今年の種籾販売は大変にご好評いただき、各品種とも絶好調でございました。
重ねて厚く、熱く、御礼申し上げます。

各品種ともまだ少し在庫に余裕がございますので、「チョット変わったイネも作ってみたいな」と言うお気持ちをお持ちでしたら、この機会に是非ご検討下さいませ。

種籾の販売というのは、例の悪法「種子法」がありましたので、なかなか一般に自由には行なえませんでした。
禁止されていた、と言うワケでも無いのですが「種子法」では国や地方自治体に種籾を生産して農家に配布する事が事実上義務付けられていましたので、なかなか一般タネ屋が手を出しづらい状況となっておりました。
世間では「種子法が日本のタネを守っていた」みたいなトンチンカンな事を言っている人も居ますが、単にオカミに首根っこ握られて管理されていたってダケの事です。
その証拠に、「種子法」が廃止された今でも、イネの栽培には大きな「縛り」が存在しています。

嘗ては「食糧管理法」ってのがあったんですよ。俗に言う「食管法」ね。
敗戦後の食料供給管理の為のモノだったわけですけど、まあ、コレで自由にお米を売り買いする事を禁じていたわけです。
作る側を「種子法」で縛り、売る側を「食管法」で縛り、その実働部隊みたいな感じで「農産物検査法」ってのがあって、収穫されたお米の検査、等級付をしてるワケです。
「種子法」「食管法」は廃止されましたが「農産物検査法」は健在です。
「農産物検査法」では「産地品種銘柄」ってのが指定されていて、各自治体ごとに「このコメを作れッ!」ってのが指定されてるんですよ。
んで「農産物検査法」では「米穀検査」ってのが実施されて、収穫したコメを検査に出して「お代官様」に産地とか品種の確認や等級付けをしていただく事になっています。
この検査を受けないと販売時に品種名を明記できませんし、等級も付きませんから安く叩かれます。
お米の値段は品種と等級で決まるので、等級を低く付けられると生産者は収入が減ります。
農政が農家をグリップしようと思えば、農政の都合の良い品種を奨励品種に指定して、奨励品種でないお米が検査に持ち込まれたら等級を落とせば良いんです。
農家はそれでは収入が減るので仕方なく「奨励品種」を作るって事です。

んで、先日もTwitterで「政府がタネを守らないと、外資の種苗会社に牛耳られるゥ」とか言って、聞きかじりでホラーストーリーを信じ込んじゃってるバカな人が居たけど、例えば茨城県の産地品種銘柄で「とねのめぐみ」ってのがあるんですけど、あれ外資種苗会社の悪名高き「モンサント」のイネ品種だって知ってます?
「どんとこい」に「コシヒカリ」を交配して育成された固定品種なので、「遺伝子組み換え」とか「ラウンドアップレディ」とかじゃありませんけどね。
つまり「種子法」とか「種苗法」とか「農産物検査法」ってのは、外資の侵略を防ぐための法律じゃない、ってコトです。
むしろ逆にね、今の森友問題とかコロナ利権とか見ると、政治家や官僚に権限持たせるとソレを利用して企業とかとつるんで儲ける利権ビジネスが生まれるって見りゃ分かるでしょ?
つまり農水省のお役人と外資企業が「そちも悪よのぅぅ」って仲良くなっちゃったら一緒なんですよ。
自由な生産と流通の仕組みが出来てないんですから、実際にお金を出してお米を買ってソレを食べる消費者の側に選択権が無いんです。
穀物メジャーと与党政治家と農水官僚がお手々繋いだら、「お前ら下々の国民はこの美味しい遺伝子組み換えたコメを食えッ!」って簡単にできちゃう仕組みなんですよ。

遺伝子組み換えではないし、穀物メジャーでもないけど、例えばF1品種の「ハイブリッドとうごう」とか「みつひかり」なども産地品種銘柄に指定している複数の自治体があります。
私はF1はイイと思ってるんだけど、F1目の敵みたいにしているホラーストーリー信者が「農産物検査法」はヤバいッ、って何故言わないんでしょうか?
むしろ逆に、そう言う省庁中心システムが日本の食を守ってると思ってるんだからオメデタイとしか言い様がありません。

