また、前回同様の禾の話。
これ、ウチで作った交配種です。たしか水稲と陸稲をかけたやつだと思うんですけど、どうもね、陸稲品種には古い遺伝子を受け継いでるやつが居るみたいで、チョイチョイこんな禾の長いのが出ます。


赤米などの「古代米」と呼ばれているヤツも禾の長いのが多いですね。これらはだいたい神社関係みたいですね。
食用として作り継がれてきたと言うより、祭祀用として、お祭りの時なんかのお供え用に作られてきたみたいです。
実用種ではないので、大昔の古いイネの形質を保っているって事なんです。
それらの古代米は赤いのや黒いのや、色付きのやつが多くて、まあ、それはお祭り用だから、ちょっと派手なのが良いや、って話で、そう言うキャラの立ったのが選ばれたのかも知れません。
古代のイネがみんな有色稲だったって訳でもないでしょうけど、その手のイネってみんな禾が長くて、中には10cm超えるような立派なのもあって、そして脱粒性で、穂を揺するとパラパラ落ちて、そして長稈、背が高い1m超える様なイネが多いです。
今の栽培形態では、ありがたくない性質ばっかり持ってますね。
昔、面白半分で古代米を育てて、刈り取って軒先にぶら下げて干してたんですよ。
縁側で手間仕事しながら眺めてると、脱粒性だから、風で揺れるとモミがパラパラ落ちるんですね。
すると、パラシュート見たくなって、モミを下にして禾が風を受けて尻尾のようになって、必ずモミから落ちるんです。
「こりゃあ、親のイネが自分で種まきしとんじゃないの?」と思って、長いノギの付いた種籾を泥田に持っていって、1mくらいの高さから泥の上に落としたら、案の定、モミはピタッと泥の中に刺さって、禾が上に出た格好になります。
その状態で、風や水の流れが当たって、禾に振動を与えたら、モミには先に向かって一方向の微細な毛が生えていますから、モミの根元(穂にくっついていた部分=芽になる胚芽がある部分)方向に進んでいきます。つまり、泥に潜ります。
そうやって、イネは前年の秋に、親株の周囲にバラ撒かれたモミが泥に潜って越冬し、翌春に芽を出して伸びてくるのだろうと思います。
栽培イネでは、そんな仕組みは無くても人間が上手に種まきして苗を育てますから、収穫や籾摺り精米の邪魔になる禾は無い方が良いので、↓こんな丸坊主の個体が選抜され、現代のイネ品種はほとんど禾を持っていません。

コイツを野に放ったら、上手くタネが泥に潜れなくて、みんな冬の間に鳥やネズミや虫に食われて、生き残れないのかも知れませんね。

毎年の事ながら、↓こんな風に穂が出揃うと、「ヨシッ、今年もできたゾ!!」と思ってしまうんですよね。何年やっても・・・

そんで、この後、穂いもち大発生で泣く、とか、台風で全面倒伏に泣く、とか、いろいろ悲劇が待ち構えているわけです。
最後まで気を緩めてはイケませんね。

で、記録的高値で舞い上がって、ダラダラに気を緩めてしまった稲作業界はどうでしょうか?
大暴落に泣いています。
メディアでは、農家、流通業者、農協関係者、有識者、専門家たちが、連日、空虚な議論に無駄な時間を費やしています。
やれ備蓄米買入を急げの、最低価格基準がどうのこうの(知るか?勝手に基準作るんじゃねえ、と消費者は言っています)、離農がふえるの(どうぞご自由に論、優勢)、食料安全保障がどうの(どうせ石油が切れたらよう作らんのにどの口が言う?)・・・・・・・・聞いてもしょうが無いような、どれも問題解決には繋がらない机上の空論+言い訳+責任転嫁ばっか。
誰一人として、真の原因には言及しません。真の原因は、「供給過剰(作りすぎ)」+「需要低下(コメ離れ=小麦の勝ち)」ですよね。

それで、まあ、あんまりにも業界関係者の戯言が見苦しいので、少しはマシにホントに将来どんなコメ生産システムが望ましいのか、アタマひねって考えてみました。私なんかが考えたってしょうが無いんだけとね。実行係じゃないからね。

ま、思考実験みたいな感じで、こんな案はいかがでしょうか?ですよ。
「天下三分の計」ってのはどうでしょう?
言わずと知れた、中国、三国志で、かの天才軍師「諸葛亮孔明」が立案した天下統一策ですよね。
このまま行くと魏の曹操がメチャ強くて皆んなやられて天下を取られそうなので、蜀の劉備に仕えていた孔明は、魏呉蜀の三国を拮抗させる事で、一旦、安定状態に持ち込み魏の曹操の爆進を食い止め、そっからアレやコレややって蜀に有利な状況を重ねて行き天下を取ろうと考えた、みたいな策ですよ。三国志膨大だし、登場人物が多すぎて何がなんやらわからなくなるので、ちゃんと読んだ試しがなくて、何度挑戦しても、大抵、十数ページ読んだトコで脱落するんですけど、ま、多分、そんな話じゃないかと思うんですよ。
それを主食に当てはめると、「コメ、小麦、トウモロコシで市場を三分する」みたいな話になるんですが、ここではそうじゃなくて、コメ市場だけ三分する事で、他の主食穀物の攻勢にも耐え、資源不足や物資供給ルートの遮断などの外乱にも耐えれる、コメを主食中の主食、つまり、キング・オブ・キング主食にする計略です。

