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「 ところで 今日は 何日 ? 」
と 帽子屋が アリスに聞きます。
ポケットから 時計を取り出して 困ったように見ながら、
耳に当てています。
アリスは 少し考えて言いました。
「 21日よ 」
「 あぁ 2日も 違ってるぅ ! 」
と 帽子屋は ため息をつきました。
そして、怒って三月うさぎを 睨めつけました。
三月うさぎは 時計を受け取ると、それを眺めます。
それから時計を 自分のお茶にチャプチャプ浸してから、
引き上げ、また眺めました。
アリスは、時計を怪訝そうな顔で眺めていました。
「 ずいぶん 変わった時計ねぇ、
日付は分かるけど、今が何時なのか わからないなんて 」
「 時間が わかっても しょうがないのさ 」
と 帽子屋。
「 君の時計は 今が何年か わかるのかぃ ? 」
「 あたしの時計は 普通のアナログ表示、
超高級アナログじゃないから 年の表示はないの 」
でも、年って一年間 ずっと同じままだから
特に表示しなくていいのよ 」
「 私の場合も まさに同じなのだ 」
と帽子屋。
アリスには 帽子屋の言ったことの意味が通じません。
「 どうも よく分からないわ ?
詳しく説明して欲しいものだわ 」
と アリス。
「 こいつ、まだ寝てるな、
起きろよ お~い ! ヤマネ ~! 」
と 帽子屋は、ヤマネの鼻ヅラに
ティカップの 熱いお茶をかけました。
「 あ っ ち ぃ ぃ い い ~! 」
ヤマネは慌てて顔を拭い、言いました。
「 いや、まったく同感だ。
おれも そう言おうと思ってたとこなんだ、
でも何で 鼻が熱いんだ ? 」
アリスは うんざりして ため息をつきました。
「 あなた方は いつまでも お茶かっくらってないで
もう少し有効に時間をつかったら ? 」
「 私のように時間と仲が良けりゃ、
有効に使うなんて言い方はせんよ 」
「 なんのことやら さっぱりわからないわ 」
とアリス。
「 そりゃ 君にゃ わからないだろうさ、
どうせ、時間と会話をしたこともないのだろう ? 」
と 帽子屋。
「 な い わ よ !
いったい それ どこのポエム的表現なのよ !? 」
「 人生は 時間に寄り添う
一遍の詩や 音楽のようなものなのだ 」
と 帽子屋。
「 音楽の授業では、音符で音の時間を きざむわよ、
2ビート、4ビート、8ビート、16ビート 」
と アリス。
「 そうなんだ そのせいなんだ 」
と 帽子屋。
「 音符だって 拍子だって
変な具合に 刻まれたくないんだろう 」
と 3月うさぎ。
「 この間 ハートの女王様主催の大コンサートがあって、
私も歌うことになったのだよ。
『 ♪ ギラギラ光る 恐ろし星よ
お空の上から 人を呪う ~
ギラギラ光る 恐ろし悪魔星 ♪ 』」
「 ♪ ギラギラ ギラギラ ギラギラ ♪ 」
ヤマネが 調子はずれの 合いの手を入れます。
「 知ってるだろ、この歌 ? 」
「 なんか変ね 違うのは、聞いたことあるかも 」
と アリス。
「 それで私が 歌の一番も歌わないうちに、
女王が、ぎゃあぎゃあ 言いだしてさ、
『 こやつ、拍子の時間をちょん切って
バラバラにしておるではないか !
噂の 偽装作曲家か ?
わらわを 謀ろうとするものは 即刻死罪、
首を ちょん切れ ! 』 ってね 」
「 まぁ なんて 残酷な !
首を切られたら いくら食事しても、
たくさん お茶を飲んでも、
胃袋に 食べ物、飲み物が行かないから
満腹にならないわねぇ ~
でも ダイエットにはイイのかしらぁ ? 」
と 的外れで不謹慎な事を言うアリス。
「 で、それからず~っと、王女様の時間の呪いで、
今じゃ ず~っと ティータイムなのさ 」
「 なんと いうことでしょう !
あなた方は 王女の呪いをかけられているのね、
それで、ティーカップが こんなに出てるのね ?
それは 某有名アニメの人達が
いつまでも歳をとらないのと似たようなものなのかしら ? 」
アリスは 妖怪のせいとか、呪いという言葉が好きで
物理的にどうなっているかとか 科学的な検証もしないで
テキトウに理解しました。
「 正 解 ! 」
と 帽子屋。
「 いつでもティータイムで、カップを洗うヒマもないのだよ 」
「 じゃあ、どんどんカップが増えてくるわけ ? 」
と アリス。
「 正 解 !
使い終わると また増えるのさ 」
と 帽子屋。
「 ティー・パーティの無限地獄なのね、
お茶っ腹になるわねぇ、やれやれ、
食事の時間もほしいわよねぇ 」
と 他人ごとのアリス。
「 そろそろ話題を変えよう、もう飽きてきたよ。
この お嬢ちゃんなら 我々の知的好奇心を満足させる
レベルの高い 格調高い 意識高い系の
すべらないオモシロ話をしてくれるはず 」
話のハードルを上げるような事を 三月うさぎが言いました。
「 さあ 頼むよ 愉快でワクワクする、奇想天外で、
誰も聞いたことのないような オモシロイ話 」
と 帽子屋。
続 く