逆に短稈で倒れにくいコシヒカリの「豊コシヒカリ」、硬質米で良食味の「イセヒカリ」、大粒良食味のコシヒカリ変異種「イノチノイチ」他にも色々ある「民間育成」の優良品種があまり産地品種銘柄に指定されず、農水省関係のイネ育種機関や農業試験場での品種育成に親品種としても用いられていないのはどう言うワケでしょう?
ソコラ辺も色々利権がらみ、省益がらみの不自由で不合理な問題があるんじゃないかと思いますよ。

そう言うゴチャゴチャのせいで、真面目な農家さんがホントに美味しいお米を一生懸命作って、ホントに良いモノを求める消費者さんに円滑に供給する仕組みになってないんじゃないかと思いますね。

その煽りを食らって、イネの種籾はなかなか販売されていません。やりにくいし儲からないからね。
最近少しずつ、民間で種籾を販売する業者も出てきてますけど、ロットがデカイんですよ。キロ単位だったりするからね。
種籾1kg買ったら4万粒くらいありますよ。尺角で一本植えしたら40aくらい植えれるからね。(ウチの全敷地使っても植えきれません)
ウチみたいにお試し栽培や交配親に使うってコトだったら、100gでも余ります。
稲作農家さんでもいきなり知らない品種を何反も作付けるワケには行かないから、始めはチョコっと田んぼの端に一列くらい作って様子を見るでしょ?
そう言う事がやりにくい実情になっています。コレも、栽培者や消費者が自由な発想と努力で成果を上げる、と言う考え方が日本の農業に無いからです。

ってワケで今年試験栽培する品種の種籾が大量に余ってしまいました。
ちょっと特殊な奴が多いので、一般の栽培者様には縁遠いかもしれませんが、他の種籾同様、小口で販売いたしますので、興味をお持ちで「チョット作ってみたい」って方はお試しいただければ幸いです。
品種と簡単なご説明です。


「北陸193号」(登録品種)
韓国と中国のインディカ米から育成された極多収品種です。
韓国と中国のハーフのインド人、ってコトではありません。
日本にはインディカ種って最近まで実用品種はなかったんですけど、韓国や中国では結構あるんですよ。特に中国南部は栽培イネ発祥地ですから、古来からインディカ種があります。
中国のコメには「秈」と「粳」あって、これどっちも日本では「うるち」って意味ですけど、中国ではインディカとジャポニカの意味で、それぞれに更に「ウルチ」と「モチ」があります。ヤヤコシヤ
その中国系インディカ米と、おそらくソコから伝わって独自に進化した韓国系のインディカ米を元に育成された日本生まれのインディカ系品種。国際的でイイでしょ、今に歌手や女優さんだってこうなると思いますよ、イイ事です。
今は飼料米とか他用途米として注目されていますが、かなりの多収性を持っていますので色々興味の付きない所です。
非常に倒伏に強く、栽培条件によっては1t/10a以上穫れると言うスゴイ奴です。

「あきだわら」(登録品種)
「コシヒカリ」と比べて30%程度多収の良食味多収品種です。
「アケノホシ」って言う超多収品種があるんですけど、それは例の超多収品種「タカナリ」と似た感じの韓国系インディカと日本品種からの育成で、沢山穫れるけど味はホドホドって奴、んじゃ美味しくしようッ!ってコトで、「アケノホシ」に「ヒノヒカリ」とかの美味しいヤツを交配して「ミレニシキ」ってのを作りました。
たくさん穫れてしかも美味しいってヤツね。だけどまだまだ帝王「コシヒカリ」には負けてる、ッてコトで、更に「ミレニシキ」にコシヒカリのひ孫の「イクヒカリ」( 直播適性が高い、良食味の多収品種)を掛け合わて食味向上を狙って育成されたのが「あきだわら」です。
短稈で耐倒伏性が高く、多肥栽培でも食味が落ちにくい良食味多収品種です。
直播栽培でも703kg/10a穫れた実績もあるようですから、直播特性も良いのかもしれません。
チョット新世代の美味しいお米って感じですね。
関係ないけどイネの品種名で「※※※※※」ってのヤメてもらいたいですね。
「コシヒカリ」以来、どれもコレも5拍子、「上の句」みたいになってます。
商品のネーミングとしてはサイテーですね。試しに
「アケノホシ」「あきだわら」「コシヒカリ」「ミレニシキ」「イクヒカリ」って並べてどれか印象に残りますゥ ?
「アケノホシ」「あきだわら」「タカナリ」「コシヒカリ」「ミレニシキ」「イクヒカリ」ってやるとダントツで「タカナリ」が響くでしょ?
全部リズムを一緒にしちゃ、どれがどれだか分かりませんよね。

