2/10付け日経新聞2面のロングインタビュー

 

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モノ作らぬメーカーに パナソニック・津賀社長の危機感

 

・米国の店に行ったら消費者がうちのプラズマテレビと

 ティッシュとバナナを同じワゴンに入れて買っていた。

 『テレビが安いからプールサイドかガレージで使うんや』と。

 開発者はホームシアターとしてリビングで使ってもらおうと

 高画質にしているのに

 

・機能が優れ装備がリッチであればいいという

 高級・高機能を追求する『アップグレード型』はもうやめる。

 暮らしの中で顧客がこうあってほしいと望むことを、

 製品に組み込んだソフトの更新で順番にかなえるような

 『アップデート型』に変えていく

 

・今のイノベーションはほとんどソフトウエアで起きている。

 ハードウエアの進化が一定段階になると、

 ハードを動かすソフトがイノベーションを起こす構図だ。

 ハードは単にソフトのイネイブラー(目的を可能にするもの)になる

 

・完成品を顧客に渡すのは一見素晴らしいが、

 すぐにコモディティー化する。

 私たちがソフト企業になるか

 ソフト企業と手を組まないとイノベーションは起こせない

 

・我々が目指すのは『くらしアップデート業』だ。

 メーカーであってメーカーではない。

 この世の中、絶対的に最高なものが

 あるわけじゃないんですよ。

 そういうメーカー視点はもうやめる

 

・日本の工場で品質面などを実証した上で

 海外の生産はパートナーに任せるなど、

 ファブレスへのシフトがこれからの主たる取り組みになる

 

・GAFAだけ伸びるのか。私はそうは思わない。

 メーカーが主導する工業的な産業が暮らしを豊かにした。

 彼らはその上に乗っかっている。

 我々の進化が止まればGAFAの進化も止まる。

 

・アマゾンに電子レンジの何が分かるのか

 

・4月に中華圏を専門で見る初めての

 地域別社内カンパニーをつくる。

 中国のスピード感についていけなければ

 アジアでもインドでもうまくいかない

 

・いまだに既存事業を一生懸命やればいいんでしょ、

 少しでもアップグレードした商品を出せば

 日本メーカーがみんなへたるから、

 自分たちだけは頑張れるという意識は残っている。

 これでは何も変わっていない。お客様から見れば

 一旦選択肢が減るだけで、

 結局ダイソンやアイリスオーヤマが出てくる

 

・現在の危機感はもう200%、深海の深さだ。

 今のままでは次の100年どころか10年も持たない。

 会社をばらばらにすれば生き延びる事業もある。

 だがパナソニックを任されている私にその選択肢はない

 

・既存の人は既存の事しか考えられない。

 既存事業は人口減などの変化にさらされ

 急速に成長が見込めなくなる。

 ビジネスモデルを変えないといけない時に、

 ビジネスモデルが議論できる人に来てもらう

 

・私も社長になったからこそ過去を否定しているが、

 普通は抵抗を受けて面倒くさくなる。

 パナソニックを外から見たらこんな矛盾があります、

 とダイレクトに言ってもらう。

 中国人の社員なんか私に好き放題言いますよ。

 しかも上から目線で。それが必要なんだ

 

・これからはBtoBの時代なんですよ。

 法人向けを通じて個人の暮らしをアップデートする

 『BtoBtoC』だ。目線を変えると生活水準向上に

 役立てることはたくさんある

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ものすごい危機感、焦燥感です。

伝統ある大企業の経営を担う重責と心労は

想像を絶します。

 

これはパナソニックのみならず、

昭和の戦後の高度成長を経て平成初期に

ジャパンアズナンバーワンを勝ち取り、

日本経済を支えてきたメーカーの

存続成長を託された経営者はすべて同じではないかと思います。

 

津賀社長が、パナソニックから

転職しマイクロソフトに転じていた

樋口泰行さんを呼び戻し、経営陣に参画させた

前例にない意志決定の背景もよくわかります。

 

FeelWorksでは、メーカーの現場を指揮する

幹部や管理職の皆さん対象に「人が育つ現場」の再興に向けた

研修やコンサルティングを多数実施しています。

 

この中で、日々痛感するのは、

メーカーで働いてきた人たちの志の高さと

仕事に対する情熱です。

 

