ヒラリー・クリントン氏が大統領選に出馬を表明した。
演説では “Everyday Americans need a champion. And I want to be that champion. So I’m hitting the road to earn your vote — because it’s your time. And I hope you’ll join me on this journey.” と出馬を語った。この ”champion” のニュアンスは、ネイティブではないので定かではないが、国を守るために戦う人、リーダーといった意味であろう。背景にはオバマ大統領の弱腰外交への批判が高まっていることがあり、私はもっと強い大統領となるという決意を現しているように見える。
前回、2012年大統領選に向けた民主党の候補者指名をめぐっては、オバマ氏とデッドヒートを繰り広げ、初の黒人大統領か、初の女性大統領かと大きな話題を集めた。個人的にも米国市民の選択に興味を持って見ていたが、オバマ氏の大衆を熱狂させる巧みな演説振りの前には、彼女の勝機はなかった。
さて、そこで今回の再挑戦になるが、前回と環境が大きく異なるのはオバマ外交の失敗により現在の米国のプレゼンスが大きく低下していることであろう。逆に中国が、この数年Pax Americanaの切り崩しを狙って攻勢を強めてきた。いま話題となっているAIIBも米ドルに牛耳られている世界金融体制の中で人民元の存在を高める意図があるようだ。太平洋を挟んで遠く離れた中国の動静を、米国民がつぶさにフォローしてはいないであろうが、その拡張主義の一端はおぼろげには感じつつあると思われる。一方で、中東・西アジアでの米国のプレゼンス低下は衆目にも明らかであり、このうえ更に、実質的に自国の海である太平洋の彼岸である東アジアでも影響力を失うことは、国民感情としても容認はできなくなっているのではないか。中東については、自国内でシェールオイルの採掘が進んだことにより、安全保障上の重要性は過去とは比較にならぬほど低下しているため、既に介入の正当性は失っていると見える。
この様な背景の下では、クリントン氏が次期大統領になるのは難しいように思える。女性初の大統領が誕生するには周辺事情が悪すぎると思うからである。確かにクリントン氏はタフ・ネゴシエーターであり男性とも対等に渡り合える能力はあるだろうが、中国のシーチンピン国家主席にとっては、与しやすい相手と見えるであろう。欧米とは違い、中国ではまだまだ女性の地位は低く、そのような社会環境では、如何に相手の女性元首が優秀であろうと、見下してしまうのは避けられない。メルケル首相がひきいるドイツとは国家としてのレベルが違うのである。
まだ大統領選までには1年以上もあり、今後の行方は見通せないが、クリントン氏の支持率が高いと巷間伝えられる現状が、そのまま継続することはないであろうと思う。
人間にはそれぞれ、人生で光り輝く時代が必ずあると思うが、クリントン氏のそれは、前回の候補者選挙とその後の国務長官時代で既に終わっていると思わざるを得ない。年齢的にも、5年後まで精力的に激務をこなし続けるのは難しいであろう。
2015/4/14