「山田錦」(在来種)
言わずと知れた代表的「酒米」です。「酒造好適米の最高峰」とか「酒米の王」とか言われてます。
育成されたのは1923年(大正12年)の兵庫県立農事試験場ですから、かなり古い品種でもあります。
もう「在来種」扱いで良いと思います。
コレは有名だからあんまり説明は要らないでしょう。
酒米やってみたいッ、って方は是非この機会に、ただ1mは楽に超える背の高いイネですからね、すくすく育つと約130cmくらい行くそうですよ。倒伏には気を付けて下さい。

「雄町」(在来種)
コレは更にご先祖の「酒米」です。
江戸時代、慶応2年の育成です。岡山県です。
古くからの代表的な酒米、おそらくこの「雄町」の別名である「渡船」から派生した「短稈渡船」が上記の「山田錦」の親になっています。
そう言う重要な品種です。
例によって草丈はとても高い様ですけど、「短稈渡船」って品種があったくらいですから、系統によってはあまり高くないものもあるのかも知れません。
因みに「短稈渡船」はカリフォルニア米の「カルローズ」の親になっても居ます。
色んな意味で歴史に名を残している品種ですね。

「和みリゾット」(登録品種)
ほら始まった、とにかくアッチコッチに興味持ちすぎなんですよね。
sd1遺伝子で短稈品種だ、とか言ったと思ったら、インディカ系で超多収とか言い出すし、そうかと思えば長幹の酒米がぁ・・・
ホント、マトが絞れなくてとっちらかってますけど、とっちらかりついでに「リゾット」用品種です。
最近広まりはじめました。食の多様性とか言うヤツで。
コレはかの有名な(って私あまり知りませんでしたけど)イタリアの「カルナローリ」から育成された品種です。
「カルナローリ」はイタリアでリゾット用のお米として栽培されている品種です。
横文字大量行きますよ、覚悟して下さい。
「「カルナローリ」は1945年頃にパウッロのエットーレ・デ・ヴェッキの水田で「ヴィアローネ・ネロ」と「レンシーノ」の交配から育成された。」
ってコトで・・・・ワケわかりませんね。
ま、とにかくイタリアには「カルナローリ」と言うリゾットにすると美味しいお米があって、コイツは日本では先ず草丈が高過ぎて栽培しづらいので、日本のイネと交配してソコソコのヤツを作ったのが「和みリゾット」ってコトみたいです。
「カルナローリ」は極大粒のインディカ種で、「アルデンテ」に炊きあがると言うリゾットに最適な特性を持っている品種なんですが,長稈で脱粒性で穂発芽し易いと言う日本では嫌われる特性が三拍子揃ったみたいな致命的欠点があるので、短稈、難脱粒,難穂発芽性,多収,良質,良食味の「北陸 204 号」を母として「カルナローリ」を交配して選抜を繰り返し、極大粒でリゾット向きの特性を持った短稈日本向き品種が出来上がったとのコトです。
稈長は「カルナローリ」より明らかに短く、更に「ひとめぼれ」と比べてもやや短いくらいで、「ひとめぼれ」「カルナローリ」より倒伏に強いそうです。
栽培的にはかなり日本向きに改良されてるみたいですね。
味的には私も「リゾット」みたいなハイカラなものは食べ付けてないのでよく分かりませんけど、煮崩れしにくくベタつかない極大粒米ってコトで、これから日本的なリゾットの普及に役立っていく品種だと思います。
リゾットに限らず、インディカ系のお米については今後インディカ文化圏の食文化、調理法などが日本でも広まっていくでしょうから、今後の稲作には重要なパートの一つになるんじゃないかと思います。

