次々とイネの穂が出てきます。

コレは割とフツーの奴ですが、禾(ノギ、籾の先の針みたいなヤツ)があります。現在の品種には禾の無いものが多いですが、昔は禾が有るのが普通でした。5円玉の稲穂を見てください。中途半端な短い禾が描かれています。
コレ、凄いでしょ!

日印交配種です。ジャポニカに近い形態のインディカ種とジャポニカ種の交配です。
やはりインディカ系が入ると穂がデカくなります。多分、インディカ種は一年草なので、枯れる前に養分全部をタネに突っ込むんでしょうね。ジャポニカ種は多年草なので、養分を株に残して休眠しますから、気前よくタネに全振りするってワケに行かないんでしょう。
ジャポニカ米のモミは一本の穂に100~150粒付くのか普通ですが、インディカ種や日印交配種では300粒以上付く場合もあります。
この穂は、去年、平均300粒以上の大きな穂を出した日印交配種のものです。
現在、分けつの多い個体を選抜しています。穂が大きくなっても数が減ってはダメですからね。
この穂の大きいヤツとは別の個体ですが、ちょうど「五百川」とならんだ株が有りました。

右「五百川」左「日印交配種」です。まるで別の種類の植物です。
「五百川」はコシヒカリの極早生系統です。草姿はほぼコシヒカリと同じで、ちょっとヒョロい感じです。
この日印交配種の茎の太さは「五百川」の3倍くらいあります。
イネの穂の大きさは、茎の太さに比例するので、茎が3倍だと穂も3倍、それで300粒を超えるんです。
こんなのはとても沢山のお米が穫れます。
が、農業用には現状では難しいかもしれません。株が太すぎてコンバインで刈りにくいかもしれません。
それに、日印交配でコシヒカリのレベルの味を出すのはなかなか難しいので、まだまだ美味しくて大量に穫れるイネはできていません。
ウチでは自給用に選抜を繰り返しています。自給用で一家族分、300kgも穫れれば充分でしょうから、超多収米なら5a(150坪)の田んぼで作れます。
150坪の田んぼには、尺角(33x33cmの正方植え)で、5000株植わります。数だけ聞くと結構有るように聞こえますが、育苗箱2枚で足ります。手植えでだいたい1日で植えれます。
一定面積から沢山穫れる品種が育成できたら、自給稲作は劇的に楽になりますね。
コレは今、出穂目前のイネです。手前の短稈系は高さ50cmくらい、奥の長稈系は1mくらいです。
更に、そのずっと奥に2mくらいの巨大なヤツが居ますが、あれはマコモです。イネではありません。
ほら、大人と子どもみたいな感じです。
イネには太さも長さも物凄く個性のある系統が存在します。それらを交配すると、順列組み合わせ以上の多彩な分化が見られます。
親の特性の組み合わせ以上のバリエーションが出てくるのは、古くから栽培されて居るので、祖先に非常に多様なタイプが存在し、遺伝子としてその形質を保ち続けているからです。それが更に組み合わさるので、予想も付かない形質のものが生まれてきたりします。
何が出てくるかわからない無限の可能性を持った植物です。
イネ全体では相当に幅広い多様性を持っているのだろうと思います。
日頃、主流派のイネ品種育成では行われないような、オカシナ交配種を作ったり、変わった形質を選抜したりしていると、そのイネという植物の多様性に比較して、なんと日本の稲作は懐が狭くなったのか、更には、それを国民に知らせるメディアの報道が、いかに固定観念にこびり付いた画一的なものになっているのか、非常に、実物と社会の乖離を感じます。
まずコレ、「高温障害とカメムシ被害」
今、「スポーツの日」は10月の第2月曜日ですね。今年は12日みたいです。昔は「体育の日」と言っていました。10月10日でした。
これは、1964年の東京オリンピック開会式(10月10日)を記念したからなんですが、もう2つ理由があるようです。
一つは晴れの特異日。コレはオリンピック開会式を絶対に晴れの日にやりたいと言う事情から選ばれたそうですが、ホントの特異日は15日で曜日の関係で次点の10日になったそうです。統計的に特に晴れの可能性の高い日と言う事です。
そして、もう一つの理由は、稲刈りが終わっていると言う事。オリンピックは関係ありませんが、その後の、運動会が「体育の日」のこの日に開催される事が多くなるという事で、稲刈り終わってないと具合悪い、って事みたいです。まあ、ソッチの理由はオリンピックも体育の日もなかった頃からそうだったわけですけどね。
つまり、昔の稲刈りは9月下旬から10月上旬にかけてだった、と言う事です。今は8月中に刈っています。
8月中下旬に刈るなら、穂が出るのは7月下旬~8月上旬です。
温暖化で高温障害が大変なのに、一番高温の時に穂が出る様にイネを作っている。
カメムシ被害が大変でそれを防ぐためにネオニコチノイド農薬を使って、それで水系の節足動物、エビ、カニ、昆虫、ミジンコなどが激減しているのに、一番カメムシが多い時期に穂が出るような作り方。
