11/29付の日経新聞の報道には

やはりそうなってくるのか、と身が引き締まる思いがしました。

 

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コロナ下、揺らぐ雇用保険 

雇調金支払いで財源急減 

 

22年度保険料、労使負担1兆円増も

 

・資金不足を補うために何も手当てをしなければ

 保険料率は2022年度に2倍の1.2%になる。

 単純計算で労使負担は年1兆円規模で増える。

 

・雇調金のコロナ後の支給決定額は

 20日までに2.2兆円に達した。

 

・雇調金は企業が拠出する

 「雇用安定資金」でまかなうのが本来の姿だ。

 しかし、この財源は既に枯渇し、

 雇用保険本体の積立金を活用してしのいでいる。

 

 雇用保険からは既に5千億円を融通し、

 さらに数千億~1兆円超の追加も見込まれる。

 

・資金の融通は返済が前提だ。過去にはリーマン危機の際に

 雇用保険本体から、雇調金のために

 500億円程度を貸し出したことがある。

 

・今回の貸し出しは桁違いに巨額で、

 雇用保険の積立金そのものが急減している。

 20年度末の残高は前年度比1.7兆円減の2.7兆円の見込み。

 

 過去最高だった15年度末(6.4兆円)の4割程度まで落ち込む。

 本来の目的である失業保険や育児休業給付の

 お金が足りなくなりかねない。

 

・改めての引き上げの時期は22年度になるとみられる。

 まず21年度末で0.2%分引き下げる時限措置が終わる。

 さらに一定以上の積立金があれば弾力的に

 保険料を下げられる規定も22年度から適用できなくなり、

 0.4%分上がる。料率は計0.6%上がる計算

 

・保険料率は2年前の決算を基準に決める原則

 

・今の料率は0.6%。2倍の1.2%となれば会社員が

 給与から天引きされる額も2倍になる。

 給与が月30万円の場合で保険料は

 月900円から1800円に上がる

 

・雇用保険の主要な機能である

 失業保険の給付も増え始めている。

 9月の支給決定件数は約11万件で前年比11.8%増

 

・財務省は一般会計からの

 最大1兆円規模もの補填には難色を示す公算が大きい

 

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コロナ禍で困窮に陥る人や企業は救わなければならないものの、

もともと大赤字財政を続けてきた日本の行政。

 

雇用保険は保険という名前がつく社会保険の一種ですが、

名前を変えた税金にすぎません。

 

税金は大衆が納めて、

公助のために使うものですから。

 

という意味では、税金の使い方を決める

最高責任者である総理大臣が

「自助、共助、公助」と公助を最後にしようと語るのは

おかしい。

 

僕たち一般大衆が、自分たちのこととして、

自助、共助の重要性を語るのは自律のために大切ですが、

政治家は公助のために働かなくてはいけません。

 

さて。それにしても

雇用保険の財源が雇用調整助成金の支給で

逼迫し、5年前の2015年の4割程度まで

6.4兆円あった貯金が2.7兆円まで

2020年末で落ち込むとは。。

 

ちなみに、この日経の記事ではわかりにくいのですが、

現在の一般企業での雇用保険の料率は0.9%です。

このうち事業主が2/3を負担するので、0.6%。

従業員は0.3%を負担する構造になっています。

 

この記事の取材によると、2022年度には倍の1.2%とありますが、

おそらくこれは事業主負担ぶんなので、従業員は0.6%負担となり、

全体で1.8%になるのだと思います。

 

しかも、これはあくまで雇用保険だけの話です。

倍増するのはいえ1.8%程の話です。

 

第2の税である社会保険には

健康保険、厚生年金、国民年金、介護保険、労災保険など

雇用保険含めて約30%の負担があり、

第一の税であれる所得税、住民税は

それとは別に10~20%の負担があります。

 

この40~50%の負担がさらに増えたら

とてつもない大増税となります。

 

いわずもがなですが、これ以外に

消費税10%の引き上げもあるかもしれません。

 

 

飲食店や観光業の皆さんには切実な支援とはいえ

異論反論も多いGoto事業にも多大な税が投入されており、

もともと重い負担であった所得税や住民税も

数年後上がる公算が大きいでしょう。

 

『グレート・リセット』の中で、

著者のクラウス・シュワブは

過去の財政難の際の税の引きあげのものすごさを

世界の歴史から指摘しています。

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 フランスでは、1914年には所得税の最高税率がゼロだったが、

 第一次世界大戦終結の翌年には50%に引き上げられた

 

 カナダが戦費調達のために「一時的な」措置として

 所得税を導入したのは1917年だが、

 第二次世界大戦中には大増税に踏み切った。

 法人以外の個人が支払う所得税に一律20%の付加税を課し、

 高い限界税率(69%)を導入

 

 第二次世界大戦中のアメリカでは、

 所得税が「階級税」から「大衆税」へと姿を変えた。

 1940年に700万人だった納税者は、

 1945年には実に4200万人となった。

 

 アメリカ史上最も累進的な課税がなされた年は

 1944年から1945年の間で、20万ドル(2009年現在の240万ドルに相当)

 を超える所得に94%の税率が適用

 没収税と非難されることも多かったが、

 その後20年間80%を下回ることがなかった

 

 

 戦時中のイギリスでは、

 所得税の最高税率が実に99.25%

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そう。

今は致し方ない。苦しい時に政府は

セーフティネットを機能させなければならない、

支援をせよ、というのは道理です。

 

ただ、打ち出の小槌はありません。

コロナ禍セーフティネットの財源は政治家が生み出しているのではなく、

僕たち一般大衆がこれまでコツコツ積み上げ託してきた

社会的な財政予算から出るのです。

 

 

ここが逼迫したら、

誰が返すかといえば、やはり、僕たち自身。

 

借りたツケは必ず返さなくてはいけません。

 

そうしなければ、1940年代後半の

預金封鎖・新円旧円切り替え時のように

賢い財務官僚の戦略によってハイパーインフレが引き起こされ、

コツコツ積み上げてきたものをすべてが紙くずになり、

路頭に迷いかねない。

 

数年後、政府や自治体から

届く請求書を覚悟しながら、今をしのいでいきましょう。

 

 

 

すべては、日本の上司を元気にするために。