「お嬢。物騒ですから、今夜は早めに宿に戻った方が良い。」
ナイトに言われ、とわは早めに戻ることにした。
通称「風来のナイト」。
ユクモノカサがトレードマークの、漂とした青年。
ガロンとはぐれて後、船で知り合った流れのハンターだ。
3日間の船旅で彼と打ち解けた後、しばらくの間という契約で、用心棒をしてもらうことになった。
とわを宿の部屋まで送り届け、ナイトは必ず鍵を二重にかけるように伝える。
…世間を騒がす、狂気のハンター。
噂で耳にする程度の知識しかない。モンスターへの攻撃は凄惨を極めると。
実在するのか否かも怪しいが、この街ではまことしやかに噂されていた。
とわの心細そうな顔に、ナイトは小さく笑った。
「ハンターナイフだけは、肌身離さず持っていて下さいね。
大丈夫、俺がお嬢をお守りしますから。
それでは、明日朝8時にお迎えに来ますよ。」
部屋の入り口で丁寧に一礼し、彼は扉を閉める。 とわは、言いつけ通り、鍵を二重にかけた。
ベッドに腰掛け、髪を梳く。
「…そろそろ、少し切ろうかしら。」
テーブルの上のハンターナイフに手を伸ばす。
ジョウジが選んでくれた、切れ味重視のナイフ。
とわの好きな、紫色の装飾が持ち手部分に施されている。
とわは鏡の前に立ち、自分の髪を掴んで、ナイフを入れた。
はらはらと散り落ちる髪。
「本当に、良く斬れるわね…。」
いっそショートカットにしてしまおうか。
…でも、ずっと長かったし…。
綺麗な髪だと褒めてくれる兄様や爺やががっかりしたら嫌だな…。
ベッドの上に転がっても、なかなか寝付けない。
誰かがそばにいるのが当たり前だった生活に慣れきっていたとわに、孤独な空間は耐え難いものであった。
とわはこっそり、部屋を抜け出した。
「どこへ行くのです。」
足音を立てぬよう忍び足で歩いていたのに。
廊下の曲がり角に、壁に寄りかかり、腕組みをしたナイトが居た。
「足音と気配でわかりますよ。危ないからダメだと言ったでしょう。」
ひょいと担ぎ上げられ、部屋に運ばれる。
じたばたしてみたが、細身の体に似つかわしく無い力で抑えられ、終いには大人しくするしかなかった。
つづく
とわ&GG共著