17日に国土交通省がJR東海のリニア新幹線工事実施計画を認可した。
東京―名古屋間は2027年開業、名古屋―大阪間は2045年開業で、総工費は5.6兆円という。期限通りに進むかは不明であるが、ゴーサインが出た以上、何があっても前進することになるのであろう。しかし、その必要性については、いささか疑問がある。
先ずは、既存の新幹線と共存できるのかということ。人口減少が見えている日本では、移動する旅客数も長期的に減少するのは明らかである。総旅客数が減るなかでは、リニアが開業すれば、既存の新幹線から旅客を奪う訳で、新幹線の採算が悪化するのは明白である。料金体系までは仔細に決定はしていないであろうが、現在は健全経営であるJR東海の業績に大きな不安が出てくる。赤字経営となれば、JR北海道の例を見ても、先ずは安全性に不備が出てくる可能性が高い。一応、私企業であるJR東海が投資する事業であるから、第三者が口を挟むのは筋が違うかもしれないが、電鉄事業は公共性もあり、企業の勝手でしょうと放置はできない。とどのつまりは税金で救済することになるのは明らかである。
さらに、競合するのは新幹線ばかりではなく、その速さから、航空機からも旅客を奪うことになる。既に東京―名古屋間は航空機を使う人は僅かになっていると思うが、東京―大阪間もリニアが旅客を奪ったら航空会社の経営にも打撃を与えるであろう。東京―名古屋―大阪の長期的な旅客数を客観的に見積もって、空路、リニア、既存新幹線でどのように棲み分けられるのかを明示し、判断することが必要である。おそらく、JR東海の企画書にはこのような数値は含まれているであろうが、我田引水のバラ色の姿となっているのではないかと危惧する。
二つには、安全性である。総延長の80%以上がトンネルであるらしい。高低差も含め、できるだけ直線的に路線を敷くことから必然的にトンネルが多くなるが、トンネル掘削工事も難工事が避けられず工事での作業員の労働安全確保が不安である。無論、営業走行時の地震等の自然災害も大きな問題であろう。現在、原発再稼動に対し数百年に一度の地震や火山噴火への不安が言い募られているが、何故、リニアでは同じ議論がされないのか不思議である。トンネル内を時速500kmで大量の乗員を載せたリニアが事故を起こせば、原発事故より多くの一次犠牲者を生むのは確実である。原発は実際に事故が起きたので厳しく処遇し、リニアはまだ実現していないから甘く見ているとすれば、過去の原発の安全神話と全く同じであろう。原発反対を唱えている人達(特にジャーナリスト)には是非リニアにも同様の厳しさで、安全性を問うて欲しい。原発にのみ不安をあおり、リニアは不問ではダブルスタンダードである。
三つ目は、技術開発と実用化の関係である。超伝導磁石による浮上走行は、かなり古くから原理は確立し、技術的にも可能性は予測され、これまでに技術の壁をいくつも乗り越え実現したものである。技術開発としては有意義なものであるのは間違いない。しかし、その実用化として、大量の人間を輸送する手段に用いるのは、安全性が十分に確保されている必要がある。少なくとも地震大国である日本での実用化は、人命にかかわらない物資輸送や工場内の搬送等に特化すべきである。技術が出来たから実用化をするという短絡はしてはならない。実用化というのは社会にとってトータルで利便を生み出すものに限るべきであり、決して世界一の技術が出来たから何が何でも実用化するという思考は危険である。
他にも気になる点は多くあるが、いずれにせよ今回の報道を見ていて、関係者や報道の手放しの歓喜振りが余りにも能天気に感じた。メディアは明るい話題には提灯をつけたがるが、もっと冷静に、客観的に深く掘り下げた報道をすべきである。リニア新幹線が決してバラ色の未来を保証していないのは確かであると思う。
2014/10/19 20:00