コシヒカリだと、4月下旬に田植えすると、7月中下旬に穂が出ます。カメムシが「いらっしゃーぃ」と言っている時期です。
5月中旬の田植えだと、7月下旬~8月上旬に穂が出ます。刈り取りは一ヶ月弱後になるので、やはり「いらっしゃーぃ」です。
6月下旬~7月上旬に田植えすると、穂が出るのは8月下旬~9月上旬。稲刈りは9月下旬~10月上中旬です。この時期だとカメムシはグッと減ります。同様に高温障害も減ります。
テレビのニュースでは、「気候変動のせいで高温障害(登熟異常)やカメムシ被害が増えている」と言っています。それは嘘ではありません。確かにその通りの現象は起きています。
でも、避ける方法は色々あります。そして一番カンタンなのは、「遅く作る」と言う事です。あ、逆の「より早く作る」も有効です。それで「五百川」の様な超極早生の作付けも増えています。ただ、私は「遅く作る」が良いと思います。秋になると昼夜の温度差が大きくなるので、味が良くなるからです。
マスコミは「嘘」は言っていないけど、「芯を食っていない事」を「真実」のように聞こえる報道をしています。
知らないと気候変動のせいでお米が穫れなくなった、と思い込んでしまいます。真実は「良いコメが穫れる作り方をしていない」です。
作り方だけでなく、品種も晩生の品種を育成すれば、これらの問題は解消します。コシヒカリはゲノム解析が進んでいるので、かなり短期間で「晩生コシヒカリ」を育成することが可能だと思います。ウチにもコシヒカリ系の交配種で9月下旬に出穂する系統は複数あります。
そう言う品種は病虫害、気象被害の少ない時期に栽培できるので、農薬なども少なくでき、品質、食味も良くなると思いますよ。
どうも、農研機構の研究者の中には「晩生コシヒカリ」の育成を主張する人もいるようですが、おエライさんが首を横に振るみたいです。政治的経済的な事情がある様です。
国民は、一部の人々の事情で、品質の悪い、美味しくないコメを、高値で買わされていたと言う事になります。今回の米騒動~大暴落で、業界の裏事情が炙り出され始めました。
「後継者不足」もよく聞く言葉です。
でも、なんとなく、農業ネタの時の「後継者不足」と、製造業、建築業ネタの時の「後継者不足」何か雰囲気が違う感じがしませんか?
農業の後継者不足は「息子が継がない」です。製造業、建築業の後継者不足は「就労者が居ない」です。意味が全く違います。
つまり、農業の話をする時には、身内が継続しない事を「後継者不足」と言い、製造業や建築業では「人手不足」の延長線上に「後継者不足」があります。
農業は「世襲制」と言う暗黙の前提で話しています。そんな事、誰が決めたのでしょうか?
私は、1980年代末頃から、今に至るまで、ずーっと安くて条件の良い農地を探しています。
今は、業界事情をよく知っているので、行政や地域には相談しませんが、以前は田舎の自治体の就農支援窓口などによく相談していました。
が、一度も、積極的に農地を斡旋してくれた自治体はありませんでした。酷いところでは、あからさまに「何処の誰かもわからない人に農地の斡旋などできない。そんな事をしたら私が農家から怒られる」と農業委員会で言われました。農業委員会は地域の農家の代表です。
私は、住所氏名職業などを伝えて相談していたので「何処の誰」かはわかっているのに、ダメだというのです。
つまり、親戚縁者や知人、それらからの紹介がなければダメ、と言う論理です。
実際、2000年より前には「親兄弟、親戚か、近隣地域に縁故者が居ないとダメ」みたいな事を言う地域は普通でした。
先般も何処か北陸方面で「移住者は都会風を吹かすな」とか言う規約かなにかを謳っている地域が話題になりました。
つまり、もともと、「よそ者」が来る事を拒んで、行政ぐるみで高い参入障壁を構築しているのです。
今、YouTubeを見ると農業系チャンネルが人気を博しています。世界中で園芸、家庭菜園は最もポピュラーな趣味ですから、栽培情報を得られる農業系YouTubeはアクセスが多いでしょう。
野球でもサッカーでもプロが多い競技は、競技人口が多いですね。つまり、膨大な数のアマチュアが支えています。プロだけ大勢居てアマチュアが居ない世界は考えられません。
栽培を趣味とする人が多いなら、それを職業にしたい人も大勢居るはずです。それが「真の後継者」です。
こうして、マスコミは「嘘」じゃないけど「大間違い」を、常識の様な顔を装ってバラ撒いています。
そして、農家や農村がそれに乗っかって、苦しんでいる人々の物語を作り出し、世の同情を集めようとしています。
もっと、早い時期に「正しい後継者確保」をすれば良かったのです。
「嘘」でさえなければ「ホント」の一種になると言う、報道のメカニズムが利用されています。

