『才能の科学』を読みました。

 

著者は、『多様性の科学』も面白く読んだ

英「タイムズ」コラムニストのマシュー・サイド。

 

■CIAがテロを防げなかった理由とは?

一人ひとりは賢くても、集団なると無知になる『多様性の科学』

 

 

タイトルでは「科学」と謳っていますが、

正確には、ジャーナリストという仕事を活かし、

丹念にエビデンスを集めて編みなおし

著者の主張をストーリー仕立てで語った一冊。

そのため、少々くどいところもありますが(苦笑)。

 

マシュー・サイドが言いたいのは

才能の有無なんで幻想であり、

重要なのは学び続けられる意思と環境ということ。

 

そのエビデンスとして、

数々の音楽家やスポーツ選手のエビソードが

出てきます。

 

モーツァルトは奇跡の子でも音楽の神童なんかでもなく、

6歳になる前に、すでに2500時間の猛練習をしていた

という話には苦笑いしてしまいました。

 

また、単に時間かければいいというわけではなく、

目的を意識する「目的性訓練」の重要性は全く同感。

 

自身の娘たちを実験台に一流チェスブレイヤーに育てた

教育心理学者ラズロー・ボルガーの言葉は沁みました。


 「子どもたちには並はずれた可能性があって、
 それを解き放つのは社会の仕事なんだ」

 

また人材育成の要諦でもある

フィードバックループをいかに創るかについても

深く考えさせられました。

 

僕たち凡人には勇気のわいてくる一冊です。

 

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・20歳までに、最高のバイオニリストたちは
 平均1万時間の練習を積んでいた。これは、
 良いバイオリニストたちより2000時間も多く、
 音楽教師になりたいバオニリストたちより6000時間も多い

・最終的に重要なのは才能ではなく練習なのだ

・フロリダ州立大学の心理学者
 アンダース・エリクソン
 「我々はこうした(技術水準)の違いが不偏であること、
 つまりは生得的な才能によるものであることを否定する。
 むしろ、優秀な演奏家とふつうの大人の違いは、
 生涯にわたり技能を改善しようと
 意図的に努力してきたこだわりの結果を反映しているのである」

・モーツァルトは6歳になる前に、すでに2500時間にわたって
 涙ぐましいほどの練習を積んでいた

・ラズロー・ボルガー
 「子どもたちには並はずれた可能性があって、
 それを解き放つのは社会の仕事なんだ」

 チェス
 可能性を解き放たれた三姉妹

・その差は目的のある訓練につぎこまれた訓練にあった

・一流のスケート選手は練習の中で、人よりも多く転んでいるのだ

・目的性訓練とは、少しばかり力がおよばなくて
 実現しきれない目標を目指してはげむこと。
 現在の限界をこえる課題に取り組んで、
 くり返し達成に失敗することだ。
 傑出とは、快適な領域から踏み出し、
 努力の精神をもってトレーニングにはげみ、
 艱難辛苦の必然性を受け入れることにかかっている。
 実際、進歩は必然的に失敗の上に築かれる。
 これはプロのバフォーマンスに関する
 もっとも重要なパラドックスだ

・求められるのは1万時間の目的性訓練だ

・アンダース・エリクソン
 「人体に並はずれた負担を与えると、
 DNAのさまざまな休眠遺伝子が発現して、
 特別な生理的プロセスが活性化される」

・同じ音を吹き続けるロングトーンの世界記録で、
 ある音楽家が60秒というすばらしい記録を出して、
 これでそろそろ限界だろうとみんなが思っていた。
 そこにケニー・Gというサックス奏者が循環奏法という
 画期的な方法を発明した。鼻から息を吸いながら
 口から一定の量を吐き続ける奏法で、驚くべきことに
 45分間という記録を打ち立てることに成功したのだ


・創造的なイノベーション
 ・・・傑出性と同じで、目的性訓練の苦難から生まれるのだ

・すぐれたコーチは訓練にフィードバックを組み込み、
 それが自動修正につながり、その修正がフィードバックの質を向上させ、
 さらなる改良をもたらすように、練習を考案できる

 フィードバックループ


・成長の気がまえは完璧に傑出性の獲得向きだし、
 固定した気がまえは凡庸さの獲得向きだ

・知性をほめると成績を損なう
 ×「頭が良いのねぇ!」
 〇「本当によく頑張ったのね!」

・ニック・ボロテリーは努力をほめ、けっして才能をほめない

・一流のスポーツマンは望ましくない証拠を取りのぞいて、
 自分の能力について過大な信念を維持する方法を身につけている

・ジョージ・オーウェル『1984年』
 「二重思考」(ダブルシンク)

 二つの矛盾した信念を同時に持ち、その両方を受け入れる力。
 (中略)不都合になった事実はすべて忘れて、また必要になったら
 忘却の彼方から必要なぶんだけ引き戻してくる。(中略)
 このすべてが必要不可欠なのだ
 
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すべては、日本の上司を元気にするために。