ツイッターに「自然農法は環境調節です。直接、手を出さずに畑に生える草の種類を変えてみて!直接、手を出しちゃダメだよ。」みたいなコトを書いたら、全く、何の反応もありませんでした。(泣)

ザッと書き過ぎてるから、意味わかりませんね。
詳しく書くとね、まぁ、人間の生まれ付きの性質って言うか、何かやろうとすると、その目的に繋がりそうなモノを「投入」したがるワケですよ。
つまり、足し算側に偏ってしまう傾向が強いんですよね。
何かを足したり、新たに持って来たり、健康食品みたいにね、アレ飲んだら(足し算)イイんじゃないか?って方向に行きがちで、ホントは生活習慣がヤバいんだから、アノ癖をやめたらいい(引き算)の方が多いんだけど、ツイ、足し算したくなるんですよ。

で、圃場の生態系を豊かにするとか言うと、緑肥のタネ播いたり、ミミズ連れて来たり、微生物資材を入れたり、害虫が出るとカマキリの卵集めて来たり、アシナガバチの巣を取ってきたり、そうやって今足りないと思われるモノを足す事で解決しようとしがちなワケです。

ソレも悪いワケじゃありませんよ。今居ない生物で圃場環境構築に役立つモノは連れてくるしか無いからね。
ただ、自然の働きを上手く栽培に適した環境構築に活かそうと思ったら、もうちょっと別の視点も必要になって来る、と言いたいワケです。

ハイ、雑草見てください。冬雑草です。
そろそろ暖かくなってきましたから、冬雑草が爆発的に伸び始めます。
特に宿根雑草の多い圃場では、伸び始めに一発叩いておくと後が楽です。
春の自然農法作業は、先ず、草刈りから!、です。

コレは実用的な例ではありませんが、環境因子をチョットつつくと植生が変化する、って例です。当然、植生が変化すれば、生態系全体も変化します。
気候的な環境因子の大きなモノは「水」「日照」「温度」「通風」です。他にも細かい事は色々ありますけどね。これらの環境因子の上に、植生(植物の種類)が構築され、環境因子と植生の組み合わせの上に動物や昆虫も含めた生態系が構築されます。
その全体像が作物栽培に適していれば、自然農法がやり易いワケです。
ココでの環境因子は「水」です。

5mx3mくらいの試験田です。ココが一番上流側です。
ココから東側に東西40mくらい幅5mで区画が連なっています。
この画像では、奥が北側で左が西です。
左側には5mx2mくらいのマコモ池があります。
この区画の北側と南側に小さな竹製のネットハウスがあります。
更にハウスの南側は5、6mの高さの30度くらいの斜面です。斜面の下も畑です。

コレが南側を向いた状態。ネットハウスの向こうは斜面です。
右が西です。マコモ池が少し見えています。

試験田には3月はじめに「ヤマアカガエル」が来はじめてから、卵を生むので水を溜め始めました。
冬の間はマコモ池の水が染み出す程度の、水は溜まっていないけど湿潤な状態を保ちました。


すると、「スズメノテッポウ」がたくさん生えました。少しですが「タネツケグサ」も生えています。

「スズメノテッポウ」は水が好きなので、溜めても溜めなくても良いのですが土壌を湿潤に保つと良く増えます。
4、5年前は、圃場全体(約1000坪くらい)で、1株か2株しか見つからなかったのですが、ビオトープにしたり田んぼにしたりで、水気が増えるとグングン増えて来ました。

隣接した北側のネットハウスです。試験田部分より乾いていますがある程度湿り気もあります。
この更に北側が高さ3mくらいのゆるい崖で、その上が道路です。
崖と道路の間にはたくさん樹木が生えているので、ネットハウスの辺りも少し早く日が陰り、それでやや水気が多い感じを保っています。

ココは「ノビル」と「アサツキ」を植えていたのですが、「アサツキ」はほとんど居なくなって、「ノビル」は居るには居ますが「カラスノエンドウ」に埋もれています。
最も多いのは「カラスノエンドウ」と「ホトケノザ」です。この草の中に半野生化した「ジャンボにんにく」なんかも生えています。

西側のマコモ池には早くから「マコモ」が出始めました。
「セリ」もかなり増えました。この「セリ」は元は下流の河川敷で採集して来て植えたものです。
よく増えました。
ココは冬の間も浅く水を溜めていましたので、他の陸生雑草は全く生えていません。

だんだん「セリ」に水面を覆われつつあります。
でも、「マコモ」は大型で高温を好むので、これから逆転すると思います。

南側のネットハウスは日当たりが良く、1段高く、斜面の上なので乾燥し易い土壌です。


コッチには「カラスノエンドウ」はあまり生えてなくて「オオイヌノフグリ」「ホトケノザ」「ハコベ」などがびっしり繁茂しています。
多分、「カラスノエンドウ」も乾き気味のトコでも生えれるのでしょうけど、他の「オオイヌノフグリ」や「ハコベ」の勢いが強いので負けるのだろうと思います

5mx15mくらいの範囲でも、主に水気の強弱だけで、ソコを優占する植物が変わって来ます。
勿論、「マコモ」と「セリ」の様に人為的に導入しなければソコに居なかった植物もありますし、「アサツキ」や「ノビル」の様に導入しても他の植物に押されて勢いが付かないモノもあります。
つまり、ソコの環境で優占的に繁茂する植生は、気候的な環境要因で決まってくる、と言う事です。

この場合、先ず、「水」によって環境が出来て、次にはソコに繁茂した植物によって更に環境が遷移して行きます。
「水」の多い所に「セリ」と「マコモ」が繁茂し、「マコモ」が大きくなってくると「セリ」は抑えられ、水面に直射が当たらなくなるので水中にはカエルや魚類や水性昆虫が増えます。
「マコモ」はとても強烈な草勢を持っていますから、他の植物はほとんど抑えられてしまいますが、水草や浮草や藻類はマコモの隙間に生き残ります。

直接、土壌に肥料や腐植質を投入する方法や、緑肥の様な植物や野生生物を導入したり、微生物資材で特定の菌を入れたり、そう言う直接の「足し算」のやり方も出来ます。
間接的に、水環境や日射環境を調整してその環境に適応して好んで増殖する生物に任せる事も出来ます。
水気の多すぎる圃場では暗渠排水などで土壌水分を低減したり、周囲の樹木の伐採などで日照や通風を変化させる引き算的な方法も可能です。
足したり引いたりで、生物環境が遷移して行くきっかけを作る事が出来るワケですが、ともすると足し算に偏重しがちです。
ソレは我々の癖です。
だから、時には、ソッチを禁止して、直接手出しをせずに環境改善するには、自然生態系のどこのスイッチを押すことが効果的なのか、色々試してみると面白いと思います。