇妙なティー・パーティから立ち去りました。
何度か 振り返ってみましたが、
またヤマネは寝てしまい、3月うさぎと 帽子屋は、
アリスが去っても 一向に意に介さないようです、
そこには 時間が流れず グルグル回っているようでした。
最後に振り返ったとき、3月うさぎと帽子屋は、
ヤマネを お茶のポットに押し込めようとしていました。
「 ヤマネ茶でも 作るつもりかしら ?
どんな味がするんだろう ?
生臭くて 毛が混じって まずそうね 」
アリスは 森の中の道を歩きながら言いました。
「 今までに、最低のくだらない、アホらしい お茶会だったわ !
パブでも行って 黒ビール飲んでる 腹黒い酔っぱらいの
エゲレス流ブラックジョーク聞いてたほうがましだわ。
あぁぁ ~ あたしの知りたかった、
あの綺麗な お庭へ行く手がかりも無かったし 、、、 」
ふと眼を止めると、樹木の一つに扉があるのに気がつきました。
「 木に扉があるなんて 変なの ?
今日、何もかも変よね、あちこちに扉があるわ、
ここも 入ってみるか 」
アリスは ノブをひねり 扉を開けて中に入りました。
< ガ チ ャ ! >
「 あれ~ぇ ここは ? 」
アリスは また あの長い廊下に出ました。
「 なにこれ ? どんな ご都合主義 ? 」
近くには 鍵の乗ったテーブルもありました。
「 でも まぁいいわ、また戻ったんだから、
今度は しくじらずにやれそうね、
いいえ きっと 上手くやれるわ、
うしゃしゃしゃ ♪ 」
ポケットに入れていた キノコをかじりました。
「 じゅわっち ! 」
最初にテーブルの上の 小さな金色の鍵を
手に取れるくらいに大きくなり、
あの綺麗な庭に続く 扉の鍵を開けました。
またキノコをかじり、
<<< しゅるるる~ん >>>
身長を30センチくらいまで小さくしました。
アリスは、小さな通路を歩いて抜けました。
「 ついに あの綺麗な庭に辿り着けるのかしら 」
色とりどりの花が咲き乱れる花壇や、
美しく水を吹き上げ、飛沫が 光を受け、
光っている噴水がある庭に行けると思い、
アリスの目はキラキラ輝くのでした。
続 く