ニュースの直感:シャープ再建はホンハイ案が有力に | フェディのブログ

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シャープがホンハイの経営支援を受ける事になりそうである。


これまでは、国の圧力もあってか、産業再生機構の支援を受けジャパンディスプレイへの併合が有力視されてきたが、出資額は産業再生機構の約3,000億円に対しホンハイは約6000億円を提示し、経営陣の継続や雇用の維持も提案し逆転に至ったらしい。また、再生機構の案を受ける場合には債権を持つ銀行に巨額の債権放棄も必要であったという。これだけ条件に差があれば、シャープのホンハイ選択はビジネス判断として当然であろうし、日本産業界全体にとっても税金から3,000億円を注入するよりは、台湾から6,000億円を受け取る方が間違いなく有益であると思う。


シャープの経営危機については昨年3月のブログにも、事業の切売りで大幅に規模を縮小するしか生き残る道はないと記したが、いよいよ大黒柱の液晶も事実上ホンハイの傘下に入る事になる。そこで書いた様に、シャープは液晶テレビの黎明期に一瞬だけ輝いた企業として産業史には残るであろうが、10年後には、三洋の家電がハイアールになった様にシャープのブランドも消えうせてしまう可能性は高いであろう。ホンハイの最終提案にある経営陣の継続や、従業員の雇用確保も、数年後には事業環境変化といった名目で反故にされることも十分に予想される。


さて、ホンハイにとってはこの6,000億円は妥当な出資と言えるであろうか? 私には高値掴みをしてしまった様に感じる。衆知のとおりホンハイはApple製品の製造下請け(EMS)として急速な発展を遂げ今日に至っているが、近年は中国勢EMSにシェアを奪われており、自社でApple向けには供給できていなかった液晶パネルを取り込み、売上挽回を図るというのがシャープへの出資の目的であろう。が、Appleは既に液晶から有機ELパネルへの転換を目指しており、早晩液晶パネルの需要は大きく落ち込むであろう。巨額の投資に見合う利益をそれまでにあげられるかは疑わしいと思う。

また、この数年シャープが自社液晶技術の看板としているIGZOについても、同社が大型パネルでキャッチに用いていた「亀山モデル」と同様、単なる看板だけのように思う。亀山モデルを広告の前面に出した際に個人的に感じたのは、シャープがとうとう窮地に陥ったという事であった。工業製品で産地は売り物にはならないのは素人でも判る事である、AppleiPhoneは中国で製造されていることは誰でも知っているが、米国企業Applleの製品としてユーザの信頼を集めてきたのである。農産物でもあるまいに、亀山工場で作っていることがユーザにとって何の価値があるというのか、単なる製造側の手前勝手でしかない。他に売り物になるものがなく、窮余の一策としてメイドイン亀山を打ち出したと見えた。


IGZOについても同様で、耳慣れないアルファベットが並ぶと何か素晴らしい技術かと思わされるかも知れないが、ユーザにとっての価値とは殆ど無縁の技術であるように感じる。IGZOの売り物の一つとしてシャープは低消費電力をうたっていたが、その内容を展示会で説明員に聞いてみたところ、単に液晶の開口部が広がることでバックライトが低照度で済むということであった。バックライトがCCFL(冷陰極菅)の時代ならいざ知らず、LEDになってからは低消費電力化が進んでおり、多少の開口部の拡大でパネルの消費電力が謳い文句となるほどの低下は望めないであろう。この説明を聞いて、シャープの展示ブースに大きく掲げたIGZOの看板のメッキがとたんに剥げ落ちた気がしたのを覚えている。もし、ホンハイがこのIGZOパネルに大枚を投ずる価値を感じたとすれば、シャープの宣伝が上手かったと言えるのかも知れない。


一方の、先日まで本命と目されていた産業再生機構による支援であるが、こちらはジャパンディスプレイにとっても受け入れ難い選択肢であったと思う。シャープを除く大半の液晶パネルメーカーが統合されてできた同社にとってシャープは目の前の商売敵であった訳で、オールジャパンとして必死に生き残りを掛けて戦っているのに、その一番の競合相手が同じ日本のシャープであったことは、同社に対する敵対心を高めていたことであろう。また、統合時に各社の製造拠点の統廃合では辛酸を舐めた筈で、このうえ更に商売敵のシャープの製造拠点が傘下に入れば、また塗炭の苦しみを強いられることになる訳だ。このような環境下では統合によるシナジーは生まれようがなく、混乱と社内離反を引き起こすのは明々白々であろう。ジャパンディスプレーにとっては、ホンハイの支援に落ち着くほうがメリットは大きいと思う。先ほどのIGZOが相手、それも日本企業ではなく実質的な台湾企業が相手ならば、思い切って対抗し勝負も掛けられるであろう。


今回のシャープの選択は、背に腹は変えられないというのが本音であったろうが、日本の産業界にとっては良い方向に向かったと感じた次第である。

  2016/2/5 12:00