IMFが人民元のSDR組入れを提案したようだ。
13日にIMFのラガルド専務理事も、この事務局の提案への支持を表明したという。中国は既に世界第二のGDP規模を持ち、輸出額では2009年に米国を抜いて世界一、輸入額でも同年にドイツを抜いて世界2位となっている。直近の実績では、国際通貨決済において人民元の比率は日本円を抜いたらしく、経済規模、通貨流通量から見てもSDRへの組入れには異論を挟む余地はないようだ。
SDRに組み入れられる通貨の条件には2つあり、一番目の「輸出額の多い国の通貨」は既にクリアしており、今回IMF自身が提案した事により、二番目の「IMFが自由利用通貨と認めた通貨」もパスする訳である。
しかし、中国元が自由利用通貨であると言えるには、まだ早いのではないだろうか? 現実に為替レートは中国政府が毎日の変動幅を規制しており、翌日の中心値を政府が指定しているのである。金融市場で自由な為替相場が形成されない通貨をSDRに組込んでは、中国政府に恣意的にコントロールされてしまう懸念はないのであろうか?
当然、IMFもこの懸念は承知している筈で、それでも尚、今回SDR組入れに動いたのは、5年に一度という見直し時期の制限から、次回の2020年まで放置していては、中国の世界経済への影響力が既存の国際機関の網の外で高まってしまうことへの不安が先立ったのであろう。先のAIIB設立等の動きを見れば判るように、このまま中国を既成の世界金融体制から排除しておくと、全く独自の体制を自らに都合のよい仕組みで構築する方向に行くであろうことは予測に難くない。そこで、ハードルを下げてでも中国を今のIMFの体制の中で泳がせる方向にしたのではないかと思う次第である。
最近の中国をめぐる様々な動きを見るにつけ、欧米のいわば世界体制側は、何とか中国を同じスタンダードに引き入れようと、多少のリスクを負っても大きな賭けをしているように見える。確かに欧米が主導してきた世界体制の池の中で、急に巨大化した大魚が勝手気ままに泳ぎまわっては、従来の秩序は保たれまい。しかし、中国の持つ価値観が本当に欧米流の体制に沿うものになるかは、全くもって疑わしいと思わざるを得ない。ニクソンとキッシンジャーがマオ・ツォートンに、ジミー・カーターがディエン・シャオピンにすっかり騙されたことを忘れてはなるまい。彼らは中国指導者の言わばミステリアスな、仙人の如き立ち居振る舞いに幻惑されただけであろう。まさに、根本にある大きなカルチャーギャップの闇を理解できすに、感性的にミステリアスとして覆い隠してしまったのであると思う。今回のIMFにしても、人民元をSDRに組入れた後にも、中国政府が国内経済の健全性を保つためにと称して様々な為替操作をゴリ押ししてくるのではないか。いわば、国連での安保常任理事国での振舞いと同じことが起きるのではないかと思う。中国13億の人民を率いる北京政府とその主は、欧米の理解を超えた存在であり、易々と既存の世界秩序とやらには従わず、それで紛糾するならば自らの価値観で秩序を書き換える方向に向かうであろう。その本性を現すのが何年後になるのか、それまでに我が国も立ち位置を確立していないと、大魚の尾の一振りで吹き飛ばされかねないと強く思う次第である。
2015/11/15 22:00