今年も、パンの自給の為に、小麦作ってます。
でも、今年は今までの様な少肥粗放栽培ではありません。
いゃ、今までも小麦の無肥料や少肥栽培には疑問を感じていたんです。
ど~も、小麦を少肥で作ったり、痩せ地で作ったりするとチョーシ悪い気がします。
測ったわけじゃありませんが、病害も増えるような・・・あ、コレはチョット怪しい話ですけどね。
少肥だと病害が増えると言うちゃんとしたデータは見た事ありません。私の気分だけの話です。
が、ど~も、草勢がガタッと落ちて貧弱になり抵抗性が落ちるような気がします。
私の先入観なんでしょうが、ど~も小麦は勢い落とすとロクな事がない様な気がするんですよ。
イネだと逆ですよね、肥料が過ぎると過繁茂→病虫害→倒伏のお決まりコースですね。
まぁ、何かに付けて、ムギはイネの逆って考えてしまうクセもあるんですけどね。
暑さへ向いて育つイネ、寒さに向けて育つムギ、外へ外へと分げつが出るイネ、中から中から分けつが出るムギ、窒素が多いとマズくなるイネ、窒素が足りないと美味くないムギ・・・
まるで正反対の性格の兄弟みたいです。
だからってワケじゃありませんが、今年は多肥集約栽培です。

1つは痩せ地の肥沃化の為
もう1つは効率化の為

↑去年積み込んだ例の「カブトムシ堆肥」です。
本来なら窒素源を入れずに自然分解とカブトムシだけに任せてゆっくり堆肥化すればイイんですが、ウチの痩せ地圃場ではゆっくりしていられないので、分解を早くするために窒素源として鶏糞を入れています。
結果的にそれが肥料としても効く訳ですが、今回はそれよりも微生物の餌です。
窒素が無いと落ち葉などを分解する微生物が増えないので分解に時間がかかります。
短期で完熟堆肥にする為には、窒素源を入れて微生物が菌体を作る栄養を与えます。
増えた微生物は落ち葉などを分解して更に増えて行きます。
窒素源は有機肥料や魚粉、生ゴミなど窒素を多く含むものなら何でも良くて、勿論、硫安や高度化成などの化学肥料を窒素源にする事も可能です。昔は主に人糞尿が使われました。
ついでに時々混ぜ返し(切り返し)たりして空気を混ぜ込むと更に急速に発酵が進みます。
つまり、有機農法での堆肥の作り方です。短期に高温発酵させます。
去年積み込んだ堆肥では、チョット遠慮して少なめに鶏糞を入れました。
軽トラ1杯に半袋7.5kgくらいです。今年は一袋15kg入れて積み込んでいます。
不耕起で30 x 20cmで播いた小麦の麦踏みの時にこの堆肥を撒いています。

量は地面が隠れるくらいです。年内4回の予定でしたが、既に4回目が終わってもう一回行けそうです。

ムギが小さいウチは埋まらない様に少し少なめにして、撒いた直後に麦踏みしながら条間、株間を三角鍬で中耕しましす。

ホントは播種前に堆肥をドサッと入れといてトラクタで鋤込めばイイんですが、不耕起栽培にしてからトラクタも耕運機も管理機も皆んな手放したので耕す機械が無いんです。
ホームセンターに安い100Vの電動カルチベータが有ったので、近々、手に入れようかと思っています。それも、まあ、鍬代わり程度の小さな機械です。
コスト低減の為にはできるだけ安い小さな機械で済ませる工夫が重要だと思います。
それで今回はまるっきりの不耕起で、先にタネ播いて、後から堆肥の散布と中耕をする事にしました。

二条を左右の足で踏みながら条間株間を浅く耕します。
目的は
①有機肥料の分解促進
②除草、抑草
③ムギの上根切断による生育抑制→根群の発達促進
まあ、ブレーキとアクセルをいっぺんに踏む様な事ですが、ムギと言うのはどう言うワケかイジメた方が良くできます。

踏んだ直後はこんなペッチャンコになっていますが、2日で起き上がります。

↑コレは11/21の状態です。播種は10/20頃です。
12/14には↓こんなに茂ってきました。

大きくなってくると堆肥を入れ易くなりました。
どうもムギは埋まる事には強くないようです。
中耕や除草は良いのですが、その時に土がかかって埋もれてしまうと生育が止まります。
上から積もってくるモノを撥ね除けて伸びる力はない様です。
乾燥気味の草原の植物ですからね、上から踏み付けられる事には強いけど、上から降り積もるモノには適応力が無いのでしょう。
まぁ今年の様な暖冬好天だと、幾分葉っぱが埋もれるくらいの方が生育抑制になって良いかも知れません。
あまり年内に育ち過ぎると暖冬の年では年末に不時出穂する場合もあります。
年内は非常に良く育つ条件で肥料も初期からしっかり効かせておいて、麦踏みで抑える、すると分げつが増え、根張りが強くなってゴツい株になり、大きな穂が出ると言う理屈です。

