イネが続々出穂し始めました。
私はだいたい晩生好みなので、イネも極早生、早生の品種は殆どやってません。
ま、野菜があるから春先あまり早くからイネに取りかかれないしね。
殆どの品種は「コシヒカリ」より出穂の遅いものばかりです。
今年一番早く出穂が揃ったのはコレ↓「」です。
「コシヒカリ」と同時か少~し早いかな?ぐらい。
それもそのはず、「コシヒカリ」から分家した品種ですから。
「」は「コシヒカリ」の田んぼで変異株を見つけて、それから選抜育成された民間品種です。
2008/03/06に品種登録されています。が、2011/03/08に育成者権が消失しています。
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コレは「巨大胚芽米」と言うカテゴリーに入る品種なのですが、その話は後回しにして、先ずは品種の特性です。
以前「イノチノイチ」は「コシヒカリ」の変異と言われるけど、全く似ていないと書きましたが、この「」は逆で、随所に「コシヒカリ」の血統が色濃く現れています。
稈長はやや長めで、太さはやや細目、なので当然耐倒伏性は弱く「コシヒカリ」に似ています。
作りによっては「コシヒカリ」より倒れ易いかも知れません。
穂軸はやや長くよく抽出し、芒はありません。
種籾千粒重は小さめのやや小粒のお米です。
出穂/成熟期は早生、ほぼ「コシヒカリ」と同じ。
いもち病圃場抵抗性は「コシヒカリ」同様「弱」ですが、この点は今回少し気になるコトがありました。
たまたま朝の日当たりが良く土壌が痩せ気味の所に植えたせいか、他の品種よりイモチ病の病斑は少なかったのです。
まあ、画像でご覧いただければお分かりの様に、相当な痩せ作りですから、少なくて当然なんです、色薄いでしょ?、この品種自体が元々葉色は薄い方なんですけどね。
ただ品種特性に「葉身表面の毛茸は無又は極少」と言う記述もありました。
「毛茸」って言うのは葉の表面の細かいウブ毛の事です。
アレは水を弾く為にあるんですから、先日の「カメノオ」の時にも書きましたけど、アレのお陰でイネは葉っぱに石灰などが付きにくいワケです。
って事は、「毛茸」が少なければ薬液が付き易い筈ですね。
確証はありませんけど、今回、色んな品種で酷い「葉いもち」が出ているんですが、比較的軽く済んでるのはそこら辺が関係しているのかな?と想像しています。想像だけですけどね。
全体的には、少し華奢で小柄な「コシヒカリ」って感じです。
華奢なんだけど、背は低くありませんからね、栽培される方はくれぐれも倒伏にはご用心。
ただ茎の弾力と言うか粘りはそう悪くありませんから、無理な肥培をしなければフツーに栽培出来るイネだと思います。
この画像だと葉っぱはあまり細く見えませんね。
茎が細いのはお分かりいただけると思います。
葉っぱも平均的なイネより少し細めな感じです。

全体に女性的な優しい感じのするイネですが、この品種の特徴は勿論「巨大胚芽米」と言うトコです。
その名の通り、玄米の先っちょに付いてる胚芽が普通の3倍くらいあるコメです。
芽になる部分ですね。
逆にいつも我々が白米で食べてるのは「胚乳」の方です。芽の栄養を溜めてる部分ですね。
んで、胚芽がデッカイと何がありがたいのか?って話なんですけど・・・・・
ま・・・栄養が・・・うん、何か・・・・・ま、イイらしいですよ。
なんで、私はあまり実感した事ありません。元々玄米とかあんまり好きな方じゃないしね。
ま、成分分析の結果では、ミネラルとかビタミンとか多いみたいです。多いもの(マグネシウム、ビタミンB1、B6)は白米の倍くらい含んでますね。
ソレ以外は1から3割増しくらいな感じでしょうか?
そう飛び抜けた感じではありませんけど、ま、少ないより多い方がイイか?ってくらい。
マグネシウムとビタミンB1は摂り過ぎても排泄されるから大丈夫みたいですが、B6は過剰障害が出るみたいなので摂れば良いって訳ではないですけどね。
玄米食がお好きな方や、特定栄養の不足気味な方には良いと思います。
味は甘みがあって美味しいです。
で、こっからは好みなんですけど、まるまるの玄米で食べるとかなりプチプチします。大麦ほどではありませんが、歯ごたえは強めです。
しかも、麦類の様に種皮がツルツルしていませんから、一瞬、籾殻の薄いのが残ってるのか?と思うようなちょっとガサガサした食感です。
ネットなどで見ると「胚芽のプチプチ感がイイ!」みたいな記述がありますが、多分アレは胚芽じゃなくて米粒表面の糠層の食感だろうと思います。
「コシヒカリ」って他のお米と糠層の性質が凄く違います。
薄いのに非常に硬いのです。すり鉢などで手精米して見ると分かります。
「コシヒカリ」と「カメノオ」は糠層が堅くて、なっかなか白米になりません。
そんな「コシヒカリ」の特性を受け継いでいるんだろうと思います。
胚芽が大きいので精米機で加減して糠層は削って胚芽だけ残す様な精米が可能かどうか、未だ試してないので今年の収穫後にちょっと工夫して見ようと思います。
上手く出来たらかなり美味しいお米になると思います。
因みに、巨大胚芽米にはこの「」以外にも「金のいぶき」とか「はいごころ」とか「つづみ星」とか「はいいぶき」とか色々出来ている様ですが、親に巨大胚芽米系統を持っているのは「金のいぶき」くらいで、後はそれぞれ血縁関係は無い様です。
見るからに遺伝強そうですけどね。どうなんでしょう?
何かと交配して確かめたい感じもしますね。
「」は良くも悪くも「コシヒカリ」の血筋を濃く受け継いだ巨大胚芽米です。
「コシヒカリ」直系の味の良さは確実に持っていると思います。
「コシヒカリ」直系の作りにくさ(コケる、イモチ出る)も受け継いでいると思います。
「コシヒカリ」直系の堅い糠層があるので、巨大胚芽の美味しさを味わうには精米に工夫が必要です。
政治家さんなんか見ても分かりますけど、名家の生まれには色々苦労もあるワケです。


