著者の筒井淳也さんは、ちょうど僕が営む

FeelWorksが女性活躍推進の仕事を多数手がけていた

10年ほど前、2015年出版の『仕事と家族』を読み初めて知りました。

 

世は女性活躍のロールモデルとして北欧礼賛的な風潮でしたが、

その安直さを指摘するメッセージに共感したものです。

 

■「仕事と家族」北欧で女性が活躍するのは、

公務員ケアワーカーが増えているから 2015.8.4

 

その翌年2016年に書かれた『結婚と家族のこれから』では

ワーク・ライフ・バランス信奉の危うさに納得しました。

 

■ワーク・ライフ・バランス政策を進めると、

 格差が広がる!?『結婚と家族のこれから』 2016.7.5

 

 

 

さて。

そして2023年末の出版されたこの『未婚と少子化』

 

世は少子化に対する危機感が高まる一方。

一般大衆は「こどもまんなか社会」を謳う政治にほぼ賛同。

教育費無償化なら超党派合意できると考える政治家も多いようです。

待機児童問題も一時期ほど騒がれなくなり、

子育て・教育支援の関する国や自治体の取り組みも盛んです。

 

 

ところが、筒井さんは

「こどもまんなか」は少子化対策ではない

とばっさり切り捨てます。

 

日本は欧米と異なり、婚外子が少ないため、

少子化の原因は晩婚化と未婚化であり、

独身の若者が結婚したいと思えなければ意味がない、と。

 

 

様々な調査データなどエビデンスも書かれていますが、

少子化対策に向けては、子育て中の家族ではなく、

子どもを持っていない独身の人の話を聞くべだ、と言います。

 

「児童手当を拡充します」と政府が発表したとき、
 結婚に踏み出せない若者が
 「じゃあ誰かと結婚できる!」と考えるのかと言えば、
 多くの場合そうはならない、とも。

 

確かに一理ありますね。

 

とはいっても、僕の見立てでは、

現代の若者は将来不安が強くなっており、独身者は

結婚の先の出産・子育てまで視野に入れている人も

少なくないと思います。

 

その意味においては、筒井さんの指摘するように

独身の若者が結婚しやすくなるよう

安定した雇用と収入を確保するとともに、

現在進んでいる子育て支援も

共に進めることが大切なのではないかと思います。

 

 

ちなみに、筒井さんは

子どもを大事にするからこそ、少子化が進む、

とも主張されています。

 

何事にも副作用があるということなのかもしれませんね。

 

 

 

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・比較的大きな誤解は、
 「少子化対策とはすなわち子育て支援のこだ」という認識 

・「・・・婚外子を増やすことが少子化対策になるはずだ」
 ・・・これもまた誤解である

・移民が出生率に貢献するかどうかはケース・バイ・ケース

・少子化「社会」対策は、
 出生率を上げることではなく、
 出生数が増えないことを前提としても機能する
 社会をいかに構築するかにある

・少子化で最も懸念されているのは
 人口規模ではなく人口構成(年齢構造)である

 高齢化率が高くなると-高齢者を支えるための
 政府の社会保障支出が増え、経済成長にもマイナスの圧力がかかる

・フランスが現在の手厚い公的家族支援をするようになった
 きっかけの一つは、隣国ドイツ(その前のプロイセンを含めて)
 に比べて青年人口が少なく、兵力で不利であるという
 安全保障上の危機感があったからだ

・グローバルな市場に参画する度合いが強いと、
 働き方やきをうぃくは競争的な環境になりやすい。
 韓国やシンガポールはそのわかりやすい例だ

・韓国やシンガポールの競争的な環境は、たしかに国内市場の
 規模の小ささによるところが大きい。しかし、それは少子化
 の結果というよりは、むしろ少子化に影響する要因だと
 考えたほうかよい

・東京都の2019年度の一人あたり県民所得は約576万円
 (当時1ドル=110円程度であったので、6万4000ドルほど)
 であり、北欧諸国と比べても遜色がない

・1950年から数年間続いた(出生率)低下は、
 人工妊娠中絶の「合法化」によるところが大きい

 人工妊娠中絶の規制が緩和されたのは、
 1948年の「優生保護法」においてである

 引揚げてきたきた女性の性感染症や意図しない妊娠
 旧ソ連兵から暴行されたことに起因する


・1989年の出生率が1.57となり、ひのえうまの1966年の1.58を下回った
 「1.57ショック」

・1970年代からの出生率低下の大きな部分は、
 結婚している人が子どもをもたなくなったことではなく、
 晩婚化・未婚化によってもたらされてきた


・少子化対策の文脈であるのなら、
 どちらかと言えばまだ子どもを持っていない独身の人の話を聞くべだ

・出生率が高かった時期には平均寿命は50~60代であったので、
 子育てが終わったらそろそろ寿命、という女性も珍しくなかった

・出生数が多かった時期には、一生のうち月経回数は数十回程度だったが、
 現代では450回にも及ぶという


・結婚している人の出生率(有配偶者出生率)
  あまり下がっていない


 全体の出生率が下落してきたのは、
 晩婚化及び未婚化によるところが大きい

・「こどもまんなか」は少子化対策ではない

・「児童手当を拡充します」と政府が発表したとき、
 結婚に踏み出せない若者が
 「じゃあ誰かと結婚できる!」と考えるのかと言えば、
 多くの場合そうはならない

・子どもを大事にする社会が「多子社会」ではないことは
 家族社会学者にとっては常識だ。むしろ子どもを大事にするように
 なったことが、出生率低下の一つの要因なのである


・家族社会学では、子どもや子育てが家族において
 重要な関心事になったのは近代化以降であるという見方をする


・生後1年未満の乳幼児死亡率は、1899年(明治32年)には
 人口1000人あたり1503.8人だったが、現在は2人程度である

 乳幼児死亡率が150というのは、
 現在のたいていのアフリカ諸国よりも高い数字


・子どもの数の減少や教育期間の長期化もあり、
 「少なく産んで大事に育てる」という意識が浸透する


・子ども中心の価値観が広がっていく中で、
 さらに避妊なとの手段が浸透することで、
 子どもの数が減ってきたのである

・少子化対策で重要なのは、人生を子ども中心に構築することではない。
 むしろ大人にとって、結婚したり子をもうけたりすることが
 人生の他の側面にあまり影響しないような社会をつくることこそが肝心だ


 逆説的だが、子どもが人生に占める位置があまり大きすぎない
 ような社会のほうが、子どもは生まれやすい


・安定した所得、あるいはそれをもたらす仕事があることが、
 結婚にとって持つ意味の重要さ


・アメリカにおいては、婚外子出生は子どもの格差と結びつく深刻な問題

・フランスで60%、EU平均で42%の出生が婚外

・フランスには、事実婚(同棲)カップルの税制優遇のための
 登録制度であるPACS(民事連帯契約)がある


・欧米では、同棲はカップル生活の「お試し」
 のような意味が持たされている

・日本では、結婚もその解消も極めて自由である

 離婚・・・届出人2名と証人2名の
 署名があれば有効な離婚届が完成する

 フランスでは日本と違って、
 離婚に際しては裁判所の許可が必須である


・少子化対策が子育て支援と同一視されてしまうことの問題

・拡充すべきは、安定した雇用と賃金のもとで、
 時間外労働と地理的移動の可能性が少ないような働き方である。
 それは言ってみれば、地方公務員のような働き方である
 
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すべては、日本の上司を元気にするために。