日本ではあまり出回ってないのでイマイチ知られていないのですが、ファスティガータ・ピンストライプ(Fastigata pinstripe)と言うエクアドル在来種のピーナッツです。

豆の表面(渋皮)に白と赤紫の縦縞が入ります。

めちゃ派手です。

こんな見えない所に何でこんな派手なカラーリングを持つ様になったのか、何か生態的な意味があるのでしょうか?
多分野生状態では地中に豆ができて、そのまま次の年に発芽するまでに殻が腐ってしまうんだろうと思います。
土の中に残った豆が翌年発芽してくる訳ですから、豆は一回も、誰の目にも触れないはずです。
何の為にこんな模様があるのでしょう?謎です。

草姿は蔓性です。よく伸びます。

茎が蔓状に伸びながら地面を這い、節々から花を咲かせ受粉した花は花茎が伸びて土に潜ります。

匍匐性ですからよく広がり立ち性のものより場所を食いますが、その分、豆は沢山付きます。
晩生なので遅目に掘ったのですが、それでも未だ未熟な鞘がありましたので、栽培は温暖な地域が良さそうです。

鞘はゴツゴツした不整形な鞘で、割と大きめですが、日本のピーナッツの様なプクッと膨らんだ感じではないので、中の豆が小さいんじゃないかと心配したのですが・・・

ずんぐりしたチョットいびつな形の豆がしっかり詰まっていました。
まあ、あまり大粒ではありません。
さっそく「チビタ監督」のチェックが入りました。

4粒鞘も結構あります。
そ~っと開くと入っていた形のままで中を見れます。
縞模様が豆と豆の間でも繋がっています。豆が形成される時の何かの痕跡なのでしょうか?

ちょっとヤバい問題も見つかりました。
無地の豆です。
縞模様が売りの品種で無地が出ては致命的です。

この件については、種豆を入手した時に半分くらい無地のモノが入っていたので、「もしや?」と思い、縞豆と無地豆を別々に播いてテストしてみました。
左は無地の種豆から穫れたモノです。右は縞模様の種豆を育てたモノです。

無地豆から育てたものは半分近く白い無地の豆が穫れました。

縞豆から育てたものは、ほんの少し無地豆が穫れました。
無地豆の半分くらいは白、残りは濃い赤紫の無地豆です。

一応、数字もとってみました。
         縞        白      黒
縞種子    84.2%             5.3%           6.9%
無地種子     55.2%            42.3%           2.1%
と言う事で、圧倒的に縞の種豆を播いたものが縞ピーナッツが穫れると言う結果になりました。
無地のモノに白と黒があるのは、色素の無いモノと極端に濃いモノに別れたと言う事だろうと思います。
まぁ、遺伝性を言うには、今回は一回だけの栽培ですのでハッキリとした結論は難しいとは思うのですが、栽培的にはとにかく「ファスティガータ・ビンストライブは縞の種豆を播けッ!!」で間違いないと思います。
と言う事で、ピーナッツ、イネの種籾、夏野菜など来月くらいから種子販売開始しようと思いますが、この品種はしっかりと縞の入った種豆を厳選してお送りしたいと思っています。

一つ、失敗しました。
しっかり乾燥しようと殻から出した豆を更に天日乾燥させたので、「焼け」てしまいました。
お送りする種豆は左の様に日焼けして茶色くなっています。まさかこんなに日焼けするとは思いませんでした。
元々は右の様にしっかりハッキリ縞の入った特徴のよく出た豆です。
栽培には問題ございません。

日の当たらなかった裏側は焼けてないので、混ぜると全体ではこんな感じの種豆です。

縞/無地の問題もそうですが、どうもこの系統には結構遺伝的なバリエィションが多いみたいです。
と言うか、在来種なので元々ばらつきがあるんでしょうね。

ネットで調べると、米国ではウチで日に焼けた豆みたいに、元から茶色地に暗い赤紫の縞のヤツもあるみたいで、それらはJungle PeanutsとかWild Jungle Peanutsと呼ばれたりしています。
多くののサイトで販売されているものを見比べたのですが、どうやら白地に赤紫の縞のモノを「ファスティガータ・ピンストライプ」と呼び、褐色地に暗い縞のモノを「ジャングル・ピーナッツ」と呼んでいる様です。
「ファスティガータ・ピンストライプ」の解説には、植物収集家のジョー・シムコックス(Joe Simcox)がエクアドルから持ち帰ったと書かれています。
一方、「ジャングル・ピーナッツ」の方は、あまり信頼性の高い情報はないように思えました。
原産地もアマゾンと書いてあったりエクアドルと書いてあったりマチマチです。
まあ、エクアドルの東南部はアマゾンですけどね。

これらの情報をまとめると、エクアドルの東のアマゾンの北端辺りの熱帯雨林地域に縞模様を持つピーナッツの在来種が有って、ソコから持ち出された少しずつ異なるタイプが流通していると言う感じです。

 

ピーナッツ全体で言うと、ボリビア南部で野生種が見つかるそうですから、原産地はその辺りなんでしょう。
ボリビア南部の気候は、例えばサンタ・クルスと言う所で、夏の10月から3月(南半球なので季節が逆です)で30℃くらい、雨量は100~130mm程度ですから、まあ、東京の夏と同じくらいですね。
暑くてソコソコ雨が降る気候って事なので、「アマゾンのジャングル・ピーナッツ」って事も無くはないか・・・って感じですが、植物の形態から考えると、あんな匍匐性の蔓植物に近い形でジャングルだと、日が当たらなくて生育できそうにありませんね。
熱帯に限らず、日本の様な温帯でも樹林内での蔓植物は木に絡まって登り上に出て生育するタイプで、地面を這うタイプではありません。
同じ中南米原産ならカボチャの様な巻ヒゲで枝に絡まって登って行くタイプですね。
ピーナッツの様な地面を這うタイプはジャングルの樹林下は無理でしょうから、少し乾燥気味の他の樹木の少ない傾斜地や河川敷みたいなトコに自生していたんじゃないでしょうか?


多分、この「ジャングル・ピーナッツ」と言う呼称は、「食の安全、安心」関連なんじゃないでしょうか?
どうも米国でも穀物のマイコトキシン汚染が問題になっている様です。いわゆる「カビ毒」ですね。小麦の「赤カビ病」とかで出るヤツです。
それがピーナッツにもあると言う事で、Jungle だの Wild だの自然を強調する呼び方すると安心安全に繋がってる気がするんでしょうね。
小麦でも分かる様にカビ毒に関しては無農薬の方がカビの発生が多くなるので返って危ないんですけどね。
残留農薬よりカビ毒の方が毒性高いですからね。
ま、多分、そんな感情的自然志向で、もてはやされるんじゃないかと思います。


また、この系統のピーナッツは中国でも人気があるみたいです。

↓この画像は中国で栽培されている「七彩花生」と呼ばれるピーナッツですが、殻の形や豆の形、草姿などは「ファスティガータ・ピンストライプ」そっくりな品種ですが、豆の模様は縞ではなく斑点です。うずら模様と言いますか、虎柄とヒョウ柄の違いみたいな感じです。


コレもとても魅力的な品種なので、出来たら入手して育ててみたいものです。

色々書いて長くなりましたが、まとめると↓
①「ファスティガータ・ピンストライプ」は縞の種豆がイイよ。
②日本の夏の気候はピッタリ。
③無地豆が発生したり、「ジャングル・ピーナッツ」「七彩花生」などのバリエぃションがあるので、栽培中に変異が出る可能性もありそう。
ッてコトです。お楽しみに!!