を読みました。

 

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・「社会から漏れ落ちている」と思っている人が、

 実際にはこの社会に深く根ざした存在である

 

・「コミュ障」とされる人た単にコミュニケーションが

 うまくいかないのではなく、

 「うまくいっていない自分を他者はどう思っているか」

 という再帰的な視点を発生させるために

 余計にしんどくなっている

 

・「コミュ障」は2010年代になってから広まった言葉

 

・第二次世界大戦後から2000年前後くらいまでの

 中学校の長期欠席割合を示すグラフは、

 「U字型」を描く。

 

・私は、小学校時代を学校に行かずに家で過ごし、

 現在は大学教員をしながら不登校経験を持つ人と

 社会のつながりについて考えている。

 「不登校経験を持つ不登校研究者」である

 

・本書が目指すのは、生きづらさを抱える存在を通して

 「私たち」について考えること、もっといえば、生きづらさを抱える人と

 生きづらさなど縁遠いと感じている「普通」の人とのあいだに

 「コミュニケーション」を回復させることである。

 

 本来コミュニケーションをめぐる問題とは、

 「コミュ力/コミュニケーション能力」というかたちで

 個人に押しつけられるべきものではなく、

 私たち一人ひとりの「あいだ」に存在する関係性の問題

 であるはずなのだから

 

・「生きづらさからの当事者研究会」(通称、「づら研」)

 

・「コミュニケーション能力のある人」とは、

 二者間の意思疎通を達成するうえで

 相手の負担を軽くする「対話コストが安い人」だ

 

・学校の休み時間などに可視化される、

 周囲の空気を読み・ノリにあわせて盛り上がる能力

 (=「コミュ力」)

 

・「コミュニケーションがうまくいきやすい人」はいるが、

 それは「能力が高い人」というより、

 「受け手が時間的・労力的なコストをかけて

 がんばらなくても通じやすい人」だ

 

・否定したら負け。

 そう考えて、私は授業を続ける。

 私自身が、「空気を読めない人」にならないために。

 

 おそらく学生たちは「悪ノリ」だというだろう。

 しかし私にとっては、これは「差別」の問題である。

 周囲のノリを壊さないことを優先して、

 差別を黙認してしまったという後味の悪さが残った

 

 

・「笑いをとる力」としての「コミュ力」は、

 容易に、誰かを「笑い者にする」力、

 ちなわちいじめのリーダーシップと重なってくるだろう

 

 

・「コミュ力」がある人も、

 やはり「空気」を読んだうえで振る舞うから、

 その態度がいかにナチュラルで無理のないように見えても、

 「作為された自然」に他ならない

 

 

・「あの子は変な子」「キャラ化の戦略が失敗した」

 

・朝日新聞とベネッセの共同調査

 「高所得の家庭の子ほどよい教育を受けられる」

 という現状を是認する保護者が増えている(朝日新聞 2018年4月5日)

 

 格差を「問題だ」とみなす人は、

 2008年の53.5パーセントから、

 2012年には39.1パーセント、

 2018年には34.3パーセントとなり、

 年々少数派になっている

 

 

・「生きづらさ」を語る実践そのものが、

 自らを他者へとつなぐカギとなりうる

 

・「おまえは能力くがないから使い物にならない」と言われてきた

 かつての障がい者や女性の痛みを、現代では

 より多くの健常者や男性が「我がこと」として経験しうる状況にある

 

 

・厳しい競争に勝ち抜くことを目指し、敗者となった他者を

 「自己責任」と貶め、自分が漏れ落ちれば同じ言葉で

 自分自身を責める-そうした殺伐とした状況を逆手にとって、

 方向を転換させ、 「あなたの生きづらさ」はほんの少しの

 運やタイミングのずれで「私の生きづらさ」

 でありえたかもしれない、と思いやる方向へとつなぐことが

 できたら。そこでは、「生きづらさ」は単に忌むべきものではなく、

 人を人につなぐものへと、意味をずらされていくだろう。

 生きづらさをひとりで抱え込まず、共有する知恵が求められる

 

