「 お義母様に 私が ひとつだけ
情けを かけてあげましょう 」
そう言うと 白雪姫は 王妃に近づきました
「 何ぃぃい ? 情けだとぅ ? お前が かい ? 」
「 そうです これを どうぞ 」
白雪姫は 真っ赤に輝く 林檎を 差し出しました
「 うぬぬぬぅ こっ これは 、、、 」
「 お義母様は よく ご存知じですよね
、、 この 林 檎 を 、、 」
「 む む 、、、、、、 」
「 どんな意味かも おわかりでしょう 」
「 ぐ ぐ 、、、、、、 」
「 本国に送還され わが国民の前で
恥を晒しながら 屈辱にまみれ 処刑されるか
、、、、そ れ と も 、、、 」
「 ぎ ぎ 、、、、、、、、 」
「 今 この林檎を 食べるか
どちらを 選ぶかは 自由ですよ
お 義 母 様 」
よく磨かれた 林檎は
人を 魅惑する 宝石のように
眩く 妖しく 微笑むように 光りました
王妃は 白雪姫から
真っ赤な 林檎を 受け取りました
「 なんだか ギリシャ神話にある
” パリスの審判 ” のようだねぇ お~っほほほっ 」
ざわめきの中 全ての者が 王妃を見つめています
「 最高の美女の私に 与えられし 黄金の林檎 ! 」
その神話を知る者は 胸に不吉な予感が過ぎりました
「 やがては また 争いの 火種とも なろう 、、、 」
舞踏会会場は 水を打ったように 静まり返りました
「 、、、私 が
いなくなって
これで 終わりだと 思ったら
大きな 間違いだよ
油断していると
い つ の 日 か
ガブリと やられるよ
この ” 林 檎 ” のようにね
お ~ っ ほ っ ほ ほ ほ ほ っ 、、、、、、 」
そう言うと 王妃は
濡れたように 艶やかに 光る
林 檎 を
ゆっくりと 齧りました
王妃の 顔色は 蒼白になり
力尽きたように その場に 崩れ落ちました
続 く
「 パリスの審判 」
ギリシア神話の一挿話で、
トロイア戦争の発端とされる事件である。