一方で、頑張れども頑張れども

手応えを得られないことの連続による

現代の疲弊感、無力感の広がりも感じます。

 

真摯に働く人たちが報われない実情に

やるせない思いでいっぱい。

日本発祥の企業が元気になってほしい

という思いも高まる一方です。

 

パナソニックを始めとした日本のメーカーに

もう一度輝いてほしいと切に願います。

 

 

だからこそ、津賀社長の考えている方向性は

本当に適切なのだろうかと疑問を覚えます。

 

それらは、重責からくる焦りと

大企業ならではの無意識の驕りから

きているのではないでしょうか。

 

例えば、

『アップグレード型』から『アップデート型』へ

というコンセプトは、メーカー社内であれば

わかるのかもしれませんが、

一般の感覚では理解しづらいです。

 

ファブレス、メーカー体質はもうやめると

仰っているからなおさらです。

 

成功したソニーと比して、過去挑戦してうまくいかなかった

苦い思い出があるのかもしれませんが、

『ハード中心型』から『ソフト中心型』へ

としたほうがまだ潔い感じがします。

 

社内に蔓延する固定観念や既成概念の多い

メーカー体質に強い課題認識を持ってらっしゃいますが、

ご自身もそのメーカー体質から抜けきれないでいるようです。

 

象徴的なのが、BtoCは儲からないから、

BtoBにシフトする経営判断に拍車をかけたエピソードとして、

アメリカで自社のプラズマテレビが

ティッシュとバナナを同じワゴンに入れて買われ、

プールサイドかガレージで使われていたことに落胆されていること。

 

 

確かに、開発したメーカーとしては

リビングで高画質で楽しんでほしいという思いがあったのでしょう。

 

しかし、

狙い通りの消費行動が起こらないことは、落胆するより

市場の変化への気づきととらえるべきです。

 

想定外の消費のされ方をしているということは、

落胆することではなく、新たなニーズを発掘できたと

前向きにとらえるべきではないでしょうか。

 

ティッシュやバナナよりプラズマテレビが

格上だという、メーカーとしての驕りも漂います。

 

僕が何より危なげに思うのは、

メーカーでありながら、

モノづくりの現場を放棄し、品質保証のみをやる

ファブレスを標榜されていること。

 

綻びつつある自社の強みのテコ入れを放棄し

苦手な分野、弱みの分野で事業展開で

自ら負け戦に進もうとしているのではないかという懸念です。

 

同じ日本人として、もう一度輝いてほしいからこそ言わせて頂くと、

日本のメーカーは確かに

平成の30年間苦しみ続けましたが、

それは、BtoCのモノづくりがダメになったのではなく、

Cの変化、つまりの個人消費者の変化に

追いつけなかったから、ダメになったのではないでしょうか。

 

実際、個人の変化に敏感な

アイリスオーヤマやダイソンやハイアールは

メーカーとしても伸びています。

 

アマゾンに電子レンジの何が分かるのか

と苛立ちを隠せないでいらっしゃいますが、

残念ながら、個人の変化対応という観点では

アマゾンは電事レンジについて

パナソニックよりも分かっているのかもしれません。

 

個人消費者からすると、アップグレードもアップデートも

どちらでもよいのです。

むしろ一度購入したモノがどんどんアップデートされて

以前使えていたサービスが使いにくくなったり

その都度新しい使い方を覚える煩わしさを感じている人もいます。

 

個人は、いま、ここの自分が使い勝手のよいモノが欲しいだけです。

モノそのものではなく、便利、ラク、楽しいetc.といった価値が欲しいのです。

そのための技術として、ハードやソフトがあり、

専門家であるメーカーに絶妙な組み合わせ商品を作ってほしいだけなのです。

 

経営者として、台頭する中国市場、GAFAが気になるのはわかるものの、

日本のメーカーには、

松下幸之助翁の「水道哲学」など創業の精神に立ち返り、

真っすぐに今の時代の個人の変化に対峙し、

呼応できる人が育つ活躍する「人が育つ現場」を再興させ、

日本メーカーならではのモノを創ることではないでしょうか。

 

少し厳しめの書き方をしましたが、

僕も日本企業経営者の末席にいる1人として、

同郷の日本を代表するメーカー、モノを愛するが故、

とご寛恕頂ければ幸いです。

 

すべては、この国に「人が育つ現場」を取り戻すために。

 

 

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