山田元農水大臣が、種子法廃止後の主要作物行政に危機感を訴えています。(2017年12月23日の記事です)
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https://ameblo.jp/yamada-masahiko/entry-12332004567.html

冬野菜の作付けを休んだので、野菜ネタがありません。
で、政治的な堅い話やトンガッた話題が多くなってすみません。
内容をかいつまんで言えば、

種子法廃止に伴い「都道府県の優良品種の奨励制度等」廃止され、自治体の種籾生産に予算がつかなくなる。
その上「農研機構」や自治体が持っている育種情報をモンサント等の外資にも提供すれば、F1品種や遺伝子組み換え米ばかりが生産され国民はこれを食べざるを得なくなる。
「公共の種子」として農家に安く提供されてきたコシヒカリ等の多様な固定種はなくなってしまう。

と言う主張です。

それ自体、まあ、そうでしょうね。って程度の話なんですが、こう言う見解がやれ「食料安全保障」とか「食の安全安心」とか「環境問題」とかとゴチャ混ぜにブレンドされて、その結果、消費者や市場の意見を無視した「霊感商法的閉鎖市場」が形成されている、って言うのが私の感想です。
つまりね、こんな事になったら怖いよ~!!とホラーストーリーを描いて旧来の既得権益を守り、オープンで自由な市場の形成に反対する、ってやり口です。

こう言った主張が、リベラル側やナチュラル派側のスタンダードである様に広く理解(誤解?曲解?)されている現状も否定できません。
こまった事ですよ。

論理的、客観的に見て、何点か疑問点があります。

これらの主張には「解決策」が提示されていません。
日本の周辺国は全て稲作国です。中国の稲作技術はすでに日本を追い越してしまっているかも知れません。
アメリカでもオーストラリアでも稲作を行っています。
これらの国の生産技術が更に向上すれば、余剰農産物を日本に売り込もうとするでしょう。
それらの国は日本の工業製品の消費地ですから、工業製品を輸出する為には、何かをそれらの国から購入する必要があります。
当然、米市場の自由化圧力はこれまでに増して高まるでしょう。

国内的には、各地で水田の集約化が進んでいます。
最近、田舎の農家物件を探しても「畑は付いてるけど田んぼは無いよ」って物件が多いんですよ。
農地の大半は水田なのに、何故?
水田は集約化で「大規模農家」や「農業法人」「生産組合」等に出してしまっているんですよ。
もう、やり手がいないので、国は急速に集約化、法人化を進めています。
まあ、規模を大きくして生産性を向上させコストを下げ競争力を付けよう、って言う「バカの一つ覚え」の大規模化です。

田舎を車で走って見ると、どこへ行っても「田んぼ、田んぼ、田んぼ」田んぼばっかりです。
「稲作が採算合わなくなったら、この田んぼはどうするんだろう?」考えて見るとうすら寒い話です。

大規模化でいくらか生産コストは下がりますよ、でもね、外国の稲作ってもっと大規模なトコが多いでしょ、対抗できますかね。

農家の平均耕地面積は2haくらいでしょうか?だったら地域で20軒くらいの農家を集約して法人化したら40ha規模ですよ。
そんなのがアチコチで倒産したらどうなります?
大規模化したからって潰れなくなるわけじゃありませんからね。

そうすると、F1だの遺伝子組み換えだの大規模生産向きの多収品種を導入しないとアブナイ、って話になりますよね。

種子法廃止に反対の意見の中には、こう言う問題への解決策が見当たりません。
今までやってた通りに保護農政で乗り切ればイイ、と言ってる感じがします。
それはムリです。それがムリなのは、もう何十年も前から分かり切っているんです。
でも、どうにも出来なくて長い事ズルズルやって来た結果がコレなんですよ。

大規模化や効率化は、一応、必要なんですよ、一応ね。

もう一つの疑問は、F1や遺伝子組み換えばっかりになるか?って事です。
そう言うんじゃなくて、有機栽培のコシヒカリが食べたい、って言う需要は少なくないと思いますよ。
価格競争力がない?
そりゃ大規模生産のF1品種には負けるかも知れませんね。
だったら、ますます自然農法や有機農法で低コスト生産する技術を開発しなければダメなんじゃないですか?
アメリカやヨーロッパでは、有機農産物でも2割くらいしか価格は違わないそうですよ。
色々、工夫できるんじゃないでしょうか?

麦や大豆と違って米の場合は、ちょっと有利な部分もあります。
法律が改正されて遺伝子組換えの表示義務がなくなるかもしれないでしょ。
麦や大豆だと、その品種が在来種なのかF1なのか遺伝子組換えなのか、いちいち調べてみなければわかりませんよね。
でも、米の場合は「コシヒカリ」「アキタコマチ」「ササニシキ」「ヒノヒカリ」「ヒトメボレ」etc・・・・
全部在来種、固定種、純系品種なんですよ。
て、コトは、なんにも書かなくても消費者には、どれが安全なお米か一目瞭然で分かってしまう、と言う事です。
勿論、F1や遺伝子組み換えが必ずしも危険であると言う事ではありませんよ、そうじゃないけど、そう言うのがイヤだと思う人にそれを買えって押し付けてはいけません。
在来種を食べたいって人には簡単に在来種を選んで購入する事が出来るワケです。
ソコを狙って生産する有機農家も出てくるでしょう。
そんな有機農家に種籾を供給しようって言う種苗会社も出てくるでしょう。

むしろコッチにはビジネスチャンスがあるんじゃないかと思います。
例えば、棚田で多品目少量生産で無農薬栽培するとか、発想を変えて多様化の中に活路を見出す事もできるんじゃないでしょうか?

更にもう一つ、私が最もヤバイと思う事は、中規模以下の個人農家の減少です。
10ha~100ha規模の法人ばかりになると、新たに農業に就業したいと考える若い人たちは、農業法人に就職するしかなくなります。
日本は土地が高いので、個人でコレだけの農地を確保するのは大変ですし、大型農機も用意するとなると、数千万の開業資金が必要となるでしょう。
医者じゃあるまいし、農業にそんなお金をかける人はいません。
そうすると既存生産者とは別に新たな農業を始める事は非常に難しくなってしまいます。
タダでさえ日本の農業は画一的でみんなおんなじ事ばっかりやっていて、新規性に乏しい所が最大の弱点なのに、これでは更に画一化が進んで新発想が生まれにくい体質悪化が進んでしまいます。

今重要なのは、行政に既得権益を守ってくれ、と泣き付く事ではなく、中規模以下の農業で意欲ある起業者が新規参入できる道をいかにして残していくか、と言う課題なのではないかと、強く感じます。


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