自然農法では雑草を重視します。
当たり前の事ですけど、生き物は全て何かを生産しつつ何かを消費して生きています。
植物も動物も微生物も、ソコに居ると言う事は、ソコに有る物を消費して何かを生み出しているワケです。
雑草が生えていると、雑草だけでなく昆虫や小動物も増えます、土の中ではミミズや線虫や無数の微生物達も増えます。
それらの生み出す有機物が回り回って作物に供給されると言う事は疑う余地がないのですが、それはそうとして、量的にそれだけで足りるの?
って言う部分が問題なんですよね。
ソコの延長線上に「無肥料栽培は可能か?」って言う自然農法に関わる最大関心事もあるワケです。
んで、雑草は色んなものを生産しているワケなんですが、ザッと言えばタンパク質と炭水化物がメインですよね。
雑草の茎葉根などの体細胞は基本タンパク質で出来てるワケです。
その細胞の中に脂肪とかデンプンとかをエネルギー源として蓄えてますね。
我々人間もそうですし動物はだいたいそうなんですよ。
植物はコレにプラスしてセルロースと言う物を持っています。
セルロースは細胞壁の主成分です。
思いっ切り極端に分かり易く言えば「ワラ」です。或いは「木材」です。
ああ言う植物体の硬い部分ですね。硬いのは細胞の外側が「膜」だけじゃなくて「壁」で出来てるからです。人間や動物は「膜」なので筋肉なんかは柔らかいワケです。
このセルロースは炭水化物です。
だけと糖分やデンプンみたいに簡単に消化吸収されません。分解されにくいんです。
だから木材で家を建てたり、ワラで畳や縄を作ったり、綿花の繊維で布を作ったり出来るんですね。これら、みんな主成分はセルロースです。
食べても分解吸収されずに排出されるんですね。繊維質です。
だから植物を積んで置くと「腐植土」や「堆肥」が出来るんですよ。お肉や魚は積んでおいたらアッと言う間に腐って溶けて骨だけ残してなくなってしまいます。
厳密に言うと1年くらい積み込んで置いた「堆肥」は「腐植」にはなっていないそうです。
本当の意味の「腐植」と言うのはセルロースも分解されてそれでも残る「フミン酸」とか「フルボ酸」とか言う物質なんだそうですけど、栽培的には取り敢えず元の枯れ葉や藁の形がなくなって土みたいになってるヤツを腐植土として扱います。
ですから「堆肥」とか「腐植土」の効果という場合は、それらが含んでいる窒素、リン酸、カリ等の肥料分の効果と、狭義の「腐植」による植物生理的な効果の両方が含まれているワケです。
それで話がややこしくなるんですけど、ま、取り敢えず「腐植」を増やせば土地は肥える、と考えておけば良いと思います。
長くなりました。じゃあ、その腐植は畑から生み出される分だけで足りるの?って話です。
昨年、イネの不耕起直播に失敗して、多分土壌昆虫に種籾を食べられたんだろうと思うんですけど、ほとんど生えなかった1aの水田を秋まで放置していました。
当然草茫々(膝から股くらいの高さ)になってたんですけど、9月のはじめにそれを刈り集めて積み込みました。

縦20m横5mで100㎡=1アールです。
積んだ直後は直径1m高さ60cmくらいありました。

アスファルトの道路脇に積んで、そのまま1年チョット放置しました。
場所をずらすため春に1回切り返しを兼ねてかき混ぜました。

柔らかい広葉雑草が多かったのでもっと分解が進んで少なくなるだろうと思っていましたが、案外カサは減らずに、ポカポカの土みたいになりましたけどやはり直径1m高さ40cmくらいはありました。
中はスカスカでしたけどね。
これを篩にかけて後から入った枯れ葉や枯れ枝や小石、下から伸びてきた木の根っこ等を取り除いたらプラ舟いっぱいありました。

分解しているとは言っても、先にも書きましたように完全に腐植化している訳ではなく、まだ繊維の残った状態で、ちょうど市販のピートモスみたいな感じです。
ホントはこんなのの量を計る場合は完全に乾燥させて「乾物重」を計らなければならないのですが、乾燥するにはかなりの時間がかかりそうなので、今回は「カサ」で行きました。
10リットルのバケツにギュウギュウに詰めて何杯あるか計りました。

4杯半くらい、45リットルくらいです。
草を集めた圃場の広さは、縦2000cm横500cmですから耕土の深さを15cmとすると土壌量は15,000リットルです。
ホントは耕土は20~25cmくらいありそうでしたが、ウチの圃場は真砂土で砂利を沢山含んでいる事と、後で行う栽培実験で深さ15cmのプランターを使うので、メンドクサイので15cmだったら、ッて事に無理やり決めて計算しています。
15,000リットルの耕土から45リットルの腐植土が得られたのですから0.3%です。
毎年、膝から股くらいまで草を伸ばしていると、耕土量の0.3%くらい腐植土が増えて行く、という事です。
まあ、草の良く生える土地とそうでない土地がありますし、メチャクチャ大雑把な計算ですから、大掴みにしか考えられませんけど、0.1%~1.0%くらいの間じゃないか?くらいに考えといて良いと思います。
じゃあこの腐植土を使って栽培したらどうなるか?
を、試してみましょう。
まるっ切り泥気や肥料っ気や腐植質を含んでいない良く洗った細かい砂に0.3%この腐植土を加えてみました。
用いるプランターが12リットルなので、加える腐植土は12000ccの0.3%で36ccです。
お猪口1杯よりチョット多いくらいです。
そんなもんじゃ何の効果もなさそうですので、その5倍、10倍、20倍の用土も作って、チンゲン菜の一種の「ロンフー」の実生苗を三本ずつ5箇所に植えました。

写真に撮ると何がなんだかわかりませんね。
一番左が36ccだけ、あと順に5倍、10倍、20倍です。
見た感じ、あんまり育ちそうな気がしません。
ホームセンターなんかで売ってる「培養土」は半分くらいは腐植土やバーク堆肥が入ってますね。
ひどいのになると殆ど腐植土が主成分みたいなものもあります。
ひと夏で圃場に出来る腐植質でどれくらい育つか?その5年分だとどうか?10年分だと?20年分だと?
実際の圃場では、今までの蓄積もありますし、夏草と冬草がありますし、イネや麦だと作物そのもののの残渣の藁なんかも入りますから、多分、この2~4倍あるいはそれ以上の粗大有機物を入れる事も可能でしょう。
また、逆に得られた腐植土も2年3年と経つうちに分解が進んだり作物に消費されたりしてへって行きますから、量は常に変動しています。
先ずは、腐植の効き目と、草生栽培での供給量との関係をチェックしてみたいと思います。
年内に途中経過をレポートします。