消費税の軽減税率がようやく一応の決着を見た。
随分と長期間にわたる検討であったが、その間、メディアも毎日の様に政府・自民党・公明党の折衝経過を伝えてきた。解説も微に入り細にわたり、とても本筋とは言えぬ些事である加工食品や外食の定義を賑やかに話題としていたが、結論から言えば家計の1年間の平均的な軽減額は1万数千円であるという。月にすれば、たかが千円強でしかない。冷静に考えれば、月に数百円ほど税負担が減ずることなど、大騒ぎするほどの事ではなかろうと思う。むしろ二段階の税率が並存することによる混乱や、処理コスト増加の方が余程大きいのではないか。
これまでの経緯を見ていて感じたのは、本当に予定通り再来年4月に消費税を10%に上げるのだろうかという疑問であった。決着の仕方を見ても、自民党はそれまで財源不足を盾に強硬に渋っていたのが、最後に急転直下公明党の要求を呑んだばかりか、更に公明党の要求以上の外食までも含めるとまで言い出した。とても本気で消費税引き上げを計画通りに行おうとしているとは思えない対応である。
確かに消費税は税収の筆頭であり、昨年度は15.3兆円で税収の31%を占めているが、所得税はほぼ同額の14.8兆円あり、法人税も10.2兆円と大きい。景気が上昇すれば、所得税、法人税は確実に税収が増える訳で、政府の景気浮揚策が結果を出せれば消費税引上げの切迫度は低まるであろう。昨年の8%への引き上げが国民の消費マインドを毀損し、景気に大きな悪影響を与えてしまったことから見ても、次回はその轍を踏まないことを最優先するのは当然の判断であろうと思う。
景気は文字通り”気”であって、国民のマインドが大きく左右する。それこそ、月に千円強の負担減などは、景気の先行きに安心感が出れば全く気にも留めないことであろう。消費税引上げは、その様な環境下で行うべきであり、煩雑でコストもかかる軽減税率などは行うべきではないと思う。
こう考えると、今、政府がしきりに財界に給与引上げを要請していることも同じ背景として納得がいく。つまり、再来年の消費税引上げは、軽減税率実行への各種処置が間に合わないとして、一旦延期し、景気浮揚を待って軽減措置なしで一律10%へと引上げることである。一連の報道を見て、裏にはこの筋書きが出来ているように感じた。
何れにしろ、これまでのメディアの取り上げ方は本質を外れ、軽減措置ありきでその細目分析に偏り過ぎていたと思う。
2015/12/19 01:00