「カメノオ」の穂が出始めました。
去年は7月に入ってから田植えしたので、出穂は9月初めでした。
今年は6/25に田植えしたので、正常に出穂し始めました。
それでも一般よりは充分遅いですけどね。

タダねェ、今年はまた「イモチ・パンデミック」なんですよ。
南側の樹木を低く伐ったので、今年は出ないだろうと思いましたが、まさかの超冷夏。
加えて土壌肥料分多すぎで無肥料なのに窒素過多。
そりゃイモチも出ます。
んで、なんとか止めようと、こんな「バカ殿状態」になってしまいました。
「冷夏」「窒素過多」「バカ殿」の順でご説明します。
まず「冷夏」ですが、前半あまり世間では言いませんでしたよね。
むしろ五輪の時なんか酷暑でしたからね。
でも、多分、太平洋高気圧が弱いか発達が遅れてたんでしょう。
ウチの様に局地的に夏が涼しい地形だと、夜温が20℃くらいまで下がって、夜なんかエアコン無しで窓閉めて寝てますからね。
避暑地みたいなもんだからソレで良いんだけど、イモチ病はコレくらいの気温で激発します。
更にダムが近いので夜霧が出ます。葉が濡れるとその水滴をたどってイモチ病菌が侵入します。
そして「窒素過多」だとこれまたイモチ病激発なんですが、そんな分かり切った事が避けられない状況なんです。
ココの土は、粘土気の少ない真砂土で、腐植が足りません。だから基本痩せています。
それでは水田に適さないし、一般の水田に近い土にしないと栽培試験が出来ないので、ここ数年、少しずつ土壌を改良しています。
まず、土の3、4割を占める荒い砂と礫(砂利)を取り除いています。(やり方は「田んぼの作り方」として後日レポートします)
ところが今の表土20cmくらいは、ココに来た年に、痩せ地対策として腐植質の多そうな色の黒い部分を集めて敷き直したモノなんです。
前所有者は椎茸屋さんだったので、廃菌床とかを入れていた様です。
で、砂と砂利を抜くと、分解しかけの腐植質が濃縮されるので、今度は逆に肥料分が過多になってしまいます。
ホントは赤土粘土でも大量に投入して薄めると良いのですが、手に入る目処が立たなかったので、仕方なくそのまま作付けました。
まぁー肥料が効いてるのでガンガン大きくなります。葉色は真っ黒です。分げつも30は軽く超えていたでしょう。
その上、自分でも何でか分からないのですが、いつもは30x30cmくらいで植えるのに、今年はなんとなく15x30cmと倍の密度で植えていました。
多分、去年交配親にする穂を揃えるのに苦労したので、無意識に穂数を多くしたかったんだと思います。
7月末にはもう地面がまったく見えない茂り加減です。そりゃイモチも出ます。
んで、もう、こりゃ全滅コースだな(過去2、3回ありました)しょうがないからイモチ用の農薬使おうか?とか思っていたいんですけど。
ど~も嫌いなんですよね、農薬。
ワンシーズンくらい稲だけにかかる様にピンポイントで使えば、圃場全体の生物相なんかにはそんなに大きな影響はないだろうと思うんですけどね。
実際、農研機構とかでの研究結果でも今の農薬はそんなに悪影響は出てない様です。
そりゃ濃度の高いモノを毎年毎年使い続ければアカン事になるでしょうけどね。
でも、やっぱりやなので、まだまた「石灰」の出番です。
去年までは「草木灰」を使いましたが、もう間に合わないので「消石灰」です。
コレがまあ、効くには効くんだけど、問題点が見つかりました。
こんなに毎日毎日雨が降ると、意外と簡単に流亡するんですよ。
稲の葉っぱを真っ白に「バカ殿」状態にしてやろう、と思ってもなかなかならないんです。
それは雨のせいばかりではありませんでした。
元々、葉っぱに付いていないんです。スプレーしても付かないんですよ。
どうも石灰の方に問題があるんじゃなくて、稲の葉の方に問題がありそうです。
