今までの「四疎」をまとめると・・・
①権利に疎い
これは歴史的にクセみたいなもんですからね、何時までも自分達の慣習的感覚に拘らずに世界標準に準拠すべきですね。

②国際問題に疎い
これも同じですね。
ルールは自国内で決まるワケではないので、ソコでグズグズ言っても仕方ありませんね。

③テクノロジーに疎い
これも、ホントに物事は我々の手の届かない所で起こってるんですよ。
新技術が開発されると情勢はドンドン変わっていきます。
その点で行くとUPOVの様な取り決めは、比較的様々な技術動向や国際情勢に対応できる枠組みなんじゃないかと思います。

あ、テクノロジーのトコでかくの忘れましたけど、例の「モンサントの花粉が飛んで来て自分の育てていたナタネに受粉して、そのタネで栽培してたら訴えられて有罪になった」って話。
「だから育成者権強化は危ない!」みたいな文脈で語られてますけど、アレ「育成者権」じゃありませんからね。
育成者権が及ぶのは「モンサントの品種」を栽培した場合です。
自分ちのナタネと交雑してるのなら、それは「モンサントの品種を花粉親に持つた雑種」です。
「雑種」は元のモンサントの「品種」ではありませんから、育成者権は及びません。
あれはどうも「グリホサートをかけても枯れない」と言う「発明」に「特許権」を設定している様で、その遺伝子が花粉で伝わって、雑種も「グリホサートをかけても枯れない」になっていたので、「特許権」の侵害ってコトでやられたみたいです。
別の問題です。

それから、「固定種」を育成するには「F1品種」と違って長い年月がかかる。みたいな話、コレも今の技術では必ずしもそうではなくなりつつあります。葯培養とか胚培養の技術で短期間で「固定」するコトも可能です。育成者権がしっかり守られれば「固定種」の「登録品種」が増える可能性は低くないと思いますし、そもそも「F1品種」は固定種同士をかけ合わせたタネですから、やはり「固定種」を育成しないとダメなんですよ。

もう一つ、テクノロジーに関する見方の問題。
「自殺するタネ」ってありますよね、もう随分前ですけど、「致死遺伝子」かなにかを組み込まれていて、タネを採ると全部死んじゃってて発芽しない、その個体一代で終わってしまう、ッてヤツです。
これ、種苗会社がアコギなやり方で毎年タネを買わせる為に開発した。みたいな評判ですけど・・・・
例えば、遺伝子組み換えや遺伝子編集で自然界に全く存在しないキョーレツな能力を持った品種が出来た場合、そいつのタネが飛んで野生化したら、ほとんど「インベーダー」か「ミュータント」じゃありませんか?
自然界にその遺伝子が流出したらヤバいワケですね。
そう言う場合には「ターミネーター(終端装置、終了させる者)」が必要となるかも知れません。
ま、そんなら遺伝子組み換え自体をヤメロや、ッて意見もありますけど、根底的には医療技術と同系ですから止めるのも難しいでしょうね。

チョット話がソレました。
で、
④経済に疎い
コレもやっぱり、自由主義経済原理に任せる、市場に任せる、ッてコトが大切だと思いますよ。
あんまり保護農政とか補助金農政は良くありません。

けれども、企業の権利を守り過ぎると、しかも巨大な資金を持ってる大企業だと、とんでもないモノを作って市場を独占してしまうかも知れません。
イネから麦からダイコンからキャベツから、全部モンサントの遺伝子組み換えばっかりになったらどうしよう・・・
そりゃ、本当にモンサントの遺伝子組み換え品種が「良い」ものであればそうなりますよ。
丈夫で栽培しやすくて、害虫や病気にやられなければ農薬も少なくて済みます、生産コストが安ければ適正な価格で安定的に市場に供給出来ます。
安定供給できれば、生産する農家の生活も安定します。
それで、有害物質が少なく、体に良い成分を豊富に含む「機能性」も持っていたら。
どう言う理由で、ソレを拒絶しますか?
でも、拒絶出来なければ市場はモンサントに支配されるかも知れませんよ。
支配してしまったら、手のひらを返したように悪徳経営を始めるかも知れません。
どっかの政府だって「一強」みたいなコトになったら、まあ、やるわ、やるわ、自分達が得するコトばかりやってるみたいじゃないですか。
適正な競争ってものがなければ、何でもかんでも腐ってしまいます。
モンサントに限らず、何処かの種苗会社がその国の農産物の種子を一手に引き受けて市場を独占すれば、ロクな事はないでしょう。

