米国海軍のイージス艦が南沙諸島で中国が領土と主張している人工島の12海里内を航行した。
9月にシー・チンピン主席が訪米した際に、オバマ大統領と意図的にすれ違いを演じたことが今回の米国の行動の契機であろう。南シナ海での複数の岩礁を急ピッチで埋立てを進める中国に対し、オバマ大統領が発した警告に対しシー・チンピン主席は固有領土での造成工事は他国の干渉は受けないと突き放したようだ。これでは、さすがにオバマ大統領も黙ってはおれまい。言わば米国の虎の尾を(意図的に)踏んでしまったということであろう。
さて、これで一気に南シナ海の緊張が高まるかが不安視されるが、恐らくは、暫くの間は両国共に刺激することは避けて自制し、相手側のその後の動きと世界の反応を見定めることになるのではないかと思う。
どちら側に理があるのかといえば、明らかに米国側であろう。岩礁を補強した”島もどき”は領土の基点にはならないというのが国際法である。中国側はそれを承知の上で事実上の軍事拠点化し、周辺の小国に睨みをきかせて南シナ海の実効支配をしようとしているのである。いわば軍事大国という立場を使った恫喝・横暴であり、周辺の小国に対しては使えても、米国や世界を相手には通用する筈はない。この点で、中国側は言葉では何とでも言うであろうが、一歩引かざるを得ないと思う。今後は、米国の本気度を測りながら、落とし所を探ってくるのではないかと見える。
但し、懸念すべき事もある。それはシー・チンピン政権が共産党軍を掌握できなくなる可能性である。報道によれば、腐敗撲滅を強力に進めている政権への軍部の反発は強いという。政権の足を引っ張るために軍部が暴走する可能性はないとは言えないだろう。米国の国防関係者の最近の中国ウォッチによると、現在の中国は戦前の日本に似てきているとの指摘もあるらしい。国民や政権が望んでいない国際紛争を軍部が引き起こしかねない雰囲気を感じているとのことである。日米のみならず、世界にとって中国での軍部の暴走は避けなければならない事態であり、その為には逆説的ではあるが、シー・チンピン政権を後押しせざるを得ない状況となる可能性もあるだろう。金融危機の際に言われた”Too big to fail” が国家に対しても言わざるを得なくなるかも知れない。
このような巨大な鯨の隣にいる我が国の安寧は、鯨を銛で射抜いて解体するまでは訪れないのかと暗澹たる思いに沈んでしまう今日のニュースではあった。
2015/10/27 23:00