『日本ダービーってヒトに置き換えるとどんな舞台?』と聞かれることがしばしばある。

ヒト年齢に置き換え、『高3夏の甲子園の決勝戦って感じかな。』といつも答えている。

今日もそんな回答を1つして、ここで書きたかったことがある。


八百屋にサンマは注文しねえよ

キャラクターの心理を簡潔かつ機知に富んだ言い回しで描くあだち充先生。
『H2』に登場する、私の最も好きなセリフの1つを紹介したい

そもそも『H2』は、「ヒーローが2人、ヒロインが2人」の意味合いを持つ漫画のタイトルである。

ヒーローの2人となるのが、以下の2人。

千川高校の絶対的エース
国見 比呂(ヒロ→HERO)

明和第一高校の天才スラッガー
橘 英雄(えいゆう→HERO)

───────
かつては野球をしており、英雄との過去の出来事によって、高校ではサッカー部のエースストライカーとして活躍していた木根。
しかし、小学生のときに公言して嘲笑の的となった「甲子園に出ていっぱい三振をとる」を実現させようと野球部を掛け持ちへ。

ちなみに、ロン毛でイケメンのモテキャラ。
でも、すぐに化けの皮が剥がれるズッコケキャラでもある。

千川高校の2番手ピッチャーの木根は、その野球センスは抜群で、どこかプライドも高く、それでいて自分を信じきれない面がある。

そして、その木根はもちろん、比呂との女房役となる野田は、絶対的エースの影に隠れがちだが実力日本一のキャッチャー。

地区予選で、木根がピッチャーとして登板した一幕。思うように調子の上がらない木根に対して、キャッチャーの野田はマウンドへ駆けつける。

マウンド上で木根─野田バッテリーが交わした会話。

野田
「ボール半分、中に入ったな。」
木根
「注文が細けえよ!」
野田
「光栄に思え」
木根
「あん?」
野田
「おれは、八百屋にサンマは注文しねえよ。」


天才ピッチャーの比呂がいるので、絶対にエースになれないことは分かっている。
ただ、人知れず、投球練習を1日も欠かさない。そんな木根の努力を知っていたのかもしれない。

「信頼してるからドンと来い」をその言葉どおりに伝えるよりも、天の邪鬼である木根に向けるには相応しい言葉選びだろう。もちろん、野田自身の照れ隠し的な要素もあるのだろうが。

その後に落ち着きを取り戻した木根は後続をしっかりと抑えチームを勝利に導く。

───────
夏の甲子園の準々決勝。
その木根は夢に見た甲子園での登板を果たす。

エースの比呂を休ませるために送り出された木根に対しての古賀監督からの言葉。

「とりあえず3回
 できれば5回
 できすぎの7回」

木根は7回をできすぎの2失点でまとめる。
初回からの全力投球で体力の尽きそうな木根に古賀監督は続投を命じる。

「野球は9回までだろ」

8回もなんとか無失点で抑える。
8回裏に千川高校は2点を取り、勝ち越しに成功する。
ここで古賀監督は、センターを守っていた比呂をベンチにひっこめる。

つまりは、9回、木根がどんなに打ち込まれて逆転をされようが比呂の登板はありえないということになる。

ヒロインの1人である雨宮ひかりが、甲子園のスタンドでこのように話す。

「大丈夫よ。
 
 ほとんどの人は手前に線を引いてるんだから。
 
 本当の自分の限界よりも…
 
 その一歩先の自分の可能性に気づかないまま
 
 ──ね。」

そして、ベンチの古賀監督はこのように話す。

「不完全燃焼男なんだよ、あいつは。
 
 自分の潜在能力の高さを知らずに
 ここまで来てしまったんだ。
 
 才能だけなら、
 国見に劣らぬモノを持ちながらな。

 殻を打ち破って、
 あいつが生まれ変わるチャンスなんだ。」

 9回のマウンドに上がる木根。

冒頭に記した英雄との過去の出来事によって、彼の存在によって、あえなく野球を断念せざるを得なくなったこと。このトラウマが野球に対して木根が素直に自分を出せない原因(甲子園での登板も自ら進んでではなかった)であった。



