咳二回での受診 | jasmin jasmin 女医の子育て。

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ほぼ毎日、描いているマンガなどです。

注:今日は思うところ、あったので字ばっかりです。
オチもありません。


先日、私の外来に来たお母さんが印象的でした。
生後4か月の子供の主訴が「咳」とあったので、
詳細を聞いたところ、
「一日に二回くらい出ます。」

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と言うのです。
いくらなんでもそれだけで小児科に来る?と思ったので
もっと詳しく聞いたら、一度に数回続く数秒間の咳が
一日に二度あるとのことで、やっぱりとても軽症なのでした。












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生後3か月までの子供は熱がある(37.5度以上)、
ミルクを飲まないということがあったらすぐに小児科に
行きましょう。逆に言えば、その二点が大丈夫ならば
多少鼻水や咳があっても大丈夫ですよ。


というような話やその他初めて子供を持ったお母さんに
よく聞かれることを私は産後すぐのお母さんたちに
毎週、話しています。
それをまたお話ししたところ、そのお母さんも

「受診したほうがいいかどうか病院に電話したんですが、
ご心配ならいらしてくださいと言われたんです。」

と言っていました。

(まあ、電話は事務さんがとるし、詳細はわからないし日本では
普通「じゃあ、いらしてくださいね。」ということになります。)


結局、薬は出さずにお話をしただけで終わりました。
風邪は薬で治らないし、早くに医者に行ったって
早く治るわけではありません。













一方、お昼休みにネットで少々ショッキング
な記事を見つけました。

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この記事を要約すると中国で真面目に働いていた人が
バッド・キアリ症候群という腹水がとても溜まってしまう
病気になり生活が困窮しました。治療代がないので、
包丁をお腹に刺して自分で何とかできないか、あるいは
ダメだったとしても家族の負担が減ると考えた
という痛ましい事件です。

こういう話は世界中、至る所であります。
「お金がなければ医療を受けるなって言うんですかっ!」
というような論調は日本でよく聞きますが、
世界的にはお金がなければ医療は受けられません。

フィリピンは自分で注射薬を買って病院に持って
いかないと予防接種を受けられないと読んだ
ことがあります。

以前にも書いたんですが、アメリカに居た私の友達
みいやんは子供がインフルエンザによる肺炎で
入院しました。病院に24時間いて酸素飽和度がある程度
上がったら、まだ熱がありゼイゼイしていたのに退院
させられたそうです。そして請求は100万円!もちろん
入っている保険が使える病院でないと受診前に門前払いです。

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日本なら基本的にどこでも受診・入院でき、
もちろん解熱するまで1週間くらいは入院して
いるでしょう。そして保険の種類や区市町村によりますが
請求されるのは3割負担~無料です。

日本では90%程度の小児科時間外受診が軽症です
多くが育児不安からの来院で、
本当に必要なのは医療ではありません。
一方で世界の多くの国は必要な医療を受けられない人を
たくさん抱えています。
人間は平等であるべきだと思いますが、住んでいる
場所によってこれ程、病気になった時の対応は違いますね。
これが現実です。










・・・というような話をFacebookで書いたところ、

内科医の友人Rちゃんに「日本でも生活保護を受けて
いらっしゃる方の中には、医療費がかからないので、
可能なかぎり検査・薬を希望する方が結構います。
一方で、真面目に働いて切り詰めた生活をなさる方々の
中には、必要な検査も受けず処方も必要と思われるもの
まで省こうとなさる方もおられます。前者に憤りを感じる
私は、心が狭いのかもしれません。」というコメント
をもらいました。

精神科医のSちゃんは「精神科の医療助成も重度障害の人
でなくてもとりたがります。精神科薬以外の薬もそれで
まかなおうとしている人がいたり、精神科医自体もあいまい
だったり。」というエピソードを教えてくれました。

日本の医療制度を他の国と比べてみてほしいなーと思います。
特に日本の現状を不当に攻撃するばかりのマスコミは。

そしてこの国民皆保険制度が破綻しないように、
必要な物を必要なだけ享受してほしいと強く願います。

冒頭の話に戻りますが、私が診療をしている地域は
乳幼児医療制度があり自己負担なしです。
しかし、例え窓口で支払いや薬の処方がなくても
医療費は生じており、それは市町村と健康保険会社から
病院に支払われています。

と、ここまで書いたのですが実は私は不安からの
小児科受診はむしろ奨励する医者です。
ただし、

子育てハッピーアドバイス 知っててよかった小児科の巻

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こういう本や小児科学会のサイト
兵庫県柏原市の小児科医を守る会といった
HPなんかを読んでおくと医療費を発生させなくても
子供の健康を守ることはできるんじゃないかなと思います。

長くなったので、どうして私が不安からの
小児科受診をしょうがないと思うかは明日にします。






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子供を病院に連れて行くのは義務のように考えている方、
家で様子をみるというのも立派な治療法ですよ。