そう言うコトを考えていると、何か「既視感」がありませんか?
一強企業が市場を席巻してしまったコトがあったでしょう?ちょっと前に。
そうです、マイクロソフトによるOSの独占です。Windows95です。
あの時は、Windows95以外のOSを使ってるパソコンはほとんどなくなりました。
マックはありましたよ、瀕死状態でしたけどね。後はWin3.1とMS-DOSでしょ、これもマイクロソフトです。
あの時はOSだけではありませんでした、もう殆ど抱き合わせ販売、業務ソフトはエクセルとかワードとかハワポとか、所謂、MS・Office製品で統一でしたよね。
ほとんど独禁法違反です。
もう、ソフトウェアは全部マイクロソフトに持っていかれるんじゃないかと思いました。
そして、日本でも独立系のソフトハウスはドンドン減っていきました。

だけど、今、マイクロソフトのシェアが寡占状態かと言えば、そんな事はありません。あ、勿論OSはほとんどウィンドウズですけどね。でも、ソフトウェアやアプリ全体では・・・
そりゃ、アップルは劇的なV字回復を果たしたし、その後スマホでトップに返り咲いたし、グーグルは検索エンジンとブラウザでマイクロソフトに拮抗したし、それからSNS、facebook、twitter、instagram、youtubeとかゾワゾワ出てきて、今度はコロナの影響でZoomが飛躍的に伸びそうじゃないですか・・・・

マイクロソフトが業界を牛耳る事が出来なかった要因は3つあると思います。
一つは、独禁法の様な法律で押さえた。
もう一つは、有力な競合企業が次々と生まれた。
そして、もう一つ、わかりますか?

それは、「フリーウェア」「シェアウェア」だと思います。
Win95以来、タダで使えるソフトウェアが沢山生まれてきたんですよ。
OSもLinuxが伸びました。
サンマイクロシステムズの様な大手企業がOSを無料にした事もありました。
様々な分野で無料のソフトウェアが大量に生まれました。
あれはヤッパリ、マイクロソフトの独走にブレーキをかけるため、他の大手IT企業もテコ入れしたんじゃないかと思います。
まあ、物凄く大きな経済の地殻変動が起こった時期ですし、色んな産業の中心に位置する情報技術ですから、戦国時代だったんでしょうね。

タネの世界も、先例に習えば良いと思います。
異常な独占状態の品種が出現したら、独禁法で取り締まれば良いでしょう。
それに、タネには、ソフトウェアや工業製品にない、強烈な機能があります。
「子孫を産む」と言う事です。
韓国で日本のイチゴ品種から新たなオリジナル品種「雪香」が育成された様に、いや、韓国だけではありませんよ、日本でも韓国産のインディカ種のイネから「タカナリ」と言う超多収品種が育成されています。(今年、ウチでも種籾入手して栽培中です)
他国や他社や他者が作った優秀な品種から、更に優れた品種を育成する事が出来ます。
コレは、将棋の「と金」や、オセロで一手でズラッと黒が白に裏返る様なモノです。
新たな優良品種や、これまで誰も目を付けていない特性を引き出した新しいカテゴリーの品種を育成する事が出来ます。
「コシヒカリ」だって、今では日本で最も沢山栽培されている「美味しいコメ」の代表ですけど、アレは「美味しい米を作る」って事が目標ではなかったみたいですよ。「少肥品種」が目標だったみたいです。
植物って、ドコが伸びるか分からないんですよ、ま、そりゃ人間だって同じですよね。
育種と言うのは、多くの個体の中から、そう言うキラリと光る特徴がチラッと垣間見れたものを目ざとく見つけ出して育て上げる技術です。
どこに目を付け、どの長所を伸びして行くか、なんてのは育成者個々のセンスと観察力ですから、会社が大きければ出来るってものではないと思います。

「フリーシード運動」みたいのをやればイイと思います。
良い品種を栽培者自らが産み出して、それを配布すればいいでしょう。
そうすれば一部の企業に独占される事は防げます。
心配なら、品種登録して育成者権を設定した上で、無料或いは安価に配布すればハンドリグの余地が残せます。
配布条件に「増殖品は同様に配布する事」として契約しておけば良いでしょう。
「外資に牛耳られるぅ」とか言ってホラーストーリーを流して世間の不安感を掻き立てていても何にもなりません。