「 泣くのは おやめなさい お嬢さん 」
物置小屋の入り口の扉を開けて
娘の 目の前に 一人の女性が現れました
「 だ れ ? ですか ? 」
「 誰であるかは 詮索しなくてもいいのです
とても話が 長く ややっこしくなりますからね 」
「 でも 私は 見ず知らずの人が 信じられなくなって 、、、、 」
「 若いのに なんて可哀想なこと 、、、
私は あなたの事を 密かに見ていたのです
酷い仕打ちを 受けながらも
あなたは いつも仕事を 頑張る とても良い子ですね
私が 仮面舞踏会へ 行かせてあげましょう 」
「 えっ ? 本当ですか ? 」
「 ええ、本当ですとも 私が 全て用意してあります 」
「 でも それって もしかして 地下アイドル目当ての人達の
変な 舞踏会じゃありませんか ? 」
「 それは オタ芸とかいって 変な踊りをする人達の事かしら ? 」
「 そこで わたし 変態が喜ぶような
コスチューム・プレイさせられてしまうとか ?
あなたは 変な芸能プロダクションの
スカウトなのでは ありませんか ? 」
「 いいえ 私は そんなスカウトでもないし
本当に お城で開かれる仮面舞踏会ですよ 」
「 でも なぜ わたしに ? 信じられないわ ? 」
「 人間不信になってしまったのね 可哀想に
あなたへのご褒美にですよ 行きたくないのですか ? 」
「 いえ 行きたいです 行かせてください 」
「 では 支度を始めましょう 」
彼女は 娘の汚れた作業着を
シンプルながら 輝く様な
純白の美しいドレスに 着せ替えさせました
髪をとかし 素早くセットし
品の良いティアラを飾り 首飾りをつけました
「 まぁ なんて綺麗で 透き通るような白い肌なのかしら
目鼻立ちも整っていて 軽いナチュラルメイクで充分ね 」
化粧をほどこして 芳しい薔薇の香水をふりかけ
手が荒れてしまっていたので
パーティ用長手袋も着用させました
「 まるで さなぎから美しい蝶に 変わったようだわ 」
思った以上の出来栄えね
私の時の 良いシミュレーションにもなったわ 」
「 えっ ? 何のことでしょう ? 」
「 それは まぁいいから さあ 外に出てごらん 」
娘が庭に出てみると そこにはカボチャを模した
ファンシーな馬車が待っていました
「 御機嫌よう お嬢様 」
ふとっちょの 馬車の御手が挨拶します
他に もう一人 精悍な男性もいました
「 もうすぐハロウィーンだから
カボチャの馬車よ 気に入ってくれるかしら ?
さあ お乗りなさい おっと その前に 」
その女性は 箱を取り出しました
「 これは 何でしょう? 」
娘は聞きました
「 うふふ その汚いサンダルで 行くわけにはいかないしねぇ 」
取り出した保温用容器の蓋を開けると そこには
まばゆく光る素敵なガラスの ハイヒールがありました
クリスタルカットされたヒールは 七色に輝いています
「 この靴はガラスと 内側は特殊透明樹脂で出来ています
予め 熱処理を施してあります
しばらく履いていると 足の形ぴったりに形成されます
踊りの途中で 脱げてはいけないからね
さぁ 履いてごらん まだ ちょっと熱いかも 」
「 ありがとうございます
もしかして あなたは
善い魔法使いなのですか ? 」
「 魔法使い ? なぜ そう思うのかしら ? 」
「 だって普通は ありえないシチューエーションですもの
それとも これは夢なのかしら ? 」
「 さあ どうでしょう ?
まぁ それでもいいわ うふふっっ ♪
では たっぷり夢のような時間を楽しんでおいで
でも 日の変わる夜中の12時までに
必ず帰ってきてください 約束を守れますか ? 」
「 はい でもそれは なぜでしょう ? 」
「 約束は守れば良いのです それだけを忘れず行きなさい 」
「 はい ありがとうございます では行ってきます 」
「 これが招待状です
これがないと入城できないから それと仮面と 」
「 急ぎましょう 仮面舞踏会が 始まりますよ 」
もう一人いた 精悍な男性が 娘に 声をかけました
「 さぁ お乗りください お嬢様 」
太っちょの御者が 声をかけました
娘は 馬車に 乗り込みました
「 もしかすると これは夢なのかしら ?
いいえ夢でもいいわ 夢ならばどうぞ覚めないで 」
カボチャの馬車は 娘を乗せてお城に向かいました
続 く