 

・「「ひきこもり」をしてきた人間は、<その後>が問題だ。

 外に出られるようになつてからの方が、もっと辛い現実があるんだ」

 (小林 2002)

 

・コミュニケーションのように、

 「他者や場との関係によって変わってくるはずのもの」を、

 「能力」として個人のなかに固定的に措定することを

 「関係性の個人化」と呼んで批判した

 

・「コミュニケーション能力が無い」とされる人は、

 仕事ができない人と見なされ職場から排除されがちだ。

 だが、実際に周囲が丁寧に関係を作り、その人の特徴を摑んで

 苦手なものに配慮すれば、仕事ができる場合も多い。

 彼ら・彼女らが排除されるのは、

 関係性の水準に踏みとどまって考えれば、

 本人が「できないから」だけでなく、周囲の側に

 「コミュニケーションにコストをかけている余裕がないから」

 だと言いうる

 

 

・時に夫の側に「愛情は失われたのか」という悲しみとふて腐れをもたらし、

 妻である私の側には「あなたは変化しないで済んでいるのね」

 という怒りと諦めをもたらした

 

・「コミュ障」を異端としてはじき出すコミュニケーションは、

 空気を読むことを自明とすることで、その空気を共有しない異文化

 との対話から遠ざかる。

 もっと言えば、空気に殉じて不登校・ひきこもりの人を

 「コミユ障」と断じる態度そのものが、

 第二のコミュニケーション能力が萎れている証左かもしれない

 

 

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もと不登校児であった過去を自己開示しながら、

ひきこもりやコミュ障について研究を続ける

アラフォーの著者。

 

ここまでコミュ障とレッテルを張られ、

生きづらさを抱える人の気持ちを雄弁に語れる

人はいなかったのではないでしょうか。

 

コミュ障と相関が感じられる発達障害は

20人に1人ともいわれる現代。

 

僕が営むFeelWorksは、コミュニケーションをカギに

企業内人材育成を支援しています。

 

この10年の仕事を通じて、

ボンヤリと感じている難しさを違った角度から

言語化できたように思います。

 

それは、みんながみんな自分のことで精いっぱいで

他者を思いやる余裕、包摂性がどんどんなくなっていく社会。

人生が思うようにいかないと、これ以上自分を傷つけたくない故に

その責任を他者に求める。もしくは、極端に自分を責めたてる。

 

 

問題の本質は、

著者のいうように、自分と他者の「あいだ」にあります。

ただ、その「あいだ」を埋めるのは、互いの少しずつの歩み寄りです。

 

僕はそう考えますが、

著者は、生きづらさを抱えている人に

「コミュ力」がないとレッテルを張り、無関心な

生きづらさを感じていない人のほうに課題があるとします。

そう考えなければ、個人の問題と切り捨ててしまう風潮故に、

生きづらさはなかなか解消されないという主張です。

 

確かに一理あります。

 

しかし、やはり、

「コミュニケーション」の問題は、

「あいだ」の問題であり、「互いに」歩み寄ることが

解決の処方箋のはずです。

 

「おまえは能力くがないから使い物にならない」と言われてきた

 かつての障がい者や女性の痛みを、現代では

 より多くの健常者や男性が「我がこと」として経験しうる状況にある

という指摘には、膝を打ちました。

 

この真理は、様々な企業・団体でダイバーシティ推進を手掛ける中で

悲鳴があがる男性の方々の声からも痛感します。

 

これも、すなわちは、

これまで強い立場だった男性が

弱い立場を経験し、初めて弱い立場にあった人たちの気持ちになれる

ということです。

 

つまりは、歩み寄れる可能性の高まりです。

 

現代の深い問題ですが、

自分ごととして、人生やキャリア、そして

社会のあり方について考えさせらた一冊でした。

 

 

すべては、この国に「人が育つ現場」を取り戻すために。

 

 

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