1人でいるときでしか素直に自らの感情を出せなかった木根が、かつて祖父と約束した夢の甲子園という場(公共の場)で、屈託のない心からの喜びで、涙とともにガッツポーズを決める。

そして、それがテレビ(公共の放送)で流れているシーンでこの試合は幕をとじる。


第91回日本ダービー

近年の日本ダービーでは、トップスピードの持続性能が求められることが多い
以前に必要であったL2F最速での瞬時のギア替えを持ち合わせていてもトップスピードの持続力で差し込んでくる馬に負けることが見受けられるようになってきた。

つまりは、日本ダービーで求められる能力を以下のとおりまとめることができる。


【求められる能力】
・トップスピードの持続
・スタミナ
・瞬時のギア替え


それでは、いくつかのレースを振り返る。

ホープフルS
12.5 - 10.8 - 12.1 - 12.5 - 12.1 - 12.2 - 12.1 - 12.4 - 12.0 - 11.5
前5F:60.0-後5F:60.2

【求められた能力】
・中盤の持続性能
瞬時のギア替え

皐月賞
12.2 - 10.5 - 11.5 - 11.7 - 11.6 - 11.8 - 12.0 - 12.1 - 11.7 - 12.0
前5F:57.5-59.6

【求められた能力】
・追走スピード
・中盤の持続性能
スタミナ

NHKマイルC

12.3 - 10.7 - 11.3 - 12.0 - 12.0 - 11.4 - 11.2 - 11.5


【求められた能力】
・追走スピード
トップスピードの持続

京成杯
12.3 - 10.7 - 12.6 - 12.1 - 13.0 - 12.6 - 12.4 - 11.9 - 11.3 - 11.6
前5F:60.7-後5F:59.8

【求められた能力】
瞬時のギア替え
・トップスピードの質

きさらぎ賞
12.8 - 11.3 - 11.5 - 12.2 - 12.4 - 12.2 - 12.0 - 11.1 - 11.3
前4F:47.8-後4F:46.6

【求められた能力】
瞬時のギア替え
・トップスピードの質

共同通信杯
12.8 - 12.2 - 12.3 - 12.7 - 12.7 - 12.2 - 11.4 - 10.9 - 10.8
前4F:50.0-後4F:45.3

【求められた能力】
瞬時のギア替え
・トップスピードの質

弥生賞
12.5 - 10.7 - 12.0 - 12.8 - 12.4 - 12.2 - 12.1 - 11.7 - 11.4 - 12.0
前5F:60.4-後5F:59.4

【求められた能力】
・中盤の持続性能
スタミナ

スプリングS
12.7 - 12.2 - 12.6 - 12.7 - 12.9 - 12.6 - 12.0 - 10.9 - 10.8
前4F:50.2-後4F:46.3

【求められた能力】
瞬時のギア替え
・トップスピードの質

青葉賞

12.6 - 10.9 - 12.1 - 12.1 - 11.8 - 11.8 - 12.2 - 12.2 - 12.3 - 12.1 - 12.4 - 11.7

前5F:59.5-後5F:60.7

【求められた能力】
・中盤の持続性能
スタミナ

アイビーS
13.3 - 12.1 - 12.3 - 12.8 - 12.6 - 12.0 - 11.2 - 10.9 - 11.0
前4F:50.5-後4F:45.1

【求められた能力】
瞬時のギア替え
・トップスピードの質
トップスピードの持続

百日草特別
13.0 - 11.7 - 11.7 - 12.2 - 12.2 - 12.2 - 11.9 - 11.7 - 11.5 - 11.3
前5F:60.8-後5F:58.6

【求められた能力】
トップスピードの持続
・トップスピードの質
・中盤の持続性能


次に各馬への考察を書こう。

②レガレイラ

ホープフルSでは、L1最速で差し切る
つまりは、実質上がりはさらに時計を詰められる算段となり、東京2400m戦への舞台替わりはプラス材料。

皐月賞では、追走スピードを求められて当馬の適性からは外れたレース質となった。
明らかに追走スピード不足である点が見られた。

アイビーSではダノンエアズロックに完敗を喫しているが、元よりトップスピードの質ではなく持続性能で勝負するタイプであるので減点材料にはならない。

素直に有力。

④ビザンチンドリーム

追走スピード不足の後半特化型

皐月賞は持続力&追走スピードを求められるため当馬の能力とは真逆の適性を有している馬が台頭した。舞台替わりは絶対的に好転で、内枠で脚を溜めて乾坤一擲の騎乗に期待する。