まず、その1/3は、現在も既に実現しています。だから、絵空事の空想物語を言っているのではありません。
その1/3とは「自給米」と「縁故米」です。これは流通経済の外側にある流通です。営利生産に含まれない生産です。
5反以下くらいの極小規模の水田で米作りをして、自分で食べたり、家族、親族、縁故者に配布したりしているコメです。
多分(そんな人を見つけ出してインタビューするような「努力」を今のメディアはできませんから報道にすら乗っていませんが)今回の米騒動でもその後の暴落でも、まったく無傷なのはこの自然発生的、原始的流通網ではないでしょうか?
自給農家は、コメの値段が上がろうが下がろうが関係ありません。縁故米を親元から送ってもらって食べてる都市生活者は、「米騒動?なんか高くて困ってるらしいね・・・」ぐらいの感じだったんじゃないですか?
この基幹流通システムに含まれない微細な流通網を強化温存することで、1/3は非常時を回避できます。ここでは詳しく論じませんが、そのカギは、労働負荷を低減する「小規模ラクラク生産方式」の開発にあります。それができれば、今後も皆んなで作って、皆んなで食ってりゃ良いだけです。
こう言う構造も大切に育てておけば、昨今の様に日本国民がイネの事、コメの事を知らないがために混乱した米騒動(だと私は思ってます。知っとったらあんなデマに踊らされるもんかいッ!!)、みたいな事は起こりにくくなりますし、自分達の国民性や発想傾向、文化の強み弱みも理解できるようになると思います。昨今の右傾化など見るにつけ、かつての敗戦の原因でもあった「自分が見えなくなった日本人の危うさ」を緩和、是正する為にも、より多くの国民が稲作に触れる事が重要ではないかと思います。

次の1/3は、世間で、メディアであたかも唯一の解決策ででもあるかのようにミスリードされている「大規模化」です。
勿論、大規模化すれば生産効率が上がり、つまり、生産原価が下がり、市場価格の低下に耐えられるようになります。
つまり、小麦などの他の主食選択肢に売り負けしない安価なコメを供給できると言う事です。それは間違いありませんが、この方法にも限界とリスクが存在します。
大規模化を進め過ぎると「規模の不経済」が起こって、逆に非効率となると言われています。
アメリカなどの超大規模生産でも、500haや1,000haを超えると、急激にコストが跳ね上がる変調点が訪れるそうです。
私は、日本だとソレはもっと低い地点、多分300haくらいから現れ始めるんじゃないかと思っています。
端折って言えば、でっかくなりすぎて仕事が雑になったり、ガバナンスが効かなくなったり、目が届かなくなったりして色んな所に病巣が生まれ始めるって事です。
その上、石油依存、農薬依存、化学肥料依存体質が昂じてきますから、それらが枯渇したり高騰したりすると採算性が直撃され、更に気候変動などが重なると、経営不振→倒産のリスクが高まり、大規模なヤツが倒産すれば当然社会への甚大な影響が発生しますし、効率を極限まで求めると、経営形態に多様性を維持する余裕が無くなりますから、商品やサービスだけでなく経営形態までコモディティ化が進み、同じ外乱で皆んな一斉に経営破綻へと向かってしまうと言う巨大地雷まで抱えてしまいかねません。
ですから、大規模化は有効な手段ですが、米作り全体をそこに任せてしまう事はできませんし、利点を活かしリスクを回避するためには、多様な生産様態の一つに留めるべきと考えます。

3つ目の1/3は、「現代の屯田兵」です。
巨大な大規模生産法人が経営不振に陥ると、その社会への影響の大きさから、政府は黙って見ている事ができなくなります。つまり、東日本大震災で原発がシビアアクシデントを起こし、倒産しても不思議はない東電が政府資金により支えられたように、潰すに潰せなくなります。
ですから、大規模化と言うのは、そう言うヘビーな状況に陥らずに、まあまあバランスとりながら運良く生きながらえる事ができる環境が長く続けば上手く行くんじゃないの?・・・と言う質の話と考えるべきでしょう。
そう言う環境でなくなった時、つまり大規模稲作法人が経営破綻を起こす局面では、公金注入以外に手はない。となると思います。つまり、公営化です。
そんならハナっから、明治時代に北海道開拓をしながら北方防衛も担った屯田兵の様な制度を復活させて、自衛隊が広大な国営農場を運営し、農閑期には軍事訓練を行えば、防衛人員を確保できるし、主食の安定供給にも資する事となりますし、その生産量を調整することで、市場のコメ価格を適正に維持する機能も付け加えることができるでしょう。
勿論、自衛隊全体をそうするワケじゃありませんよ。補完構造としてそう言う役割の予備役を作っておくと言う事です。
自衛隊や軍隊の役割は、社会の安定的な運営を担保する事にあります。戦争で戦う事ではありません。外からの脅威を排除、解消する事もその役割ですが、内側で国民生活の安定を支えるのも同じ役割の一つではないかと思います。

この3つの性質の異なる生産システムをうまく組み合わせる事で、極端な変動を生み出さず、外乱にも柔軟に対応できる主食生産供給体制が構築できるのではないか?って思ってるんですけど、どんなもんでしょうか?