「わたしの妻です。」
照れくさそうなワグナーの言葉を聞き、風駕は少し驚いた。
―この男、女性恐怖と言っていたはずなのに。
「なんと…。ご結婚なさったのか…。それはおめでとうございます。末永くお幸せに。」
そう祝福する。
ワグナーと虎姫は一瞬見つめ合い、ありがとうと仲良く頭をさげる。
「ところで、今日は雷牙君は?姿が見えないが…。」
ワグナーの問いかけに、風駕は視線をずっと先のほうにやる。
「あぁ、雷牙なら…」
「おーーい!」
こちらに走ってくる少年…と言うか、青年というか。成長期真っ盛りという風情。
紅い髪がよく目立つ。
元気な子犬のように駆けてきた雷牙。
「ひどいよ、勝手に一人で行っちゃってさ。」
風駕はさらっと言う。
「声はかけました…。
雷牙が気づかなかっただけです。」
雷牙は首を傾げる。
「え?そうなの?」
「そうです!」
楽しそうに二人のやり取りを見ている虎姫に、ワグナーが解説を加える。
「虎姫、彼は雷牙君。
風駕さんのお供をしているんだよ。」
雷牙、ふとこちらを見る。
「あれ?ワグナーのアニキ、いつの間に?」
ワグナー、苦笑。
「相変わらずだな…。」
「アニキまでひどいな…。って!ちょっと!
その綺麗な人は誰だい?
……まさか……彼女?」
目を輝かせる雷牙の問いに、ワグナーは笑う。
「彼女は虎姫、わたしの妻だよ。」
雷牙は目を丸くした。
「妻…って、ええっ?!
アニキ、結婚したのか~!彼女できたのもオレ、聞いてないぞ!
ともあれ…おめでとうアニキ!」
二度も妻ですと紹介するのは、なんだかくすぐったい。
だが、こちらも、満面の笑みで祝福してくれた。
ワグナーは、なんだかとても嬉しかった。
潮風が香るタンジアに、昼を知らせる鐘が鳴り響く。
雷牙は人懐っこい笑顔を向けてきた。
「アニキ達はどうしてここに来たんだい?」
男兄弟を持たないワグナーは、実は、彼を弟のように感じていた。
「わたし達は、虎姫の両親に挨拶をしてきたんだよ。
それで帰る前に、観光をしようと思ってね。」
隣で虎姫が頷く。
ワグナーは問い返す。
「そういう君たちは?」
「私は、父の言いつけで交易船に荷物を取りにきたのです。」
風駕が、メモを懐から取り出した。
雷牙はおどけてみせる。
「で…オレは風駕のオトモって訳さ。」
つづく
とわ&GG共著