治療開始ボタンに込められる思い | 39歳 癌になったママ女医 〜Cancer Gift〜

39歳 癌になったママ女医 〜Cancer Gift〜

消化器内科医 緩和ケア医 2児の母 
39歳で子宮頸癌と診断されました。
それからの経験がどこかで何かの役に立てられればと思い、綴ります。
癌の手術や化学療法などの治療に挑む方。
小さな子どものママで癌を患った方。
医師としての自分、母としての自分に。

毎日の放射線治療の流れは

指定の時間に治療室に入り

服を脱ぎタオルで隠して準備をしたら

放射線治療の台に寝て、

体の固定具でガチッと固定される。


「それでは、本日の治療を開始します」

の声を合図に照射が始まる。

 

ガチャン、ウイイイーーーン

 

 

台が固く尾てい骨があたって

少々痛いのを我慢しつつ、

寸分も動かないようにじっとする。


目を瞑って、

ある時は放射線治療の機械を見つめて、

念じる。

 

’どうか、しっかり当たってください!

できれば癌のところにだけお願いします!

でもやっぱり癌が治るのなら副作用も我慢しますので必要なところには全部当たってください!’’

 

 

放射線が当たっている間できることといえば、

とにかく動かないことと

念じることくらいだ。

 

 

放射線治療室で日々治療をセッティングしてくださるのは技師さん。

治療がちゃんと安心して続けられるのは、

技師さんたちのおかげだ。

 

全28回を通してほぼ同じメンバーで対応してくださった。

世間話など余計な会話は一切なく

毎回同じことを淡々と

同じペースで進めるのだが、

なにか一貫した信頼感があった。

 


技師さんたちを前にすると、

治療を始める前に担当の放射線治療医の先生が

教えてくださったことがいつも頭に浮かんだ。


 

「この病院の放射線治療の技師さんたちは

とても意識が高いんです。

 

放射線治療開始のボタンのところに

 

’’このボタンが患者さんの一生を決める’’

 

と書いた紙が貼ってあるんですよ。

私もそれを見たときはとても感動しました」

 

 

 

 

放射線は目に見えない。

目に見えなくてもそれは、癌を叩き潰してくれるはずなのだが、やっぱり手術と違って目に見えるような結果がなくて、

患者としては

“ちゃんとあたってるかな”

と不安な気持ちがよぎる。



そんな中、

毎日の治療で自分と治療を唯一つなぐ

技師さんたちが、

 

 

 

「このボタンが患者さんの一生を決める」

 


そんな気持ちでいてくださることは

とっても心強い。


 

 

 

医療に関する仕事は常にそういう意識のもとに行われるべきであると思う。

でも、全員が四六時中、その意識を高く保つこともなかなか難しいこと。

 


ただ単に「病気を治す」のではなく

 

「治療によって患者さんの一生が決まる」

という意識。

 




大事なところで、このことをきちんと喚起する工夫がなされている。



感謝!