消費税引き上げが繰り延べされた。昨年12月に本ブログでも記したが、軽減税率の導入を決定した際には既に繰り延べは決定していた筈であり、まさに予定調和と言うべきであろう。
消費税10%への引上げについては、既定方針として時期の問題のみがハイライトされているように見えるが、その前にすべきことがある筈で、時期繰り延べではなく白紙に戻すべきと思う。その理由はいくつかある。
一つ目は、目的税の危うさである。消費税引き上げの根拠については、今後増大する国民福祉費用の安定財源確保とされており、そのために消費税収増加の殆どを福祉に向けるという目的税としている。しかし、この目的税化は民主党政権時代に、財務省が何としても消費税を上げるために考えた方便であったと思う。当時の民主党は、初めて政権について右も左も判らない(実際に自らの政権を仮免許と称していた首相もいたと記憶している)なか、ものの見事に財務省の掌中で踊らされたと見える。目的税化が増税実現への単なる方便であるならば、根本に立ち返って再度議論すべきであろう。そもそも、お金に色はつけられず、どの税収であっても国民福祉に当てることは可能である。何も消費税に限定することはなく、予算の配分で最優先とすれば済むことであろう。今回の目的税化は、逆に福祉予算配分の重点化を阻害しかねない。消費税で確保してあるから、これ以上の予算配分は無用であるとのシーリングを作ってしまう危険性を孕んでいるのではないかと思うのである。
二つ目は、10%という税率水準が適正かということ。日本の消費税は1989年の3%から始まった訳で、税源として直接税に間接税を加えることで税収の安定化と徴税コストを下げることが目的であったと思う。諸外国では消費税に相当する間接税が高い比率のところも多いため、3%は最初の一歩であり、その後はどこまで引上げられるかの瀬踏みに焦点が移ってきた。その流れの中での10%への引上げ計画であり、一旦動き始めたら最後、原点に立ち返ることを忘れてしまっているのではないか。原点とは日本の税制の中で直間比率をどうするのかということであり、その議論が抜け落ちているように見える。単に諸外国と比べ低い税率であるから更に引上げても良かろうというのでは乱暴すぎる。10%が最終到達点であるかも判らずに、引き上げ時期だけに焦点を当てていては本質を見失うであろう。税制の有りようは国によって異なる訳で、日本は日本の国情に即した税制論議をしっかりと行い、国民も納得する形にすべきである。決して8%よりきりが良いから10%でもなどと、テクニカルな判断・妥協はすべきではないと考える。
三つには、税負担の不公平の是正が抜けていること。古くから「トー・ゴー・サン・ピン」と呼ばれる所得税課税の不公平感が存在しているが、一向に改善したとは聞こえてこず、むしろ議論にさえ上ることが減ってきているように感じる。消費税増税で国民全てから楽に徴税しようとするからには、その前に現在徴税し損ねている筈の隠れた税源を100%と言わずとも7割がたは徴収できる仕組みを構築すべきである。現在取りはぐれている税収の実態と、その具体的な改善策を国民に明らかにした上でなければ、消費税引き上げなぞ唱えるべきではない。
最後に、国の収入である消費税と対をなす国の支出について。舛添都知事の金銭問題が話題を集めているが、消費税を引上げる前提として、舛添氏の如き税金の無駄遣いが国の規模で行われていることの是正が必要である。先ずは議員定数の削減を目に見える規模で行うこと、総人口が減少してゆく中で、現状でも多いと指摘されている国・地方自治体の議員定数削減を先行して実施することが必要であろう。議員の歳費以外にもメスを入れるべき支出は多いと思うが、政治家たるもの「隗より始める」気骨を持って、自ら定員削減と歳費引下げを実践すべきである。自らの権益を堅持しながら消費税引き上げを論議する政治家は、国家財政のシロアリと呼んでもよいと思う。
消費税引き上げは、8%から10%へ、実施期日は何年何月、という数字上の話にすべきではなく、根本から論議し直すべきと強く思う。このままでは2年半後という時期だけが一人歩きしてしまい、引き上げは既定事実化してしまうであろうし、その時に世界経済がどうなっているかは予測不可能である。財政健全化をお題目として叫んでいるが、消費税引き上げの前にすべきことは多くある筈で、この2年半の猶予期間中にきっちりと論議すれば、次回引き上げは回避することも可能であると信ずる。
2016/6/5 12:00