その日印象深かったのは、青年と年嵩の男2人連れの客だった。
青年は、店に入るなり目を輝かせ、陳列品をじっくりと見て回る。
レウス一式を見て、格好いいと感嘆の声をあげ、リノプロ一式を見て、丸いと笑い転げる。
年嵩の男はそんな連れを優しい目で見やり、俺に、とりあえずカブラ一式を造りたいと相談してくる。
カブラの素材を多少持参してきた男だが、一式揃えるにはまだ足りない。
普通ならば、総て揃えて来てから制作にとりかかるのだが。
「彼のハンターデビューなのだ。これでなんとか、取り計らってはいただけぬか。」
ブナハのスーツをパリッと着こなした男は、懐から、ラージャンハートを取り出す。
母が彼を別室へ通した。
その間、連れの青年は俺の手元を覗きながら、好奇心いっぱいの顔で話してくる。
年嵩の男は自分の世話役で、元ハンターであること。
自分は幼少期に彼に命を助けられ、その背中を追っていること。
「…父、なんだ。
本当のでは無いけれど、わたしの父、だ。」
青年は照れたように笑う。
「父のような、人助けのできる、強くて心優しいハンターになりたいんだ。
無益な殺生はしたくないし、できることなら、モンスターとも上手く共存できたら良いなぁ。」
彼の発言に、居合わせた客達が吹き出す。
「おいおい、あんちゃん。そーんな甘っちょろい戯れ言言ってると、すぐに殺られちまうぜ。」
「共存だと?あいつらモンスターにそんな知能があるもんか。馬鹿も休み休み言え、なあ。」
「全くだ、だいたいテメーみたいなひょろっこいのが狩りなんかできるのか?」
青年は客達をきっと睨む。
一発触発…。
その時、母の一喝が。
「この子を笑うんじゃないよ!」
母は進み出る。
「モンスターにもね、個性もあるし、心もある。連中は、ただ心無く暴れるだけじゃないんだ。
自分の縄張りを守るためであったり、つがいなら相方を守るためであったりするんだよ。
…まったく、力ばっかりのバカなハンターだけだよ、何も解ろうとしないのは。」
客達は唾を吐き捨て、店を出て行く。
「一昨日来やがれってんだ!あんなのは客じゃないよ!」
年嵩の男は、母に笑いかけた。
「いかに腕っぷしが強かろうと、心根がダメな者達はクズでござろう。
ご母堂、この方を笑わなかったこと心より感謝致します。」
2つづく
とわ著