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志ある学生の就職先候補から外されつつあり、
優秀な若手のの離職も深刻化する霞が関の国家官僚組織。
 
人事・組織の改革リーダーに抜擢された
人事院の川本裕子総裁のインタビューを日経新聞が実施。
 
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-採用10年未満の退職者は18年度から3年連続で100人を超えた。

・実際は試験制度の改革で秋の総合職試験の『教養区分』は増えた。
 1年を通じた受験者は増加傾向にある。
 実態以上のマイナスイメージが広がってしまうと優秀な若手が忌避し、
 国益を損ねないかと非常に懸念

・若手の離職の大きな理由のひとつは成長実感が得られないという点にある。
 丁寧に目標を設定し公正な評価をすることで改善できる

・仕事の意義が十分説明されていないように思う。
 公務員の仕事は国家の屋台骨を支える、
 本当にやりがいのある日本でオンリーワンの仕事

・霞が関には難しい調整にたけた人も多い。あうんの呼吸や暗黙知とせず、
 ・・・かみ砕いて丁寧に若手に説明するだけでも成長を実感できる

・就職活動する学生が知っている情報は限りがあり、
 現場の職員の持つ情報とは非対称だ。
 ・・・ほとんどの人は非常に誠実に一生懸命やっている

・成功事例は個人の業績ではなくチームワークの成果だ。
 その陰に必ず多くの職員の努力や情熱があるが、
 それは伝わっていない。伝える努力が足りなかった



―働き方改革をどう進めるのか。

・霞が関は政策に関わる業務に圧倒的な優先度を置き、
 組織マネジメントの優先度が低くなりがちな組織文化がある

・政策の仕事は面白く、みんな夢中になる。だが組織は人の集団であり、
 マネジメントもきちんとやってこそ組織のリーダーだ・・・
 部下のエンゲージメントを高めてこそ良い政策ができる

・霞が関は人々の価値観や生活の変化に適時に対応できていない

・21年は再雇用を除く新規採用職員の3割近くは経験者採用

・時間や資金や人材の資源配分によって価値最大化を目指す
 組織マネジメントが大事なのは官も民も同じだ。
 組織戦略は政策という事業戦略と車の両輪



-事前準備する国会対応の改革が進まない。

・部内で限られた人たちに負担が集中しないような不断の改善が必要


―中央省庁は長年、入省年次に沿って人事を決めてきた

・年功序列は若手のやる気をそいでいるといわれる。
 若手をひき付ける職場をできるだけ早く実現したい

・職務ベースという方向に進むことが大事

・国家公務員法は年功序列を重視していない。
 職務給の原則を明言し、職務ベースの人事管理や報酬水準設定を想定・・・
 法の理念を徹底し改善していけばよい

・将来の人事制度や運用の青写真を欠いていた

・きめ細かな人事評価とフィードバック、異動や処遇への反映が大事

・難しい仕事をしている人にはふさわしい報酬が出る形が望ましい。
 人事院では給与制度のアップデートにも取り組んでいる

・勤務間のインターバル、テレワークの推進に加え、
 25年度からはフレックスタイム制を活用して土日に加えて週1日休める


-有識者会議の中間報告の内容でジョブ型と並んで
 注目したのは行動規範の明確化の部分だ。
 民間の「パーパス経営」に似た取り組み

・行動規範は公務員の判断のよりどころとなり、
 仕事を意義づけ、国民からの信頼につなげる、
 という3点が特に大事



-川本氏が説いたのは霞が関の政策偏重、マネジメントの弱さ
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さすがマッキンゼーや大学教授として
企業統治を研究されてきた川本さんだけあって、
問題意識や改革の方向性は、概ね賛同です。
 
 
特に「働きがい」や「成長実感」を持てない組織風土、
マネジメントの改革-僕の言葉でいうところの
上司力鍛錬が必要であるというメッセージは全く同感。
 
ご本人も仰っていますが、
やるべき改革はクリアなので、あとは
老獪かつ岩盤な組織体質にどう風穴を開けられるか。
実行力が問われます。
 
あと一点だけ。僕は改革の方向に懸念があります。
それは
民間企業で進むジョブ型雇用を参考に
職務ベースの人事制度改革に進もうとされていること。
 
若者は可能性の塊。
本人も気づいていない活躍のステージがあるはず。
それを本人の希望する職務を重視して
配置していくようになると、視野狭窄となって
人材育成がおぼつかなくなるかもしれません。
 
また、自分の仕事さえすればよいとする人が増えると
ギスギスした職場が増えるリスクも高まるのではないでしょうか。
 
若者育成に大切なのは、
仕事の意義・パーパスに納得してもらうことと、
管理主義から脱却し、
仕事を任せて自己裁量で働ける環境を充実させることです。
 
この改革は、何も霞が関に限った話ではなく、
多くの伝統的な大企業の人材育成においても
同じですよね。
 
 
以下動画も観られます。皆さんは、どう思われますか?
 
すべては、日本の上司を元気にするために。