ココまでに4回麦踏み、堆肥散布、中耕を行っていますが、もう一つ勢いが足りない気がします。

私としてはもう少し野性的にゴツゴツガッシリ育ってほしいんですが、ずーっと天気が良く、ちょいちょいチョード良い感じで雨も降り、霧や霜でも水分が供給され、ちょっと甘やかし気味のかんじで、まあ、品種の特性もあるんですが、やんわりした感じになってます。

この調子で暖かいと過繁茂になる気がするので、もっとガンガン踏もうと思います。

コレが最後の堆肥散布です。
2月末までにあと数回麦踏みと中耕をして、3月上旬に茎が立って来たら土入れ土寄せをしようと思います。

つまり、今年はものすごく肥料と腐植と労力を多投しているワケです。

で、1つ目の目標の痩せ地の肥沃化ですが、そりゃ肥料分を加えた堆肥を沢山入れれば土は肥えますよね、当然。
でも、それだけではないんです。
井原豊氏の「痛快ムギつくり」P14に以下の記述があります。
「反収七~十五俵の間では、ムギわらの量は子実量からみて加速度的にふえる。すなわち、七俵ならわら500キロ、10俵なら二倍の一トン。十五俵ならさらに二倍の二トンになる。
子実収量が五割増ならばわらは二倍、という公式のようなものがある。」
藁の量が倍になれば、大量の有機物を畑に戻せると言う事です。
堆肥を沢山入れ、藁も沢山残せれば、一気に土壌の有機物が増えます。
自然農では刈り草を敷いてマルチにします。なら、麦藁を大量に作って敷き詰めれば良いのでは?
アメリカなどの大規模不耕起栽培でも、ライ麦など大量の茎葉が取れる緑肥作物を育てて刈り倒して地表を覆います。

自然農法などでは、自然に任せて有機物を増やし生物相を豊かにして、ソコから生み出される養分で作物も元気に生育させよう、と言う流れです。
それは理に適ったやり方なのですが、一部分、私は以前から若干の疑問も感じています。
その様な自然農法は何処で行われているでしょうか?
それは「農地」です。ほぼ例外なく「農地」で行われています。
「農地」と言うのは通常、長年に渡って堆肥、厩肥、粗大有機物、作物残渣などを投入して肥沃化してきた土地です、けして自然のままの土地ではないのです。
単に自然農法提唱者が自分ではやっていないだけで、先祖代々が有機物や腐植をグングン増やした土地なのです。
戦前までは刈草、樹木の若枝(刈り敷、カッチキ)、家畜糞尿、人糞尿、生ゴミなども、ずーっと投入されてきましたし、風呂の湯さえ替えずに何度も使い、垢だらけになるまで溜めておいて農地に入れた様です。
スタート地点がそんな「農地」で、山野の自然とはかけ離れた環境なのに、「肥料はダメ」とか意味ある?「持ち込まない」とかナンセンスでは?と思うワケです。
それなら先ずは腐植+有機質肥料つまり堆肥をしっかり入れて、イネ、ムギなどを収穫後に粗大有機物(つまり藁)が大量に残る様に栽培して圃場に残した方が、短期間で生物相の豊かな環境を作れるのでは?ってコトで、一般の自然農法とは逆張りして多肥集約栽培でムギを大きく育てて大量の藁を穫れないかな?と思っています。
勿論、最初っから肥えた農地なら、そんな事する必要はないんで、真っ直ぐ無肥料から始めても良いのですが、圃場から自然供給される養分以上に作物が収奪してしまうと、土地が痩せる方向に回ってしまいますから、収支がマイナスにならないように工夫する必要はあると思います。
自然な方向からのアプローチが可能なら、それに越した事はないのですが、それが容易でない場合は、どうせスタート地点は人為環境なのですから、やり易くて確実な方法を採るのも1つの手ではないかと思います。
西廻りでも東廻りでも、要は同じ所に着けばイイわけですから、近い方で行く方法も模索してみる価値はあるのではないでしょうか?


もう1つの逆回転、「効率化」については次回!