この世に生まれ落ちた場所で、自分の本名を虎姫に教えたワグナー。
何もかも捨てた自分を受け入れてくれた虎姫。
二人は、少し離れた所に佇む人影に気づくことはなく、跡地を離れる。
相談し、タンジアを観光しながら、帰途につくことにしたワグナーと虎姫。
剣ニャン丸と名乗るアイルーが、モガからタンジアへ乗せて行ってくれるという。
語尾がゼヨというおかしなアイルーだが、婚約したばかりの旨を伝えると、高級お食事券をプレゼントしてくれた。
タンジアの港町は相変わらずの活気で。
船着場に降り立ったその矢先…。
「おい!そこのハンター!」
男が、紫色の髪の女性ハンターに声をかけた。
「…私…?」
「そうだ!お主、これを買わんか!」
女性ハンターは、男の抱えるケースを覗く。
「これは?」
男は得意気に胸を張る。
「これはな、我輩が考えたタンジアビールだ!」
女性ハンターは即座に返す。
「何ゆえ私にこれを…?」
男は豪快に笑う。
「実はな、我輩はこのビールで一攫千金を考えておるのだ!」
女性ハンターはすっと目を細める。
「……………。」
男は構わず、一本取り出した。女性ハンターの前にずいっと差し出す。
「そこでだ!まずはハンター達に飲ませてから、この味を町の皆にも広めようと思ってな!」
「すまないが、私は酒は飲まないので…。」
女性ハンターは、そう言って立ち去ろうとする。
しかし、男は立ちはだかった。
「まあ待て!そう言わずに!」
なおもビールを売りつけようとする男。
「ちょっと!あんた!」
見かねた虎姫、二人の間に割って入る。
「この人は、買わないって言ってるわ!ちょっとしつこいんじゃないの?」
そう言って女性の手を取ると、ワグナーの所に連れ帰ってきた。
「まったく…」
女性ハンターを見たワグナー。顎に手を当て、記憶をたどる。
「あなたは…確か…。」
女性ハンターもはっとしたように、ワグナーを見上げる。
「…ワグナー殿ですか?」
驚く虎姫。2人を見比べる。
「え?ワグナーの知り合いなの?」
ワグナーは、一応相手にその名を確かめ、虎姫に頷く。
「この人は、風駕さん…。以前、爺やと一緒に狩りに行った人だよ。」
それを受け、虎姫はぺこりとお辞儀する。
「あたしは虎姫、ワグ…」
ワグナーは、言いかけた虎姫の肩を抱く。
「わたしの妻です。」
つづく
とわ&GG共著