先日の「大蔵大根」に続いて、これまた出来の悪い「宮重大根」です。
イメージ 1

こんな出来の悪いのを「宮重大根」ですなんて出しては怒られそうな感じですが、地味に育てて痩せ出来するとこうなるという実例です。
「宮重大根」は現在一般に流通している大根の直接の祖先としては最重要な位置づけにある在来種ではないかと思います。
それはスーパー等で一般に売られている大根の殆どが「青首大根」だからです。
「宮重」は青首大根のルーツなのです。


その名の通り愛知県清須市春日宮重町が発祥の地で、江戸時代から伝わっている伝統野菜です。
最大の特徴は地上部が青くなる青首大根と言うところです。
盛んに栽培されていた頃に「宮重総太大根」や「切太大根」などバリエィションも増え、様々なタイプに分化していったようですが、古いタイプは画像のような真ん中あたりが少し太くて上下にシボった様な形だった様です。(江戸時代の事は分かりませんけどね)

イメージ 2

比較的堅い土壌で育てたので根上り性が強く出たのか、半分から上が地上に出ていました。
この辺りは気温の上げ下げが激しいので、地上部は何度か凍害に遭っています。
「大蔵」や「方領」は古葉が地上に出た根をスカートの様に包むので根上り性でもあまり凍害は受けませんでしたが、「宮重」は立ち葉なのか上がった根が露出していて寒風を受け易かったようです。

イメージ 3

昭和の前半には愛知県で広く栽培されていたようですが、F1の「青首大根」が一世を風靡した戦後には、逆に生産量が低下したようです。(一説にはこの時期に一時絶種したとも言われています)
不思議な事ですが、この昭和20年代から30年代に衰退した大根品種は「宮重」だけではないのです。
「方領」も「みの早生」や「時無し大根」、「阿波晩生タクアン大根」などもこの時期に衰退しています。

だいたい直接の原因は「連作障害」或いは「ウィルス病」と言われています。
しかし、この時期になって急に「連作障害」や「ウィルス病」が発生し始めたわけではないでしょうから、他に社会的な要因もあったのではないかと思います。
統計的に調べたわけではないので単なる私見ですが、一つは物流が発展して大規模産地形成が進んだ事、都市化が進んで大都市周辺の小規模農家が衰退したこと、そして化学肥料と化学農薬の登場などが要因となったのではないかと思います。

昔のように市街地に隣接した農地で生産供給されていた時代には、特定の品種だけを大量に栽培するという事は少なかったので、連作障害も起こりにくかったでしょう、専門的な大産地の形成と連作障害は大抵セットになっています。
さらにその時期が化学肥料化学農薬の台頭と重なっているので、連作障害が出易くなり、急速に形成された大産地が急速に衰退する要因となったのではないかと思います。

ここで勘違いしていただいては困るのですが、化学肥料、化学農薬を使ったら連作障害やウイルス病が多発する、と言う意味ではありません。
そういうコトを主張される方もいらっしゃいますが、障害や病害の発生機序はもう少し複雑なように思われます。
化学肥料は濃度が高いので多肥栽培になり易い事、施肥作業の負担が少ないので化学肥料に偏り易くなり堆肥や腐植の供給が減少して土壌の緩衝能が低下する事、化学農薬は即効的に強い効果を現すので薬効を過信し易くなる事、そのような特性が重なって、連作障害や特定病害が発生し易い条件が揃いやすくなってしまうのだろうと思います。

けしてそれが良い事だとオススメするワケではありませんが、化学肥料、化学農薬を使っても、問題なく栽培する事は可能です。
極端に毛嫌いするのも、一種の神話、信仰みたいな感じでいかがなものかと思います。

特に初心者の方には、先ずは化学肥料と化学農薬を用いての慣行栽培をお奨めします。
それは化学肥料や農薬が良いと言う意味ではありません。
これらは用いた場合の結果の現れ方がスピーディーで派手なので、何をすれば何が起こるかが非常に良く分かるからです。
肥料をどの程度与えれば、葉の色がどの程度濃くなり、根の張りが強くなるのか弱くなるのか?、それらと潅水量との関連はどうなのか?どの程度の薬剤散布で害虫や害虫以外の生き物の行動が変わっていくのか?
化学の実験なんかでも、純度の高いものほど結果はリニアに現れ、理解し易くなります。
特に自然農法では、何が効いているのか、何が障害を起こしているのか、モヤモヤしていて分からない場合が多いのです。
それは、環境条件や生態系が多様で、それぞれがショックを吸収してしまうからです。
ですから、最初から自然農法ばかりやっていると、何が起こっているのか皆目つかめないままに、伝説や神話の迷路に迷い込んでしまい易いのです。

試しに硫安単肥で水田稲作をやってみると、イネと言う植物が窒素に対してどのような挙動を示すか非常に良く分かります。

そういう情報もアタマにインプットされていれば、自然界で起こってくる複雑で多様な動きを読み取る事の助けになるだろうと思います。


話がそれました、昭和の高度成長期は、経済が発展しただけでなく、機械も化学製品もメディアも電化製品も、すべてが異常に爆発的な進化を遂げました、メチャクチャな時代でした。
だから、色んな所に歪が出たのでしょう。
そして、そんな問題を解消するべく「F1品種」が台頭して来て現在に続いています。
品種の変遷を「歴史」として眺めてみるのも面白そうですね。