「夢あおば」(登録品種)
コレも飼料用米です。
ってか、「今の状況で「飼料用」と言うカテゴリに入れられているお米」と言った方がイイんじゃないかと思うんですよね。
他にも「タカナリ」とか「アケノホシ」とか「ホシユタカ」とかも、何時の間にやら「飼料米」って一括にされつつある様な雰囲気なんですけど、ここら辺の品種ってのは、農水省の総合的開発研究プロジェクト「超多収作物の開発と栽培技術の確立」とか言うヤツで研究開発したモノなんですよ。
「超多収作物」ってコトだからね、「飼料作物」ってコトじゃないからね、だけど1981年から1995年までに50%収量の多い品種を作るって目標で行われたので、その頃は「米余り」だから超多収米作ってどうすんだ?ってご時世ですよ。
だけど、日本の稲作は生産性が低くてコスト高くて国際競争力が低いから、TPPとかRCEPで関税撤廃するとヤバいッ、ってコトで、多収性品種を育成しとかないとマズいんじゃないのって理屈で、行われたワケですよ。単純に10a当たりの収量が倍になりゃ生産費半分になるからね。
でも、「コメ余り」だから食用米品種作るってのも時代に合わないみたいな感じで、んじゃ他用途米ってコトで原料用米や飼料用米として育成された・・・と言うコトになってるんじゃないかと思います。
で、雑な言い方すると、その「超多収」をどうやって実現するか?ってなるんだけど、中国や米国では、そっち行く場合は先ず「F1化」なんですよね、ところがコレがどこでどうトチ狂ったのか、日本ではその道のおエライサン達が「F1化はまかりならぬッ!!」って言ったとか言わないとかで、せっかく琉球大学の新城 長有教授が世界に先駆けてF1イネ育成技術を開発したのに、それを顧みずに純系選抜オンリーに舵を切ってしまったワケです。
中国はその新城教授の研究成果を土台にしてF1技術を高め、今では日本より平均反収を高め、一歩先へ行ってる感じです。
んで、F1じゃなかったらどうするんだ?となると、やっぱ今までと違う遺伝子を導入しないと多収化なんか出来ないから、結局、インディカ系とジャポニカ系を掛け合わせるって手法に行くわけです。
だから超多収米は皆んな日印交配なんですよね。
そうすると、コメってのは元々全部人間の食用ですよね。
特に日本のお米はもう「コシヒカリ」以来、美味しくないと商品にならないって状況でしたから、超多収米を飼料用として育成しても必ずしも「クソマズいコメ」になるとは限らないワケです。
もしかしたら結構美味いのもあんじゃねえの?
って思って、飼料用だろうと、インディカだろうと、とにかく作って食ってみよう、と思っています。
また、今の日本のコメは、全部が全部「亀の尾」「愛国」「神力」「朝日」の子孫ってコトで、「コシヒカリ教」の幹部みたいのばっかりなんですよ。
血が濃くなってるワケです。
気候変動だ生態系破壊だ言ってますから、ソッチもチョット怖いんですよね。
だからF1育成とかインディカ交配とかで、遺伝的多様性を高めるのはイイと思いますよ。
それと、「緑の革命」でフィリピンで「IR8」と言う半矮性短稈品種が育成されて以来各国で短稈品種が育成され、倒れないから多肥栽培できるってんで増収した訳ですけど、ソレもそろそろ限界に近づいてる様です。
多分、もうそろそろ「低いイネがイイ」と言う考え自体が、もう一回見直されるんじゃないかなぁ~、と思います。
で、長くなりましたが「夢あおば」です。
コレは倒れにくくて、直播適性があって、大粒のお米です。一応、今、上記の様な状況から飼料用米ってコトになってますが、色々興味深く、かつ重要な特性を持ってるんじゃないか?って思って今年試験栽培しようと入手しました。
稈長90cm弱ですから、結構大きなイネです。玄米千粒重平均25.6gの大粒米です。反収は700kg前後。
耐病性があり「いもち病」には最強クラスです。

と、以上6品種の種籾を販売いたします。
すべて当園採種ではないので、採種状況は不明ですが、正規に種籾として販売され、検査等も合格した品ですので、品種は間違いありません。
「登録品種」は自家増殖してはいけません。お試し栽培 + 自家消費だけにして下さい。
「在来種」は自家採種して来年からの種籾にしていただいて結構です。

2、3日ウチに、販売サイトに出しますのでよろしくお願いいたします。
未だウチでも栽培していない品種ですので、いつもの品種イラストはありません。

この↑種籾の絵で販売します。
よろしくご検討お願いいたします。
販売サイトはコチラ↓