稲の葉ってサトイモやハスと同じ表面構造を持っているそうです。超撥水構造って言うんですけどね。
ハスの葉の様に水滴を弾くんです。だから石灰水に限らず薬液が付きにくい。
弱りましたよ。
アタマ捻って、薬液に台所の中性洗剤を数滴たらして(コレやると表面張力を壊すので葉面に広がり易くなり、弾かれにくくなります)、勿論、展着剤も多めに入れて(コレは成分が葉面にへばり付く様にします)。
噴霧する時は出来る限り圧を高くして細かい霧にして、普通は葉からポタポタ垂れるくらい掛けるんだけど、逆に細かな霧滴をサッとふりかるダケにして、液滴が大きくなって葉面を滑り落ちる前に乾燥させるようにしました。
これでようやく「バカ殿」状態実現。苦労してます。
で、「カメノオ」ですが、3年前に入手した種籾から増やして、一昨年、3タイプに分かれました。
フツーのヤツと「短稈」と「矮性」。
「短稈」も「矮性」も最初は沢山の株の中に一株だけ、ちょっと雰囲気違うかな?ってくらいでした。
念の為、種籾を採って、去年、普通株と並べて栽培してみたら、今流行りの?「変異株」でした。
ちょっと分かりにくいですが↓真ん中が普通株、左が「短稈変異株」右が「矮性変異株」です。
今の所、背の高さしか確認していないので、他の特性はハッキリしていません。
「短稈」は草丈が10cm程度低いです。「矮性」はもう少し低くて、稈の太さや葉の大きさも全体に小さい感じです。
左が普通株、右が「矮性変異株」です。全体に小さくて華奢な感じでしょ。
左が「短稈変異株」で右が「普通株」です。
コッチは葉の大きさ等は普通株と同じか、むしろ幅広で、背丈だけが低くなっています。
ずんぐりむっくりでゴツい感じです。
これから系統固定の為の選抜を数世代重ねて、その間に他の特性もハッキリさせたいと思います。
変異の起こった系統は、更に変異が進んだり、他の変異が加わったりする事も普通株より良く起こりますので、しばらく注視します。
今年経験的に実感したのは、短稈化すると分げつが早くなり穂数型になり易いと言う事(出穂もやや早まる?)と、それと相まってイモチ病に感染し易くなる、と言う事です。
茎が短くなるのは節と節の間が短くなる、と言う事ですので、短稈化すると親茎の完成が早まり、その分、分げつに力が行くのかも知れません。
分げつが多くなると葉が茂って通風が悪くなり、葉上の水滴も乾きにくくなりますので、イモチには不利だと感じました。
それに低いと茎葉が風で揺れにくいので、その点でも水滴がたまり易くなります。
前述の通り稲の葉は超撥水なので、水滴は落ち易いのですが、それでも気候が悪いと夜間や早朝に露が付きます。
ソコがイモチ病菌の進入路となります。
侵入完了には8時間くらいかかるそうですが、2時間程度で発芽した菌糸が表皮に食い付き落ちなくなるので、2時間葉が濡れてたら感染の可能性が高まります。
草丈の高い稲は、揺れ易く、揺れた時に葉上の水滴にかかる加速度も大きくなるので、もしかしたらイモチ病に適応した進化なのかも知れませんね。
古い在来種の稲は、「コシヒカリ」とか「あきたこまち」みたいな研究所で育成された「品種」ではありません。
むしろ「品種」と言うには不十分な遺伝的雑駁性を持っています。
昔は「品種」の概念なんかありませんでしたから、便宜上の区別の為に呼び名を付けてただけですし、採種の知識も普及してませんでしたから、純血が守られていないんです。
農作物としては遺伝的に不安定なワケですが、育成上はソコが逆に魅力で、微妙に異なるタイプが色々出ますから、好みのモノを選抜する楽しみがあります。
短稈種を「コガメ」、矮性種を「ゼニガメ」とでも名付けて固定育成してみたいと思っています。




