やったのは3/22なんですけどね、そろそろムギが立ち始めたので、急いで「土かけ」をしました。
なんで急ぐかというと、今回は条間30~40cmで播いてるからなんです。
50とか60とかで播いてれば、間が広いですからムギが大きくなっても出来るんですけど、30とかだとキチキチですからね、ムギが立ち上がってくると条間に入る事すら難しくなります。
このムギは六条裸麦なんですけど、ウチで他の品種から出た変異系です。
一穂だけ見つけたんですけど、背が低くて出穂が早くてイイかなと思って増やしています。
ムギの栽培は、ええっと、古典的なヤツね、最近の大規模機械化農法みたいのじゃなくてね。
昭和中期くらいまで手道具でやってた麦作ですよね。
そう言う古典的な麦作の基本は「麦踏み」と「土寄せ」なんですよ。
タネ播いて芽が出たらとにかく踏む!暇さえあれば(普通、あんまりそんな暇ないけどね)踏む!!
目的は3つですね。
一つは分げつ促進、芽数=穂数を増やすって事です。
2つ目は生育抑制です。過繁茂すると出穂してからコケるから、下部節間の詰まった足腰の強いムギを作ります。
3つ目は、凍て上がりの防止です。急速に冷え込むと霜柱が根を浮かしてしまいます。ムギの根が良く張っていれば生育には問題ないかも知れませんが、表土が柔らかくなりすぎてやはり後で倒伏し易くなりますから、踏み固めて防ぎます。
そうやって年内に何度も麦踏みして根張り株張りの良いムギに育てながら、一方では条間を中耕します。それが「土寄せ」です。
目的は3つ。
1.地力発現による生育促進。この部分が「極浅耕」ですね。
2.倒伏防止。
3.雑草防除。
です。
麦踏みで生育抑制しておいて、中耕で生育促進するワケです。
アクセルとブレーキを同時に踏んでいます。
コレは盆栽なんかの理論と同じですね。
適切に水も肥料も日照も与えて元気な木を作っておいて、剪定や葉刈りや針金かけで生育を抑制する。アレと同じです。
一見、真逆の事を同時にやってる様に見えるので「ん、ならどっちもやんなくても同じじゃねぇの?」って思いますけど、元気にしてるから抑えれるんです。弱ったヤツ抑えたら枯れちゃいます。だから(作物や状況によりますけど)促進すれば抑制が必要となる場合も多々あります。
作物ですから、沢山穫れる方が良いので、しっかり養分を吸収させて大きくしたいワケですよ。
だけど食わせ過ぎると伸び過ぎ茂り過ぎになって、収穫前にバターっと倒れて、倒れると重なって日が当たらないから登熟不良を起こして収量が減るワケですよね。
だから、沢山穫る為には、縦に伸びるのは抑えて、全体をガッシリ丈夫に作り、穂数を多くし、更に一つ一つの穂もでっかくする必要があります。
イネ科植物の穂の大きさは、茎の太さで決まる傾向があるので、そのためにも踏んでいじめて太くゴッツイ茎にしておく方が良いワケです。
だから中耕して表土に空気を混ぜ、土壌中の好気性微生物の活性を高め、地中窒素を放出させる。
昔は化学肥料がなかったから、堆厩肥や人糞尿を入れたワケです。
それらは有機肥料ですから水に溶ける即効性成分はスグに効きますけど、残りは微生物に分解されないと出てきませんからね。
更に分解されても土に吸着されたり、微生物の菌体となって保持されたりで「今だっ!」って時に都合よく出てきてくれないんですよ。
それで、チョイチョイ表土を「極浅耕」で引っ掻き回して肥料分を呼び出すわけです。
こうやって三角グワでチョット大げさに上下に耕します。
年内はムギが小さいので雑草防除メインで、表土を軽く株元に寄せるダケの「土寄せ」で済ませます。
春が近づいてムギが立ち上がってくると、今度は「土かけ」です。株の中にも土が入る様にクワで跳ね上げます。
管理機でやればワケないんですけど、クワだとチョット慣れないと上手く土が飛び散って茎の間に入ってくれません。
土が湿っていると大きな土塊になってムギを倒して埋めてしまいます。乾いて細かくて軽い土になってくれるとやり易いです。
条間は谷になって水はけが良くなり、春から降水量が増えても根が湿害を受けにくくなります。
株元は埋められて倒伏防止になります。
株元に寄せるだけなら、もう少しムギが大きくなっても出来ます。
手作業で株の中まで土を入れようと思うと、あまり大きくならないうちが楽です。
今年は4/1の出穂でした。チョット早い様です。
こうやってムギの生育中、秋から春までチョイチョイ地表を引っ掻き回すと、播種前に地表に敷いておいた腐植と下の耕土が混ざりますし、地表付近の好気性微生物やミミズなどの土壌小動物が増えます。
加えてムギの根が発達するので、トータルでの土壌中の有機物も増えます。
自然農法でも痩せ地の場合や、無肥料栽培やりすぎて地力を落としてしまった圃場などでは、腐植、落ち葉、ワラ、バーク堆肥、廃菌床などの有機物の追加と、極浅耕で地表面付近の生物活性を上げる方向にスイッチ押してあげると、圃場生態系のバランスと活性が向上、回復して作物の育ち易い良い環境構築が可能になると思います。