⑥コスモキャランダ

トップスピードの質は持ち合わせていないが、トップスピードの持続性能を活かして、惰性で突っ込んでくるタイプ。
ドゥラメンテが勝ったような中盤が締まって好位からの脚を引き出せる展開になれば制するのは当馬だと思うが。

⑫シックスペンス

この舞台においても適性を判断できない。
判断できないというよりは未知数か。

高い能力を見せたのは、スローからのトップスピードの質で勝負する展開のみ。
これを前5F:60.0の展開から同じ脚をつかえるかが分からない。

人気になるならば、私はこれを削る。

⑬シンエンペラー

皐月賞では◎を打ったとおり、ミドルペースでの総合力を高く評価している。
皐月賞は各コーナーで不利を受けながら、高い追走スピードを求められた展開で脚を溜めきれなかった。
言い換えると、距離を延長することでポジションを取れたのならば早め抜け出しからのトップスピードの持続力でおさえこむパターンもあろう

⑮ジャスティンミラノ

皐月賞ではこれまでに見せていなかった追走スピード不足への懸念を払拭。払拭どころか、それを武器に1冠目を奪取した形。

これで、当馬はトップスピードの質と追走スピードが高いレベルにあることを見せたことになる。

唯一の懸念材料は、トップスピードの持続性能も高いのかどうか。分からない。

分からない状態で人気ならば、私は評価をおさえる。


さて、今年のテーマは『サウスポーの逆襲』。

2023年秋から、以下の2頭のうちどちらがダービー馬になるのかだけを考えてきた。

⑨ダノンエアズロック

私の本命馬に次ぐ、大箱サウスポー。

アイビーSではレガレイラに完勝。
レガレイラ視点ではトップスピードの質で劣っただけで問題がないのだが、瞬時のギア替え・トップスピードの質・トップスピードの持続力でこれに完勝したのも事実。

弥生賞では中盤の持続を強く求められ、脚を小出しでつかう展開は不向きだった。日本ダービーとは関係のない敗戦。
前走のプリンシパルSでは骨折明けで明らかに余裕を残した造りで、ゴール前には緩めての完勝。
舞台は整った。

⑧アーバンシック

私の本命馬で、第91回日本ダービー馬である。

百日草特別を観て、ここで狙うことを決めていた。同レースではL3Fから段階的な加速を求められていることから、ギア替えの上手くない当馬はL1Fで10.8あたりを踏んでいることになる

京成杯では騎手の騎乗ミスで、ペースの緩んだ箇所で押し上げを図れなかった。中山2000m戦で直線勝負に徹してしまったための2着敗戦。

百日草特別・京成杯・皐月賞のすべてで先行有利の逆行競馬で差し込みを見せた唯一の存在

皐月賞を叩いて渾身の仕上げ。

父のスワーヴリチャードが叶わなかったダービー制覇。父から譲り受けた大箱サウスポー適性で戴冠を果たす

おれは八百屋にサンマは注文しねえよ

予想印
◎⑧アーバンシック
○⑨ダノンエアズロック
▲④ビザンチンドリーム
△②レガレイラ
△⑮ジャスティンミラノ
△⑬シンエンペラー
△⑥コスモキャランダ
△⑤ダノンデサイル

【買い目】計120,000円
・単勝⑧20,000円
・複勝⑧54,000円
・ワイド⑧-⑨6,000円④3,000円②6,000円
・馬連⑧-⑨3,000円④1,000円②3,000円⑮3,000円
・3連複軸1頭流し⑧-②④⑤⑥⑨⑬⑮各1,000円

※日本ダービーのみ買い目を120,000円の設定

それでは、
皆さんの馬券的中をお祈り申し上げます。
最高のダービーを!